【横須賀 イベントレポ】蜂小屋で蜂蜜直売会 - 木漏れ日ゆれる山あいで育まれた、季節と土地の恵みが息づく完熟蜂蜜
遠くに富士山を望む横須賀の深い緑に囲まれた静かな山の中に、女性の養蜂家が営む「蜂小屋」があります。
「蜂と暮らす」というコンセプトで、自然と蜂の営みを大切にしている「蜂小屋」で開かれた蜂蜜の直売会と、
「巣箱の中を見てみよう」というイベントに参加してきました。
「蜂と暮らす」── ミツバチのリズムに合わせた養蜂
「蜂小屋」を営むのは、2018年に移住してきた渡辺久恵さん。
東京生まれ東京育ちで、元々会社員だった渡辺さんは、54歳の時に夢だった養蜂家の道に進むことを決意。
様々な養蜂家に教えを乞い、何もなかったこの地に水道を引き、小屋を建て、養蜂に着手しました。
「養蜂のスタイルは人それぞれですが、私は時間をかけ過ぎている自覚はあります。
だけど、できるだけ彼女たち(ミツバチ)に合わせてあげたいのです」
そう語る渡辺さんの笑顔は蜂への感謝と愛に溢れていて、この人だからこんなに美味しい蜂蜜が作れるのだろうな。
と、ますます蜂小屋さんのファンになりました。
「蜂のことを学べば学ぶほど、自分たちが自然の営みの中に生かされていることを知りました」
そう語る渡辺さんの巣箱の手入れは、驚くほどやさしく、ゆったりとしていました。
私は、以前別の養蜂家の見学会に参加したことがあります。
その時は、巣箱を開けた途端にミツバチが殺気立ってブンブンと飛び回り、随分と怖い思いをしました。
しかし、蜂小屋では怖いと思う瞬間は全くなく、拍子抜けしてしまいました。
「ミツバチと呼吸を合わせることが大事です。ミツバチを尊重し、礼儀を持って接すれば、攻撃してきませんよ」
多くの養蜂が、蜂の巣箱を開ける前に、煙を使ってミツバチを落ち着かせる燻煙作業をします。
渡辺さんの燻煙はとてもやさしく、煙を吹き付けると言うより、煙でミツバチに“合図”を送っているようでした。
燻煙後は、やさしく巣箱をノックし、巣箱の周囲に霧吹きでそっと水を吹きかけます。
その様子は、ミツバチたちに、「今から開けますよ」と挨拶しているようでした。
そして、ゆっくりと巣箱を開け、一枚ずつ丁寧に巣の中の板(巣枠)を取り出します。
一つ一つの動作にミツバチへの思いやりがこもっているので、巣箱を開けても、巣枠を取り出しても、
ミツバチは、ほとんど飛び回りませんでした。
見学会 「巣箱をみてみよう。」は子供も参加可能
今回の「巣箱をみてみよう。」の参加者は、大人4名、子供1名。
ミツバチを驚かさないように、少人数で開催しているそうです。
小学生のお子さんも巣箱のすぐ近くまで寄って観察することができました。
ミツバチは基本的に穏やかな性格ですが、急な動きや大きな音に敏感です。
そのため、小学生以下の小さなお子さんの場合は、安全のためにも保護者の方に判断いただくのがよいと思います。
巣箱の正面は、ミツバチたちにとっての“玄関口”。この出入り口に人が立つと、ミツバチは警戒してしまうそうです。
そのため見学の際は、巣箱の横からそっと近づくのがポイント。
静かにしていれば、すぐ目の前まで寄って観察しても、ミツバチが向かってくることはありません。こんなに可愛らしく忙しく動き回るミツバチたちの姿を、間近でじっくり見ることができました。
巣箱の中には「巣枠(すわく)」と呼ばれる板が何枚も入っていて、そこにミツバチたちが巣をつくり、生活しています。
参加者の前で巣枠を一つひとつ丁寧に取り出しながら、渡辺さんがミツバチの生態や巣の構造について解説してくれました。
