35歳で転職ってもう遅い?未経験でも転職を成功させるコツを解説
35歳を過ぎて転職したいと思っているものの、「35歳以上でも応募できる求人はあるのか」「未経験の業種や職種でも転職できるのか」などと不安に感じている人も多いのではないでしょうか。実際に35歳以上で転職している人の割合や、転職した場合の給与についても気になるところです。
この記事では、35歳で転職するメリット・デメリットから、35歳からの転職を成功させる人の特徴、35歳で未経験の業種や職種への転職を成功させるコツについて解説します。35歳を過ぎて転職を検討されている人はぜひ本記事を参考にしてみてください。
なぜ「35歳転職限界説」をよく耳にするのか
転職市場では、「35歳転職限界説」といった言葉を耳にすることがあります。35歳から転職の難度が上がるといわれる背景としては、次のような要因が挙げられます。
求人数が少なくなるから
35歳の転職が難しいといわれる理由のひとつに、 年齢が高くなるにつれて求人数が少なくなる ことが挙げられます。採用する企業としては、「自社に長く貢献できる人材を採用したい」と考えるのは自然なことです。定年退職までの期間を踏まえると、若い人材ほど貢献できる年数が長いのは必然といえるでしょう。
また、年齢が上がると未経験者向けの求人が減少することも要因だと考えられます。東京労働局の調査による「関東労働市場圏の有効求人倍率」を見ると、34歳以下では1.61倍ですが、35~44歳では1.33倍と、下がります。さらに、45~54歳では0.93倍、55歳以上になると0.78倍と、年齢が上がるにつれて有効求人倍率も下がっていくのが実情です。それだけ年齢が上がるにつれて求人数が少なくなっているということが分かります。
採用コストとリスクが高いから
年齢が上がるほど平均給与が高くなる傾向があることも、35歳の転職が難しいといわれる要因です。例えば、国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」を見ると、25~29歳の年間平均給与額は394万円ですが、35~39歳では466万円と72万円もの差があります。
企業としては、年収が高い人材を採用することで、ミスマッチが発生した際のリスクが高くなるため、できるだけ年齢が低く、採用費や給与額を抑えられる人材を優先的に採用したいと考えるのが一般的です。
マネジメントしにくいから
転職先の管理職が35歳よりも若い場合、年上の部下をマネジメントするのはなかなか難しいものです。
近年では、年齢に関係なく能力のある人材を管理職に登用する企業が増えており、20代後半や30代前半の管理職がいる会社も珍しくありません。しかし、35歳以上の転職者が部下になると、「年上の部下はマネジメントしにくい」と考える管理職も少なくありません。
このような背景から、企業によっては従業員の年齢構成を考慮して、採用者を決定することもあります。一般的に35歳の人材は「中堅」「ミドル」と呼ばれ、若い管理職にとってはマネジメントしにくいと考え採用を見送るケースもあるようです。
経験やスキルが足りていないから
35歳以上の中堅の人が転職する際、企業が求める経験やスキルの条件を満たしていないと、転職するのが難しいのが現実です。
35歳以上の人材に企業が期待する経験やスキルは、自社に所属する同年代の社員を基準に設定されることが一般的です。そのため、特に業種や職種が未経験の人が求人に応募する場合、企業の期待に応えることが難しい可能性があります。
転職者の希望する条件を満たすポジションが少ないから
企業が想定するポジションと転職者の希望する条件とのマッチングが難しいこともよくあります。多くの企業では、35歳以上の人材には管理職としての役割を期待していますが、管理職のポジションがすでに埋まっていることも少なくありません。
さらに、転職者側が求める給与などの条件は、若手の人材に比べて高い傾向があり、双方の条件が一致しないケースがあります。
家庭の事情などで転職後の希望条件が増えるから
35歳を過ぎると家庭を持つ人も増え、育児と仕事の両立、パートナーの仕事への影響といった家族の事情も考慮しなければならない人もでてきます。家族の生活費や子育てのために一定の収入が必要になったり、家庭の事情により転勤の可能性がある仕事を選びにくくなったりする場合もあるでしょう。
このように、転職後に求める年収や勤務地などの条件が増えると、条件に合う求人を見つけるのが難しくなります。
35歳以上の転職者率はどのくらい?
