池袋駅の隣の西武池袋線「椎名町駅」には何がある?【住みたい街の隣も住みよい街だ】
大型百貨店に加え、サブカルチャーショップも点在する池袋駅周辺。西口公園やサンシャインシティなど名所も多く、幅広い世代が楽しめる街だ。しかしその隣駅はどんな駅なのだろう?ということで、【住みたい街の隣も住みよい街だ】第5回は池袋駅の隣駅、西武池袋線「椎名町駅」周辺を散策します!
吸い込まれる肉うどん屋『南天』
椎名町駅北口を出ると、ほぼそのままの勢いで『南天』に吸い込まれていった。もうそこしか目がいかないほど良い位置にあるのだ。
『南天』は肉そば・肉うどんが人気の立ち食いそば・うどん店。営業時間は朝5時30分から夜1時30分までで、電車が動いている時間は開けているのだという。
駅のホームにある立ち食いそば屋さんが外にある感じなのだろう。
肉汁の甘みで、ツユはめちゃくちゃ優しい味。昨日お酒を飲みすぎた身には非常にありがたい優しさだった。
近くの会社に勤めているらしき人たちが20人分をテイクアウトし、お鍋にツユをいれてもらっていた。地域に密着した感じ、すごくいいな。
駅前は、池袋駅とは違って高層ビルはない。2、3階建ての低層の古い建物が並び、昭和の雰囲気がばっちり残っている。
すずらん通りには飲食店やマッサージ店、花屋、焼き鳥屋などがあり、すずらん通りを抜けると、道の向こうにスーパーの『サミット』があった。
『サミット』を正面に右に曲がると椎名町サンロード商店街のアーチが見えてきて、日常の買い物にはまったく困らなさそうな印象。居酒屋さんも豊富だ。
地元の人に聞いた「池袋は庭。子供の頃は冒険をしに行く所だった」
まずは線路を南側に渡り、駅からすぐ近くの椎名町公園に向かった。子供たちがたくさん遊びまわっていてにぎやかな公園だ。
そこでベンチに座っていたお兄さんに声をかけてみると、お正月に家族みんなで帰省中だという。
椎名町はどんな街ですか?という問いにまずあがったのが交通の便のよさ。
西武池袋線の椎名町駅以外にも、地下鉄大江戸線の落合南長崎駅、地下鉄副都心線の要町駅の利用もできる。池袋駅に加え、JR山手線の目白駅も近くて、自転車で10~15分あればいろいろなところに行けちゃうという。
けっして池袋のように都会ぽくはないけど、逆に、昭和の雰囲気が残っていて居心地がいいそうだ。
ちなみにこちらの「長崎神社」もそうだがこの辺りは地名に「長崎」とつく。
長崎県と何か深い関係でもあるのか? と後述する施設の方に質問したのだが、いろいろな説があるものの謎に包まれているとのことだった。
居心地の良い椎名町に住みながらも、自転車で行ける距離には刺激的な池袋がある。
公園で会ったお兄さんによると、子供の頃は、池袋は友達や年上の人たちと冒険しにいくような、そんな場所だった、と話してくれた。
また、この10数年で建て直された家が増えてずいぶんきれいになっているそうだ。昔は昼から飲んでる人が多かったけど、今はそんなこともなく治安が良くなりさらに住みやすくなったという。
三輪車が30台以上! 地上で地下鉄車両も見られる公園
せっかくだから、公園で会ったお兄さんに薦められた場所を回ってみよう。まずは豊島区立千早フラワー公園へ。
公園の名前のとおり、色とりどりの花が楽しめるそうで、この日はたわわに実ったミカンの木が見ごたえあった。
そして驚いたのが、三輪車が大量に置かれていること! 近くにいたママさんに聞いたところ、自由に使っていいらしい。
私はよく大江戸線を使っているのだけど、他の車両よりひとまわりコンパクトで狭い作りは確かに大江戸線だった。
案内によると、建設費を安くするためトンネルの大きさを小さくしたり、車両の小型化や軽量化が図られたとのこと。勉強になった。
三輪車から地下鉄まで体験できる、乗り物好きにおすすめの公園だった。
2024年に正式名称になった「トキワ荘通り」
