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HIV患者の福正さん 「告白の旅」を映画化 海外でLGBTQ特別賞

タウンニュース

「告白の旅」を映画化

川崎市内で社会福祉士として働く福正(ふくしょう)大輔さん(42)が、自身にフォーカスして制作したドキュメンタリー映画「カミングアウトジャーニー」が、各地で上映されている。ゲイで元薬物依存症、そしてHIV感染者である自分の真実を、大切な人たちに伝えて回る「告白の旅」の記録が、国内外で静かに共感を呼んでいる。

ドキュメンタリー映画「カミングアウトジャーニー」は、舞台俳優であり演出家でもある福正さんが2022年に制作した。映画監督の山後勝英さんと共に舞台仲間や職場の上司らを訪ね、秘めてきた自身の「真実」を告げ、対話した時間を映像化したものだ。

映画は昨年12月の東京ドキュメンタリー映画祭で上映されたほか、インドやフランスの映画祭で上映され、LGBTQ特別賞などを受賞した。国内でも更生支援や性の多様性などをテーマにしたイベントで上映が続く。

福正さんは広島県呉市出身。18歳で上京し、都内の短期大学で演劇を学び、卒業後に劇団を立ち上げた。20歳のころ覚せい剤を使い始め、不特定多数の同性と性行為に及び、24歳でHIV感染が判明した。

「診察拒否」に怒り

そして東京都内の小学校で特別支援学級の介助員として勤務した11年9月、薬物取締法違反(使用)の疑いで逮捕・起訴され、懲役2年4月(執行猶予3年)の実刑判決を受けた。29歳だった。

罪と引き換えに、自分の破滅的な行動の原因は「依存症」という病なのだと自覚した。更生支援の一環で依存症回復プログラムに取り組み、14年から福祉施設「ホッとスペース中原」(中原区)で働き始めた。回復プログラムを続けながら心理学などを学ぶ傍ら、依存症当事者や元受刑者らの支援にも携わる。

映画の構想は数年前、川崎市内の歯医者で診察を拒否されたことがきっかけだった。HIV患者に対する偏見と差別に怒りを覚え、訴訟も考えた。だが「舞台に立ち、この怒りや自分のことを自分らしく表現していこう」と思い直し、「自分はゲイでHIV患者だと、大切な人たちに打ち明けよう」とも考えた。「真実を伝え、彼らを欺いたことや傷つけたことを謝り、改めて向き合いたかった」

そして自分のように真実を隠しながら生きる人たちのために映像化を着想。知人の山後さんに撮影を依頼した。

告白の旅は22年8月に始まった。演劇仲間に会い、母校である広島市の高校で親友と恩師と向き合い、呉市の実家で母と対面した。ある者は驚いて涙をこぼし、ある者は納得し、ある者は自分の態度をわびた。

カメラはそれぞれの心の動きをとらえ、渾身の告白から始まる深い対話が、映像として映し出される。福正さんは「この映画は、相談する先のない当事者たちにも見て欲しいし、彼らの近くにいる人たちにも見て欲しい」と言う。

福正さん自身は、この映画によって「心が軽くなった」そうだ。「自分のことを説明してくれる。もう取り繕って生きなくていい」。一方で依存症は根治が難しいとも言われる。福正さんは「この映画が私の抑止力でもある。映画と共に頑張りたい」と語った。

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