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アートとレトロ建築をめぐる、小さなおさんぽ旅【谷中編】

イロハニアート

戦後まもなく建てられた木造アパートをリノベーションしたHAGISO

谷中銀座商店街があり、昭和レトロなエリアとして知られている台東区谷中(やなか)。 一帯は震災の影響が少なかったことから、寺院や木造家屋など、古い建物が現在にも数多く残されているそう。 「昔懐かしい下町」のイメージが強い谷中ですが、リノベーション空間が魅力のギャラリーや、個性的な美術館があるなど、アートも楽しめる街だということはご存じでしょうか? 細い路地に隠れ家的なカフェやショップもあって、今、若い世代や海外からの旅行者にも注目されている街なんです! ブラブラとおさんぽして、お気に入りのスポットを探してみてはいかがでしょうか?

戦後まもなく建てられた木造アパートをリノベーションしたHAGISO

昭和レトロなリノベスポット、HAGISOでアート鑑賞


1階は左手がカフェ、右手がギャラリーとなっている

今回のおさんぽ旅は、地下鉄の千駄木駅からスタートします。歩いて5分ほどの場所にあるHAGISOは、築約70年の木造アパートをリノベーションした“小さな複合施設”。岡倉天心記念公園のある静かな通りに面しているのですが、週末はオープン前から行列ができるほど大人気なんです。

みなさんのお目当ては、1階にあるHAGI CAFE。木造アパートの雰囲気をそのまま残した木の温もりあふれる空間がとても素敵なカフェです。

1階にはカフェのほかにアートギャラリーのHAGI ARTもあるのですが、空間を隔てる壁がなく、カフェとギャラリーがひとつの大きな空間になっているのが特徴。アートに囲まれた空間でのんびりできるというのがユニークです!

「旅する朝食」1400円(ドリンク付)。写真は奄美大島の朝食

ギャラリーでは若手アーティストの個展や、HAGISOキュレーションによる展示が毎月行われているので、現在の展示をぜひチェックしてから訪れてください。

ちなみにカフェの人気メニューは、一杯ずつ淹れるハンドドリップコーヒーや、日本全国の食材を使った「旅する朝食」など。朝食、カフェ、ランチとあらゆるシーンで使えます。

2階に続く階段の踊り場

カフェを満喫した後は、レトロな階段を上って2階ものぞいてみて。アパートとして使われていた当時の「萩荘」の看板が、昭和な雰囲気を醸しています!

2階にあるのは、ホテルのレセプション、日替わりのサロン。実はHAGISOでは、まちやどhanareという宿泊施設も運営していて、チェックインを行うレセプションがあるんです。宿泊するお部屋は別の場所にあり、朝食はHAGI CAFE、お風呂は街なかにある銭湯で…と谷中で暮らすように滞在できる施設です。

日替わりサロンでは、曜日ごとに店主が変わり、受けられる施術も異なります。1階のギャラリーが吹き抜けになっているため、2階の廊下からギャラリーを見下ろせるという、ユニークな建物の造りにも注目しましょう。

2階に続く階段には「萩荘」のプレートが

施設概要


最小文化複合施設 HAGISO(ハギソウ)
所在地:東京都台東区谷中3-10-25
アクセス:地下鉄千駄木駅から徒歩約5分
営業時間: 12:00~17:00、金・土・日曜は12:00~20:00 ※朝食8:00~10:30は毎日営業
定休日:月曜、第2火曜
観覧料:無料
公式サイト:https://hagiso.com/
お問い合わせ:03-5832-9808

彫刻家・朝倉文夫のアトリエにお邪魔します!


