小山洋二さん『巨樹・巨木図鑑』〝巨木巡りの集大成に〟書籍出版までの道のり インタビュー #1
力強く美しい写真で日本各地の巨木を紹介する『巨樹・巨木図鑑』が話題です。2024年春の発売から版を重ねています。今回、著者の小山洋二さんに巨木との出会いから本づくりのエピソードまで、たっぷりインタビュー。全3回でお届けします。
画像提供:小山洋二 取材・文:別府優希 小山洋二さん近影:天野憲仁(日本文芸社)
国の天然記念物などに指定された巨木は手厚い保護を受けるが、一方、山奥や廃村に人知れず佇む巨木の方が圧倒的に多い。そんな巨木を探しあて、20年間撮影し続ける小山洋二さんが『巨樹・巨木図鑑』を上梓した。47都道府県を網羅した、その数なんと巨木253本。
環境庁の巨木の定義は「幹の周りが3m以上の樹木」だが、本書では幹の周りが10m超えの巨木も数多く紹介している。
▲蒲生のクス(徳島県、幹周24.2m 樹高30.0m 樹齢伝承1,500年)1988年、環境庁が実施した巨樹・巨木調査で日本一に認定。地元の人は「大楠どん」と呼ぶ
「最初に日本文芸社さんから書籍化のお話をメールでいただいたときは『本当かな? スパムかな?』と思いました。制作中も『300冊ぐらいしか売れないんじゃないか……』と思ったり。実際、発売されたら、予想以上に反響がよくてびっくりしています」
現在、増刷を重ねて3刷目(2024年10月現在)。穏やかに話す小山さんだが、書籍出版までの道は容易くはなかった。
巨木に魅せられ20年
「趣味の巨木巡りを始めて20年。自分のペースでのんびり巨木を巡って撮影をしてきましたが、書籍の出版が決まった昨年はとんでもない数の巨木を訪れて撮影しました。
20年の間、巨木写真を撮りだめていますが、10年前のカメラと今のカメラでは性能が違いますから、画質のバランスもかなり異なります。せっかくなら、巨木巡りの集大成といえる本にしたかったので、撮り直しに行くことにしました」
しかし、すぐに撮影に出発できるわけではない。
地元の人ですら存在を知らない山奥にある巨木の地図はない。小山さんがかつて訪れたことがある巨木も、道なき道を歩いてやっと発見した巨木だ。2度目も簡単に辿り着ける保証はない。
書籍出版のためにまず始めたのは、9,000本の巨木のデータベースを作成することだった。
Google Mapと格闘の時間
「この作業に約1か月。次に幹の周りが8m以上ある巨木の位置を地図の等高線を見ながら、このあたりにいるんじゃないかとGoogle Mapに落とし込みました。数年前から自分のためにGoogle Mapを作り始めていたので、要領はもうわかっていたのですが、これが結構大変な作業で……。いずれやる作業だと腹を括ってコツコツとすすめ、最終的には1,500本の巨木をGoogle Mapに登録していました」
▲ピンで埋め尽くされた小山さんのGoogle Map。小山さんのホームページには、日本を飛び出し海外の巨木探訪レポも紹介されている。ぜひ、チェックしてほしい。ホームページ『巨木の世界』https://bigtrees.life/
この本には掲載した253本の巨木それぞれに二次元コードが記載されている。スマホで読み取ると直接Google Mapが表示され、樹木の場所が一発でわかる仕組みになっている。
投稿閲覧数は5億回超!
「山奥の巨木探しはとても大変なんです。自分が一度訪れて苦戦した巨木の場所を簡単に検索できたら、次回現地で苦労することが格段に減ります。私の本を読んで『行ってみたい!』と思ってくれた方も、場所探しがお手軽になりますからね。私がGoogle Mapに投稿した場所や写真、レビューって、現在、5億回ぐらい見られているんですよ。すごいですよね!」
▲取材中、にこやかに話す小山さん。話がはずみ取材1時間の予定を大幅に延長させていただくことに。
全国各地のデータベース、Google Mapを作成すること3か月。こうしてやっと撮影がスタートした。
次回は、巨木撮影の旅のエピソードを伺います。