『台湾の原住民』タオ族の文化と伝統 ~独特すぎる食文化とは?
台湾の原住民
筆者が現在住んでいる台湾には、16の原住民が住んでいる。
細かく分類すればさらに多くのグループに分かれるが、現在は16区分で、それぞれが独自の文化、言語、伝統を持っている。
台湾の原住民は政府によって保護されており、原住民の身分を持っている人は、優遇される制度が多くある。
今回は、台湾の離島「蘭嶼 : らんしょ」に住んでいるタオ族について紹介したい。
タオ族とは?
タオ族は、台湾原住民の中で唯一島嶼部に定住する民族集団であり、蘭嶼島に住んでいる。
以前は「雅美族」と呼ばれていたが、1995年に自称である「達悟族(日本語ではタオ族)」に改称された。
「タオ」という言葉は「人」という意味である。
タオ族の特徴的な点は、漁業を生業とすることである。
これは台湾の原住民の中では唯一のケースであり、海を中心にした生活を営んでいる。
飛魚とタオ族
タオ族の文化を語る上で欠かせないのが、飛魚(トビウオ)である。
今でも、蘭嶼に行くと飛魚料理が有名だ。めったに見ることのできない飛魚の姿揚げや、飛魚の卵の料理など、他では食べられない料理を味わうことができる。
蘭嶼島では、毎年3月になると黒潮に乗って飛魚がやってくる。飛魚漁はタオ族にとって、単なる食物調達の手段ではなく、文化的、宗教的に重要な行事でもある。
漁の解禁は「招魚祭」という祭りをもって始まる。
飛魚漁は夜間に行われ、電灯を灯して飛魚を誘き寄せる。そして4月まで漁を行うのだ。
4月までの夜間漁が終わると、5月から7月にかけては昼間に小舟を使って飛魚を捕る。この時期はタオ族にとって最も忙しい季節であり、飛魚漁に専念する。
この時期に獲った飛魚は、9月の中秋節までに全てを食べ切るという決まりがある。
これは自然の恵みに感謝し、貪欲を避け、生態系のバランスを保つという重要な意味が込められている。
このような文化は、タオ族が自然との共存を重んじ、資源を必要以上に使わないように心がけていることを物語っている。
タオ族の独自の伝統
タオ族の食文化には、独特のルールが存在する。
彼らは魚を「高齢者の魚」「男性の魚」「女性の魚」に分類し、食べてよい魚がそれぞれ区分されているのだ。
「高齢者の魚」は毒を持つ可能性もある珍しい種類が多く、豊富な知識と経験を持った年長者たちが食べることを許されている。
「男性の魚」は、比較的捕獲しやすく肉が多い魚であり、「女性の魚」は、柔らかく穏やかな性格を持つ魚とされている。飛魚は女性の魚に分類されている。
こうした食の区別からも、食物の公平な分配や生態系の保護が大切にされていることがうかがえる。
自然との共存
タオ族は長い間、自然と共に生きてきた。彼らの生活は、海や山との共存を基盤としており、環境保護への意識が非常に高い。
しかし、近年の観光業の発展に伴い、蘭嶼島には多くの観光客が訪れるようになった。
シュノーケリングやダイビングなどのレジャーが盛んになる一方で、珊瑚礁が踏み荒らされるなど、環境破壊も進行している。
また、蘭嶼島には、台湾本島からの低レベル核廃棄物が貯蔵されている。
この施設は、島の住民にとって大きな問題となっており、核廃棄物の貯蔵に対する反対運動が強く行われている。
2019年には、政府が過去の補償として25億5000万台湾元(約90億6000万円)を交付することが発表したが、住民の不安は依然として根強い。
タオ族は、伝統と現代化の狭間で生活しており、彼らの文化や生活様式を次世代に伝承していくことは重要な課題となっている。
参考 : 『フォーカス台湾』『財團法人核廢料蘭嶼貯存場使用雅美』他
文 / 草の実堂編集部
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