今日からはじめたい共通テストの英語リーディング対策――連載の振り返り
新しい学習指導要領に対応した大学入学共通テスト(以下、共通テスト)。大手進学予備校で英語を教える大岩秀樹先生に、これまで5回にわたり、共通テストの英語リーディングの特徴、身につけておきたい力とその学び方についてお聞きしました。最終回となる今回は、改めてこれまでの連載を振り返ります。
共通テストの英語リーディングの特徴
試験対策はまず「相手」を知ることからはじめましょう。
多種多様な文章が出題
共通テストの「外国語(英語)」はリスニング(試験時間60分)とリーディング(同80分)がある。リーディングは、多種多様な英語の文章を読み解く問題で構成され、メールやウェブサイト、プレゼンテーション用の資料、エッセイなど、日常や学校生活でよく触れるものが中心。語彙や文法の知識があることを前提に、「英語を活用できるか」を測る問題になっている。
受験者が当事者になる
問題の最初に読み手(受験者)の立場、場面、状況、目的が設定されている。例えば「あなたは交換留学生で、来週の日帰り旅行のために先生が用意した資料を読む」など、具体的に提示される。
使用語数が多い
2020年に共通テストになって以降、英語リーディング全体の語数はほとんどの年で、6,000を超えた。
実用的な語彙・文法・英文
問題の大部分は、高校までに習う語句や文法の範囲を中心に構成されている。そのため基本的な英語力があれば対応できる問題が少なくないので、まずは英検3級レベル、つまり中学校までに習う語句や文法を確実に理解することが大切。
求められる英語力とおすすめの学習法
共通テストの英語リーディングに特に求められるのは、文章の主旨と必要な情報を素早くつかむスキルです。そのために不可欠なのは、基礎的な語彙力と文法の知識を身につけること、そして、たくさんの英文に触れ、読解力を高めることです。
語彙力 ― 使いこなせる単語を増やそう
英検3級レベルの単語を使って英作文
単語の意味がわかるだけでなく、その単語を使って英作文ができることを目指す。英作文ができるということは、つまりその単語の意味を理解し、使いこなせるということなので、確実に身についたといえる。まずは英検3級のライティングテストをスラスラできるようになることを目標にするといい。リーディングでも素早く正確に意味をつかめるようになる。
音読を繰り返す
音読を行うことで、その単語が英文の中でどのように使われるかや、文の構造が頭に入る。読むスピードを速め、読解力をつけることにも効果がある。
文法 ― 英語特有の語句の位置関係を理解しよう
書き写す
わからない英文があったら、まず日本語で意味を理解したあと、語句の位置関係や語順、文法を意識しながら書き写す。次は意味のかたまりを「/」で区切る。
(例)
Being believed by many, / though, / does not make an opinion correct.
(令和7年度試作問題の第A問より)
Being believed by many が「主語のかたまり」、does not make 以降が「述語のかたまり」と、「意味のかたまり」がわかれば、読むスピードが格段に上がり、意味を正確に取れるようになる。
読解力 ― 多種多様な文章に対応できる力をつけよう
英語の文章の基本的な構成を理解する
英語の文章は基本的に段落に分けて構成され、段落ごとにトピックセンテンスがあり、その理由や具体例が述べられる。この構成をわかっていれば、文章の主旨や重要な情報をつかみやすい。
音読で読むスピードと読解力を上げる
「語彙力」の学習法と同じ方法で音読する。
さまざまな文章に触れ、量をこなす
それぞれの文章の主旨と重要な情報を常に意識しながら、できるだけ多くの文章を読む。例えば志望大学のホームページの言語を英語に切り替えて読んでもいい。
英語の通販サイト、映画や本のレビューなどもおすすめ。
まとめ
語彙と文法の基礎を固め、英文を読む力をつけるという、当たり前の学習を続けることが大切です。受験対策はいつ始めても早すぎることはありません。本番のテストで最善の力を出せるよう、この連載がお役に立てればうれしいです。
私は一度目の大学入試では、志望校に合格できませんでした。高校を卒業して、1年後の合格を目指し、受験予備校に入学したのですが、当時、英語はかなり苦手でした。例えば、クラス分けのテストで文法や語句に関する簡単な2択の10問を、すべて間違えたくらいです。そこで予備校の先生から「最初からやり直した方がいい」と言われ、その教えのとおり、中1の内容から学習し始め、中3までを1か月半くらいかけて復習しました。
予備校の先生に勧められた音読にも熱心に取り組みました。そのおかげで、英文を読むのがだいぶ速くなりました。国語の論理的な文章を読む練習をしたことも、英語の長文の読解力向上に功を奏したと思います。
英語の成績が伸びて、予備校の先生がほめてくれたことがうれしく、ますます頑張ろうと思えました。受験するころには、英語が好きな科目になっていました。「わからなければ、ものすごく簡単なところからやり直すといい」というのは、私が経験から得た教訓でもあります。講師となったいま、英語が苦手な生徒には「わからないことは同じ質問でもいいから、理解できるまで何回でも聞いてほしい」と言っています。
中高生のみなさんにはいまの勉強を大学受験のためだけだと思わないようにしてほしいです。先ほどもお伝えしたとおり、「わからないときは、驚くほど戻って、基礎を徹底的に身につける」というのは、基礎ができていれば、試験だけでなく、社会に出てもさまざまな場面に対応できるからです。いま受験勉強が苦しくても、きっと将来に役立ちます。英語は世界とつながるツールですので、できるだけ楽しんで学習してくださいね。
大岩秀樹
東進ハイスクール・東進衛星予備校の英語科講師。基礎講座から難関大向け講座まで多数担当し、応用問題にもしっかり対応できる「本物の基礎力」にこだわる授業を行う。中学生・大学生向けの講座も多数担当しており、大学入試にとどまらない未来へつながる英語指導を心がけている。著書は50 冊以上。
■「NHKテキスト 中高生の基礎英語 in English 2025年3月号」より
■構成:稲田砂知子
■イラスト:柿崎こうこ
前回までの連載はこちら
第1回 中高生必見!「どんな問題? 共通テスト英語リーディングの特徴」
第2回 「使いこなせる単語」を増やそう! 語彙力の高め方
第3回 英語を使うための「ツール」を揃える 文法学習で読解力を上げよう
第4回 リーディングでさまざまな文章に対応できる力をつけよう
第5回 音読と多読でリーディング力アップ! 実践的な読み方も身につけよう。