「HAGISO」を後にしたら、お次は徒歩5分の台東区立朝倉彫塑館(あさくらちょうそかん)へ。途中には、谷中の名所「夕やけだんだん」もあるので要チェックです。階段の上からは、谷中銀座商店街を見下ろせます。時間があれば、商店街のお店で食べ歩きをするのもいいですね。

谷中の住宅街にある台東区立朝倉彫塑館は、近代日本を代表する彫刻家・朝倉文夫の美術館です。建物は朝倉文夫が住宅兼アトリエとして使っていたもので、開放的なアトリエ、貴重な蔵書が所狭しと並ぶ書斎、生活空間だった和風の住居棟など、彫刻作品だけでなく建物自体も見どころとなった施設です。

朝倉彫塑館は谷中の住宅街にひっそりと佇む

明治40(1907)年、朝倉文夫は24歳の時にこの谷中にアトリエと住居を構えました。その後増改築を繰り返し現在のかたちになったそう。今の建物は昭和10(1935)年に建てられたもので、朝倉文夫が自ら設計し、細部の意匠にいたるまでさまざまな工夫を凝らしたと言われています。朝倉文夫の没後公開され、国の有形文化財にも登録されています。

アトリエの床は寄木張り。壁は温かみのあるカラー

まずはアトリエを見学します。天井高は8.5メートル。自然光を取り入れた美しい空間で、昭和7(1932)年に制作された『大隈重信像』や、今にも動き出しそうな猫などの彫刻作品が展示されています。朝倉文夫は愛猫家だったことから、猫をモチーフにした作品も多く、猫好きには必見です! シーズンにより企画展も開催されるので、公式サイトのスケジュールをチェックしましょう。

五典の池。中庭は大部分が水面となった美しい造り

敷地の中央には、朝倉文夫の考えに基づいて造園家・西川佐太郎が作庭したという中庭が広がっています。大半を水面が占める特徴的な造形で、優雅に鯉が泳ぐ情景に癒されます。庭に面した住居棟は数寄屋造の木造建築となっており、居間、自室、寝室が続いています。住居棟の2階の窓からは、コンクリート造のアトリエ棟と木造の住居棟が繋がっている様子が見て取れます。

屋上は季節の花が咲き誇る、自然あふれる空間。初夏はバラが見頃を迎えます。屋上から谷中の街を見下ろすのも新鮮ですよ。

屋上にはシンボルのオリーブの木が。東京スカイツリーも望むことができる

施設概要


朝倉彫塑館(あさくらちょうそかん)
所在地:東京都台東区谷中7-18-10
アクセス:各線日暮里駅西口から徒歩約5分
開館時間:9:30~16:30(最終入館は16:00)
休館日:月・木曜(祝日の場合翌平日)、年末年始、展示替期間
観覧料:一般500円、小・中・高校生250円
公式サイト:https://www.taitogeibun.net/asakura/
お問い合わせ:03-3821-4549

銭湯を改装した現代アートギャラリー


200年の歴史を持つ銭湯「柏湯」をリノベーション 撮影:上野則宏 協力:SCAI THE BATHHOUSE

朝倉彫塑館を後にしたら、SCAI THE BATHHOUSEまでおさんぽです。付近には面積約10ヘクタールもの谷中霊園があるので、散策におすすめ。谷中霊園には約7000基ものお墓があると言われており、15代将軍・徳川慶喜、実業家の渋沢栄一、日本画家の横山大観、朝倉文夫など名だたる人物がこの場所に眠っています。敷地内には幸田露伴の小説『五重塔』のモデルになった天王寺五重塔跡もあります。

谷中霊園のほど近くにあるSCAI THE BATHHOUSEは、江戸時代に創業した銭湯「柏湯」を改装した建物が目を引く現代美術のギャラリーです。戦後に建て替えられたという銭湯建築をそのまま活かしており、瓦屋根や外壁タイルがレトロな雰囲気! 内部はモルタルの床に白壁と、モダンな展示室になっています。

1993年のオープン以来、さまざまな企画展を行っている -森万里子「Central」(2020年) 撮影:表恒匡 協力:SCAI THE BATHHOUSE

SCAI THE BATHHOUSEでは、日本人だけでなく世界各地から新進気鋭のアーティストを取り上げ、企画展を行っています。現在は、京都を拠点に活躍するアーティスト、名和晃平の個展「Sentient」を開催中。

