【鎌倉 ショップレポ】コケーシカ鎌倉 - 日本の伝統こけしとロシアのマトリョーシカの専門店
「コケーシカ鎌倉」は、由比ヶ浜駅から鎌倉文学館方面へ歩いて約5分。長谷の静かな住宅街、吉屋信子記念館の向かいに佇む、こけしとマトリョーシカの専門店です。
筆者もこの道を通るのですが、「いつ開いているのだろう?」と気になっていたお店でもあります。それもそのはず!実は、金・土・日・月曜日の4日間しか営業していない、なかなか出会えない貴重なお店 だったのです。
今回は、そんな「コケーシカ鎌倉」の魅力を探るべく、オーナーの沼田さんにじっくりとお話を伺ってきました。その様子をお届けします。
ルーツを辿ると見えてくる、ふたつの民芸品
沼田さんによれば、こけしの始まりは、木材からお椀やお盆などの生活雑器を作っていた 「木地師」 と呼ばれる職人たちが、端材を使って作ったことに由来するそうです。そして驚くことに、マトリョーシカのルーツは日本の組子式のこけしにあるともいわれています。
どちらも最初は子どものおもちゃとして親しまれていましたが、次第に飾り物やお土産として人気が高まり、やがてコレクターの間で静かに広がるブームへと成長していきました。
「コケ―シカ鎌倉」を開いたのは2009年。ロシアで生まれ育ち、幼い頃からマトリョーシカに親しんできたというお母様の影響も大きかったといいます。
開業から17年を迎えた今もファンは多く、オンライン販売はもちろん、お店でしか出会えない一点物を求めて足を運ぶお客さんが後を絶ちません。
お店に並ぶこけしやマトリョーシカは、すべて工人(職人)による手描きの一点もの。ひとつひとつ丁寧に作られ、その表情や模様には作り手の個性と温かみが宿っています。
色とりどりの世界が広がる店内へ
お店の入り口にあるショーケースには、クリスマス前ということもあり、季節限定のクリスマスマトリョーシカがずらり。思わず微笑んでしまうような可愛らしい表情で、訪れる人を出迎えてくれます。
一歩店内へ入ると、白と木目を基調とした柔らかな空間が広がり、棚には色とりどりのこけしやマトリョーシカが整然と並びます。どれも個性にあふれ、つい時間を忘れてひとつひとつ眺めてしまうような心地よさがあります。
こけしコーナーには、100年ほど経ったアンティークこけしをはじめ、近年増えてきた若手工人の作品、長く伝統を守り続ける工人のもの、故人の工人による希少な作品、さらには神奈川県の工人によるこけしまで、幅広いラインナップがそろっています。
こけしと一口に言っても、実に多彩な世界が広がっていることに驚かされます。
一方のマトリョーシカは、色彩豊かな作品が勢ぞろい。手のひらサイズの小さなものから、さまざまな技法を組み合わせた凝ったデザインまで、見ているだけでワクワクするようなバリエーションが楽しめます。
コケーシカの誕生秘話
こけしは、産地や工人によって個性が大きく異なり、表情や模様の違いからいくつもの系統に分類されているのだそうです。さらに沼田さんの研究によれば、マトリョーシカもこけしと同じように、地域ごとに特徴が分かれ、系統として分類されていることが分かってきたといいます。
そして2009年、沼田さんの研究調査をきっかけに、日本のこけしとロシアのマトリョーシカの交流が、なんと120年ぶりに再開されることになったのだそうです!
そこから生まれたのが、マトリョーシカの木地にこけしを描いた「コケーシカ」、こけしの木地にマトリョーシカを描いた「マトコケシ」、そしてその2つの名を組み合わせた屋号「コケーシカ」。
どれも、日本とロシアそれぞれの伝統を受け継ぎながら生み出された、"新しい伝統木地人形"なのだそうです。
店内の棚には、こうしたオリジナル商品が数多く並び、ここでしか出会えない作品ばかり。知れば知るほど奥深く、ついその魅力を追いかけたくなってしまいます。
気になったものをいくつかご紹介!