次に向かったのは、マンガ好きの聖地と言われているトキワ荘通り。
「トキワ荘」は1950年代から1960年代にかけて、手塚治虫をはじめ藤子・F・不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫ら多くのマンガ家たちが共同生活を送り、切磋琢磨していた場所として知られている。
トキワ荘を再現したミュージアムのある通りはトキワ荘通りと呼ばれ、マンガ家たちが愛した中華料理店『松葉』があったり、『トキワ荘通り昭和レトロ館』や『トキワ荘通りお休み処』、グッズショップなどが並んでいた。
この通りだけで半日楽しめるぞ。
『お休み処』の方によると、この辺りは空襲の被害が奇跡的に少なかったため昔の街並みが残っているとのこと。
また、名物の『トキワ荘マンガミュージアム』だけでなく、その街並みそのものを散策してほしいと関連施設が増え、ついに2024年6月1日に「南長崎通り」から「トキワ荘通り」に名称変更されたようだ。
『トキワ荘ミュージアム』は細部までトキワ荘を再現していて、マンガ家たちが住んだ2階への階段は当時のきしみ音まで再現されていた。
一般の人が住んでいたといわれる1階部分は、企画展示室や企画展関連のおみやげショップのスペースとなっている。
トキワ荘通りはマンガ家好きだけでなく、昭和の時代を生きてきた人にはたまらない懐かしさあふれるエリアだった。
ホットコーヒーに見える⁉ 超濃厚「アイスコーヒー」
最初に訪れた椎名町公園に戻り、愛犬たちの散歩中のお姉さんに話しかけてみた。
彼女も椎名町は交通の便がいいということをまず挙げたあと、豊島区は犬を散歩してOKな公園が多いのがうれしいと言っていた。
お姉さんのおススメは、公園の目の前にある『サントスコーヒー』。休憩がてらに寄ってみることにした。
店内に入ると深緑色の壁。そこにマスターの奥さまが撮ったという花の写真(これが動物や虫に見えて面白い)がかかっている。オシャレで緊張する。
メニューを眺めていると、地元の常連らしき年配の男性客が2人入ってきた。店主のことをマスターと気軽に呼び、慣れたようにオーダーする姿を見て少し安心した。
アイスコーヒーをホットコーヒー用のカップで飲むなんて初体験だ。
メニューには「コスト度外視でとにかく更なる濃厚な味わいだけを追及して作ったものです」と書かれていた。
これがまさに濃厚! 一気に目が冴える。ものすごい深み、力強さ。テクスチャーも、どこかねっとりとしているように感じる。今日の散歩を振り返りながらゆっくりと時間をかけて味わった。
こんな感じでお散歩は終了。
池袋駅の隣の椎名町駅は、マンガ好きの聖地・トキワ荘通りだけでなく、駅前からすでに昭和の雰囲気が始まっていた。
ミュージアムなどのように分かりやすく当時を再現したものがあるだけでなく、街の人たちと店主のやり取りや、商店が元気に並んでいるところ、にぎわいのある公園、街なかでまだ現役の「~~荘」と書かれたアパートを見つけるたびに、生活感を伴った昔ながらの居心地のいい雰囲気が感じられた。
ひと駅違うだけで、空の広さも、雰囲気も、こんなに変わるのかと驚いた街だった。さて次はどの隣の街へ行こうか。
取材・文=小堺丸子
※藤子不二雄Aの「A」は正式には丸にAで表記。また、石ノ森章太郎の「ノ」は正式には55%縮小で表記。
小堺丸子
ライター/ビル毛収集家
東京都葛飾区生まれ。上野・浅草あたりが庭。視点をちょっとずらした企画や、ガイドブックには載らないだろう地元の人ならではのプチ情報を取材するのが好きです。人にすぐ声をかけがちで、偶然出会った人が記事によく出てくるのが特徴です。趣味はビル毛集め(https://san-tatsu.jp/articles/294153/)。お散歩ラジオも始めました(https://podcasters.spotify.com/pod/show/osanporadio)。