実際に35歳以上で転職する人はどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省が公表した「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、年代別の転職入職率(※1)は以下のとおりです。
年代別の転職入職率
年代 男性 女性 19歳以下 16.6% 17.5% 20〜24歳 14.6% 16.5% 25~29歳 15.6% 19.1% 30~34歳 10.0% 14.2% 35~39歳 8.5% 12.4% 40~44歳 6.3% 11.4% 45~49歳 5.3% 8.9% 50~54歳 5.6% 9.0% 55~59歳 6.6% 7.6%
男女ともに34歳以下の転職入職率が高い傾向があるものの、35歳以上で転職している人も一定数いることが見てとれます。上記のデータを見る限り、35歳以上での転職は決して不可能ではないと考えて良いでしょう。
(※1)転職入職率…在籍者に対して、企業に転職してきた者の割合。以下の式によって算出しています。
転職入職率=転職入職者数÷1月1日現在(ただし引用した年齢階級別については6月末日現在)の常用労働者数×100
35歳以上で転職したら給与は下がる?
35歳以上で転職する際、給与は今より下がるのか気になる人も多いでしょう。厚生労働省が公表した「令和5年雇用動向調査結果の概要」によると、2023年(令和5年)に転職した35~39歳の人のうち、「給与が増加した」または「変わらない」と回答した人の割合はあわせて69.8%に上りました。35歳以上で転職しても、必ずしも給与が下がるというわけではありません。むしろ、49歳までの転職であれば増加している人の割合が多いことが分かります。
令和5年転職入職者の賃金変動状況別割合
年代 増加 変わらない 減少 19歳以下 44.9% 33.4% 20.1% 20〜24歳 52.3% 24.3% 20.9% 25~29歳 44.4% 32.4% 22.3% 30~34歳 44.6% 25.6% 29.1% 35~39歳 38.0% 31.3% 29.9% 40~44歳 41.3% 27.5% 29.3% 45~49歳 37.3% 31.7% 30.4% 50~54歳 34.6% 31.1% 34.0% 55~59歳 27.7% 37.5% 34.3%
賃金が増加する人が多い理由としては、経験を活かし即戦力として働ける企業へ転職する人が多いこと、さらに現職よりも職位を上げて転職し給与や待遇を上げる人が多いことなどが考えられます。
一方で、年齢に関係なく、未経験の職種に転職する場合は給与が減る可能性が高い傾向です。転職後の給与の増減は、転職先の企業が求める経験やスキルをどれだけ満たしているかに大きく依存するでしょう。
35歳で転職するメリット
「35歳転職限界説」という言葉があるように、35歳での転職はネガティブに捉えられることもありますが、多くのメリットもあります。主なメリットとしては以下のとおりです。
メリット1. 前職で培った経験・スキルを評価してもらえる
長い社会人経験で培った豊富な業務経験とスキルが評価される可能性があることです。自分のキャリアが企業の採用ニーズと合致して高く評価されれば、 年齢がハンデになることなく、スキルを存分に生かせるポジションや役割に就ける ことも多いでしょう。
メリット2. 自分にぴったりな仕事を見つけやすい
35歳になれば社会人としての実務経験を通じて、自分に合う仕事とそうでない仕事をある程度区別する能力を身に付けていることでしょう。
そのため、 これまでの経験をもとに、自分に最適な仕事を選ぶことができるため、仕事のミスマッチを避けることができます 。
メリット3. 未経験の業種や職種にも転職できる可能性がある
完全即戦力ではない場合、給与が下がる可能性もありますが、 未経験の業種や職種にまだ挑戦することもできます 。その際は、今まで培った経験やスキルが転職先でも活かせる共通点を見つけてアピールすることが大切です。