名和晃平は、アナログとデジタルの融合を独自の世界観で表現するなど、ミクストメディアを実践してきた彫刻家。国内外で展覧会を行うほか、さまざまなジャンルのクリエイターたちとのコラボレーション作品でも知られています。

名和晃平 《Cells in the Grotto》2025、ミクストメディア、455 × 955 ×495 mm 撮影:表恒匡

「Sentient」は、名和晃平のSCAI THE BATHHOUSE における3年ぶり6度目となる個展です。展示されているのは、約20点の彫刻作品。70年代のブラウン管テレビや、 節句を祝う飾り馬、デッサンに使われたギリシャ彫刻の石膏像など、ユニークな素材を用いたオブジェが、名和晃平独自の世界観に誘います。さらに作品は静物だけにとどまらず、燃焼し続けるロウソクや展示中に週替りで生け替える生け花なども! 彫刻の概念を超えた作品を通し、新鮮な驚きに出会えることでしょう。

施設概要


SCAI THE BATHHOUSE(スカイ ザ バスハウス)
所在地:東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡
アクセス:JR日暮里駅南口から徒歩約10分
公式サイト:https://www.scaithebathhouse.com/ja/
お問い合わせ:03-3821-1144

開催概要


名和 晃平 「Sentient」
会期:2025年4月22日(火)~ 7月12日(土)
開館時間:12:00~18:00
休館日:日・月曜、祝日、展示替期間
観覧料:無料

ひと休みは“名建築”なカヤバ珈琲で決まり!


交差点に佇む木造の町家建築がひと際目を引く

アートを満喫したら、締めくくりは昭和な雰囲気漂う喫茶店で。カヤバ珈琲は、大正5(1916)年に建設されたと推定される、築100年以上の古民家カフェです。店舗兼住宅として建てられた2階建ての木造建築は、ミルクホールやかき氷店などとして営業した後、昭和13(1938)年に「カヤバ珈琲店」として創業したそうです。

「カヤバ珈琲店」の閉店後、しばらく使われていなかった建物ですが、谷中を新しい文化の発信地とするプロジェクトの一環として、たいとう歴史都市研究会やSCAI THE BATH HOUSE、存続を望む多くの人たちの協力のもと、喫茶店として再生しました。

梁が表に出た出桁造り(だしげたづくり)の屋根が特徴

リノベーションを手掛けたのは、建築家・永山祐子が率いる永山祐子建築設計。ドアや窓など、喫茶店時代の古い建具は残しつつ、モダンな要素も取り入れた空間になっています。窓際が心地よい1階のテーブル席のほかに、2階には靴を脱いで上がれる座敷席もあります。

カヤバ珈琲は谷中のシンボル的存在であり、朝8時のオープンと同時に満席になるほどの人気ぶり! 席は前日までの予約が可能なので、週末は特に予約をしておくのがおすすめですよ。

レトロ喫茶の雰囲気を楽しめる1階のテーブル席

コーヒーをはじめ、軽食やスイーツなどの喫茶店らしいメニューを提供。なかでも、一度は試してほしいのがたまごサンドです。

「カヤバ珈琲店」時代から人気のサンドイッチをイメージしたオリジナルメニューで、ふっくらと厚みのある卵焼きをサンドしたクラシックなスタイル。レーズン酵母で発酵させた山形食パンのしっとり食感に、ディルマヨネーズの隠し味が◎なひと品です。

ドリンクは名物のルシアンをチョイス。「カヤバ珈琲店」から引き継いだという名物メニューで、コーヒーにココアをブレンドした個性派ドリンクです。レトロな空間と喫茶メニューでのんびりしつつ、アートとおさんぽを満喫した1日を振り返ってみてはいかがでしょうか。

たまごサンド1400円とルシアン680円

施設概要


カヤバ珈琲
所在地:東京都台東区谷中6-1-29
アクセス:JR日暮里駅南口から徒歩約13分
営業時間:8:00~18:00(フードLO 17:00、ドリンクLO17:30)
定休日:月曜(祝日の場合翌日)
公式サイト:
https://www.instagram.com/kayabacoffee/
お問い合わせ:03-4361-3115

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