鎌倉大仏をモチーフにした、アーティスト「100%ORANGE」 さんとのコラボによる「リトルブッダ・マトリョーシカ」は、日本でデザインされ、ロシアで製作した、コケーシカの完全オリジナル商品。
ロシアの職人たちがひとつひとつ手作業で描いているため、どれも微妙に表情や色合いが異なり、世界にひとつだけの魅力を持っています。それにしても、可愛らしいですよね。
さらに、オリジナル商品で注目なのが「郵便マトリョーシカ」。中に手紙を折りたたんで入れ、ポストに投函すると、なんと送った相手のポストにそのまま届けられる仕組みです。
見た目のかわいらしさだけでなく、実際に手紙を届けられるという驚きもあり、受け取った方も思わず笑顔になりそうです。
このマトリョーシカでぜひ注目してほしいのがお花の部分!なんと、ひとつひとつ麦わらを丁寧に張り付けて作られている のだそうです。
日本ではなかなか難しい高度な手法だけに、その手間と美しさに納得させられます。細部まで職人のこだわりが感じられる一品です。
この彫刻で作られたマトリョーシカは、その細かさに思わず目を奪われます。細部に宿る職人技が光り、手仕事ならではの魅力が存分に伝わってきます。
店内には、まだまだユニークなこけしやマトリョーシカがたくさん並んでいました。
それだけでなく、沼田さんが力を入れているウクライナ支援に関連した雑貨も豊富です。ウクライナ製のオーナメントの他、こけしのデザインの手ぬぐい、キーホルダー、ボールペンなど、多彩なアイテムが揃っており、見て回るだけでも楽しい時間を過ごせます。
沼田さんは、こけし専門誌「こけし時代」をはじめ、「マトリョーシカ大図鑑」など、さまざまな専門誌を編集発行しており、その本もお店に並んでいました。
写真家としても活躍する沼田さん。その幅広い専門性の高さには、驚かされるばかりでした。
こけしとマトリョーシカの魅力を発信し続け、新たな取り組みも
沼田さんは、東日本大震災をきっかけに、「被災したこけしを廃棄するのではなく、何とかよみがえらせたい」「役目を終え、お焚き上げや廃棄されるこけしをアップサイクルしたい」と考え、その思いを形にするため、鎌倉彫職人と共に2023年に「鎌倉彫こけし」プロジェクト を立ち上げました。
伝統のこけしやマトリョーシカの魅力を発信し続けるだけでなく、被災こけしの再生や廃棄こけしのアップサイクル、鎌倉彫とのコラボなど、新たな挑戦にも積極的に取り組んでいます。
その情熱と行動力は、訪れる人にもきっと伝わり、心を動かされるのではないでしょうか。鎌倉の小さな専門店から生まれる、手仕事と挑戦の物語が今後も楽しみです。
手仕事のぬくもりが息づく、小さな世界
「コケ―シカ鎌倉」は、こだわりと愛がぎゅっと詰まった空間でした。
観光でふらっと立ち寄れる立地ではありませんが、わざわざ足を運ぶ価値はきっとあるはず!気になる方にはぜひ、一度訪れてみて欲しいお店です。
こけしやマトリョーシカの概念が変わるような、自分だけのお気に入りに出会えるかもしれません。
オンラインでも購入可能ですが、せっかくなら、直接お店で見ることをおすすめします。ただし、営業日は週に4日程度なので、訪れる際は事前に開店日をチェックしてくださいね。
鎌倉を訪れた際には、ぜひ立ち寄って、その魅力を体感してみてください。
コケ―シカ鎌倉
営業時間
11:00〜18:00
営業日
金・土・日・月・祝日
定休日
火・水・木
電話番号
0467-23-6917
支払い方法
現金、カード、電子マネー、QR決済(楽天Pay・PayPay)
アクセス
江ノ電由比ヶ浜駅より徒歩5分・長谷駅より徒歩10分/JR・江ノ電鎌倉駅より徒歩20分
住所:〒248-0016 神奈川県鎌倉市長谷1-2-15
駐車場:なし