メリット4. 転職に失敗してもやり直しが利く
35歳という年齢は、人生100年時代においてはまだ十分に若い年齢だといえます。仮に転職に失敗したとしても、やり直しが利かない年齢ではありません。 40代、50代などさらに年齢を重ねてから転職に失敗するよりも、やり直せるチャンス が多くあります。
35歳で転職するデメリット
35歳での転職には、デメリットもあります。転職を考える際には、次の点に注意しながら慎重に検討をすると良いでしょう。
デメリット1. 高いスキルや経験が求められる
35歳以上の転職者は、企業にとって「即戦力」として期待されることが一般的です。これは、前職の経験が豊富で、新たな教育の必要性が低いとみなされるためです。
その結果、高い水準のスキルや経験が求められることが多く、 若い求職者と比較して転職のハードルが高くなることも少なくありません 。
デメリット2. 年収が下がる場合がある
35歳以上で転職をする際、特に未経験の業種や職種に転職すると、前職と比較して給与が下がってしまうケースがあります。これは、企業が求めるスキルや経験のレベルにもとづいて採用時の給与が決定されるためです。 前職での給与額が転職先で保証されるわけではないため、注意が必要 です。
デメリット3. 転職活動が長引く場合がある
35歳以上で転職する場合、転職活動が長期化することも想定しておかなければなりません。なぜなら、35歳以上を対象とした求人が若手と比べて限られることに加え、給与や勤務地、業種や職種といった希望条件によっては、なかなか条件に見合う求人が見つからない可能性もあるからです。
転職活動が長引く可能性があることを踏まえ、転職活動期間は長めに確保しておく 必要があります。
35歳で転職を成功させる人の特徴
35歳で転職活動を成功させる人には、どのような特徴が見られるのでしょうか。次に挙げる4つの特徴にあてはまる人は、転職を成功させやすい傾向があります。
マネジメント能力が高い
マネジメント能力が高く、管理職としての実績を持つ人は、35歳以降も転職に成功しやすいです。多くの企業では、マネジメント経験のある人材が不足しており、定年退職を控えた管理職の後任を育成したいというニーズが存在します。そのため、 優れたマネジメント能力を持つ人材は、業種や職種にかかわらず、転職市場で高い価値を持つことが多い のです。
適応能力がある
新たな環境に素早く順応できるタイプの人は、35歳以降も転職に成功する可能性が高いといえます。 異動や転勤に伴う環境の変化を経験している人や、さまざまな特性を持つプロジェクトに関わった経験がある人 などは、適応能力をアピールするうえで有利です。
問題解決能力がある
困難な状況に遭遇しても状況を客観的に分析し、論理的な解決策を導き出すことができる 人は、特に35歳以上の転職において高く評価されます。問題解決能力は、特にリーダーや管理職にとっては欠かせない能力のひとつです。過去に問題解決能力を活かして成果を上げた経験がある場合、積極的にアピールすることをおすすめします。
明確なキャリアビジョンを持っている
自身のキャリアビジョンを明確に定められている人は、35歳以降の転職市場でも評価されやすいです。キャリアプランがはっきりしていると、 転職先で目指す役割や成長したい方向性が明確になります 。
そのため、自分のスキルや経験が企業のニーズに合致していると判断される可能性が高まります。キャリアの中長期的な計画を立て、それを達成するための戦略的な転職活動を行うことが大切です。
未経験でも大丈夫!35歳で転職を成功させるコツ5選
35歳で転職を成功させるために押さえておきたい、5つのコツを紹介します。未経験の業種や職種に転職する場合でも活用できますので、転職活動を行う際に役立ててください。
コツ1. 転職する理由を整理する
まずは、現状を振り返り今このタイミングで転職すべきか、なぜ転職したいのかを考えることが大切です。