・巣作りや蜜集めなどをする“働きバチ”はすべてメスであること
・春から夏に生まれる働きバチは、わずか1ヶ月半ほどの短い命であること
・女王蜂が常に偉いわけではなく、体力が弱ると働きバチたちに追い出されることもあること
などなど、初めて知ることばかり。小さな体の中に、驚くほど豊かな社会が築かれているんですね。
見学会の最後に、渡辺さんが取り出した巣枠を持たせてくれました。
ぎっしりと蜂蜜が入った巣枠はずっしりと2キロ以上の重さがあるそうです。
見た目よりずっと重くて驚きました。
感動の試食タイム ── 巣からあふれる、できたての完熟蜂蜜
先ほど巣箱から取り出したばかりの巣枠にそっとスプーンを差し込んで、とろりと溢れてくる黄金色の蜂蜜を試食させていただきました。その場で試食させていただいた蜂蜜は、まさに“しぼりたて”。
口に入れた瞬間、濃厚な甘みと花の香りがふわっと広がり、思わずにっこりしてしまいます。
こんな体験ができるとは思ってもいませんでした。
写真の巣枠の中の六角形穴の上に蓋が見えると思います。この蓋が“完熟蜂蜜”の証です。
ミツバチは花の蜜を集めたあと、時間をかけて水分を飛ばし、蜂蜜の糖度を高めていきます。
そしてミツバチが「これで完成!」と判断したとき、八角形の穴ひとつひとつに蜜蝋(みつろう)で蓋をします。
この“蓋がけ”された蜂蜜こそ、自然の中で熟成された完熟蜂蜜。
季節の花の風味も栄養も、そのまま閉じ込められています。
「まとめて採蜜すれば楽なのですが、ミツバチのリズムの合わせて、蓋がかかったものから採蜜しています。
そうすると採蜜日はバラバラになり、採蜜日毎に異なる香りと味わいの蜂蜜になります。
それこそ自然の営みの証と考えて、違いを楽しんでもらいたいと思っています」
写真の通り、色からも違いが見てとれますね。
記事の最後に紹介している蜂小屋の蜂蜜取扱店では、試食をして選ぶことができます。
写真の3本の蜂蜜は1キロの大サイズです。
・大サイズ 1キロ6,500円(税込)
・中サイズ 250グラム 3,000円(税込)
・小サイズ 180グラム 2,000円(税込)があります。
直売会では、容器を持参すると、1グラム13円(税込)で量り売りで販売もしています。
私が購入したのは、以下の3つの採蜜日の蜂蜜です。
・採蜜日:5月15日
香り高く、やさしい甘み。春の花々を束ねた香り満載の蜂蜜。
4月に咲いたシロツメクサや菜の花、そして桜の蜜がたっぷりと含まれた春の百花蜜。
ふわりと立ちのぼる花の香りは、まるで満開の桜並木の中にいるよう。
今年は春の雨が多かった影響で、例年と比較するとやや穏やかな味わいです。
私は、春の蜜は香りが高いので、そのまま食べるのが一番好きです。
・採蜜日:5月23日
1週間ほどの採蜜日の違いで全く別の蜂蜜になっています。
爽やかで軽やか。新緑の風を感じる、初夏の蜂蜜。
山藤のすっきりとした蜜に、橙のやわらかな柑橘香がほんのり。
クセが少なく、さらりとした口当たりが心地よく、
初夏の青空のように、澄んだ味わいが広がります。
ハーブティーやチーズに添えても、その魅力が引き立ちそうです。
・採蜜日:6月14日
力強く、野性味が増した蜂蜜。
ハゼの個性がしっかりと感じられる、香ばしくウッディな風味。
ネズミモチの蜜が重なることで、少しスモーキーな印象も。
甘みの奥に、ほんのりとした渋みや苦味があり、
大地の力を感じるような、重厚な味わいに仕上がっています。
クセのあるチーズとのペアリングができそうです。