35歳以降は若手と比べて転職のハードルが上がるため、「なんとなく今の会社に不満がある」といった安易な理由での転職は避けるべきです。明確で客観的に納得できる転職理由は、応募書類や面接での印象を良くし、企業にとっても採用を前向きに検討しやすくなります。
コツ2. 条件の優先順位をつける
転職先に求める条件を洗い出し、優先順位をつけておくことも重要です。転職時に条件を欲張りすぎると転職活動を長期化させる要因になり得ます。
そのため、 絶対に譲れない条件と、妥協できる条件を決めておく など、希望の条件に優先順位をつけておくのがおすすめです。優先順位が定まっていれば、どの求人に応募すべきか決める際の判断軸になるでしょう。
コツ3. 培ってきた経験やスキルを活かせる会社を選ぶ
当たり前ですが、今までに培ってきた経験やスキルを最大限に活かせる会社を選ぶことも大切です。たとえ未経験の業種や職種であっても、異業種で同じ職種、もしくは同業種で異なる職種なら、採用される可能性は高まります。
業種と職種の両方を同時に変えるのではなく、どちらか一方のみを変える ことで、前職での経験やスキルを活かすことができます。自分のキャリアを棚卸して、どのようなスキルや経験が転職先で役立つかを洗い出してみてください。
コツ4. 転職先の求める経験やスキルをアピールする
自分の培ってきた経験やスキルが、どのように転職先で活かされるのか アピールすることも大切です。採用担当者に好印象を持ってもらうためには、ただ、過去の功績を並べるだけではなく、自分の経験が転職先ではどう具体的に活かされるのかを伝えなければ意味がありません。
そのためには、応募先の企業がどのような人材を必要としているかを理解し、ニーズにあった項目に絞って伝えることを意識すると良いでしょう。
コツ5. 足りない知識を積極的に習得する姿勢を見せる
35歳以上での転職では、転職先で求められるスキルや知識の不足を補うために積極的に学ぶ姿勢があることも示すのも大切です。応募要件はあくまで目安として提示している企業も多くあります。
自分が足りない部分を認識し、それを補うための努力をしていることを伝える ことで、素直に努力できる人であるという印象を持ってもらうことができます。
今までの経験に固執しすぎず、柔軟に新しい知識を習得する姿勢や、職場に馴染める人であることをアピールすると良いでしょう。
まとめ
「35歳での転職は難しい」と言われることもありますが、決して不可能ということはありません。むしろ、前職で培った経験やスキルを評価してもらえたり、自分に合った仕事を見つけやすかったりというメリットも多くあります。一方で、35歳は一般的に中堅の人材とみなされることから、求められる知識やスキルのレベルも高くなるので、安易な気持ちでは転職に踏み切らない方が良いでしょう。年齢が上がれば転職のリスクも上がるので慎重な判断が必要です。
それでも転職を決意したら、今回の記事で紹介した転職を成功させるコツなどを参考に、ぜひ理想の転職を叶えてください。
この記事の監修
高野 秀敏
株式会社キープレイヤーズ 代表取締役
1999年に株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。人材紹介事業の立ち上げに携わり、企業や転職者の転職サポートを行う。転職者とのキャリア面談11,000人以上、経営者との採用相談4,000人以上の実績を持つ。
2005年に株式会社キープレイヤーズを設立し、ベンチャー企業・スタートアップ企業の専門転職エージェントとして企業に応じたソリューションを提案。NewsPicksプロピッカーへの就任経験や、自身のYouTube活動など様々なメディアで情報発信を行う。
代表著書 『転職して「成功する人」と「後悔する人」の習慣 転職支援の実績でナンバーワンを誇る著者が教える!仕事とキャリアの考え方』『失敗しない!転職の技術』等 YouTube 高野秀敏のベンチャー転職ch X(旧Twitter) 高野秀敏/ベンチャー転職/エンジェル投資家/M&A 企業サイト 株式会社キープレイヤーズ