それぞれの採蜜日の蜂蜜ごとに、その時咲き誇っていた美しい野の花を感じさせてくれます。
蜂蜜はワインと同じく、その季節、その土地ごとに育まれるテロノワール(土地毎の味の個性)ですね。
ちなみに、私は7月終わり〜8月初旬のカラスザンショウの花の蜜が入った蜂蜜も大好きです。
黒糖のように濃厚な味わいになるので、8月に入ったらまた購入する予定です。
天然の蜂蜜はいつまでも美味しく食べられるので、我が家では一年分の蜂蜜を夏のうちにまとめて購入しています。
ミツバチが運んできた花粉と蜂蜜をかけたヨーグルトも試食させてもらいました。
プチプチとした食感の花粉が、病みつきになります。
この食用の花粉(ビーポーレン)は、ミツバチが巣に持ち帰った花粉を酵素で団子状にしたもので、
ビタミンやミネラルを豊富に含んでいます。
蜂小屋では、1グラム20円(税込)で販売しています。
身近な自然を大切にしてほしい
今回参加したお子さんのお母さんは、こんな感想を教えてくれました。
「大切に育てられている蜂だと知って、考え方が変わりました。
今まで『怖い!』と逃げていた蜂も、実は一生懸命に蜜を集めているんだと思うと、可愛く感じられます。
蜂も自然の一部。何でも“駆除”するのではなく、知識を持って向き合うことの大切さを感じました」
自然と共に生きるという視点は、小さな体験を通して芽生えていくのかもしれません。
また、主催者の渡辺さんは、蜂蜜の食べ比べがもたらす気づきについてこう語ります。
「この蜂蜜は、どんな花からできているんだろう?という好奇心が、身近な自然に目を向けるきっかけになったら嬉しいです。
たとえば、家の周りに何気なく咲いている草花や木々も、実は美味しい蜂蜜の源になっているかもしれません。
蜂蜜を通して、日本で自生してきた野の花や、山の木々の尊さを改めて実感しました。
おしゃれな外国の植物を庭に植えるのも素敵ですが、ぜひ各家庭で日本の在来種にも目を向けてほしいです」
渡辺さんは、自然と向き合い続けているからこそ、その奥深さや美しさに気づき、それを伝えたいという気持ちを強くもっています。
完熟蜂蜜の奥深い魅力——“蜂小屋”のこだわり
丁寧に手間ひまかけて作られる「蜂小屋」の完熟蜂蜜は、スーパーなどでよく見かける加糖・加熱処理された蜂蜜とはまったくの別物。
ひと口食べれば、その濃厚で奥行きのある味わい、そして季節の花ごとに異なる芳醇な香りにきっと驚くはずです。
一度食べたらファンになる人が多いのも納得です。
年に2回ほどの蜂小屋での直売会のほか、以下の店舗で通年購入が可能です。
自然の恵みが詰まった、特別な一瓶をぜひ味わってみてください。
取扱店舗一覧(2025年7月現在)
・ヒマラヤンベーカリー
・CoCoCAFE発酵カフェ発酵キンパ
・earth7716factory
・あいうえおかし (量り売りあり)
・polepole
・サンセットテラスアソラ
・オアシスモトファクトリー
・【通販】WERECO by ecorche DOSKA店
・蜂小屋オンラインショップ
蜂小屋 蜂蜜直売会・「巣箱の中を見てみよう。」
開催日時
2025年7月6日(日)11:00-12:00 「巣箱の中をみてみよう。」
2025年7月6日(日)14:00-17:00 直売会
開催場所
会場名:蜂小屋
住所:横須賀市長沢(以下、非公開)
インスタグラムで参加表明した方に、個別にアクセスを送付しています。
駐車場:あり
参加費「巣箱の中をみてみよう。」
大人 2,000円(税込)、子供 1,000円(税込)
直売会は参加無料です。
主催
蜂小屋