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【長泉町井上靖文学館の企画展「井上靖と松本清張 作家の視点」】 二大作家の知られざる接点と共通点。「下山事件」へのアプローチは対照的

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は長泉町の長泉町井上靖文学館で3月11日まで開かれている企画展「井上靖と松本清張 作家の視点」を題材に。

静岡県ゆかりの作家井上靖と社会派ミステリーの大御所松本清張。戦後日本屈指の作家2人の接点は、これまでそれほどクローズアップされてこなかった。だが共通点は多い。

井上は毎日新聞社出身、松本は朝日新聞社出身。新聞社に縁がある。2人とも芥川賞を得ている。例えばそういうことだ。今回展は北九州市立松本清張記念館の特別協力を得て、知られざる両名の関係性を作品と実生活の両面で紹介している。

メインビジュアルとして使われている写真は1974年10月、文藝春秋が企画した北陸への講演旅行の際に撮影したもの。旅行には井上、松本、石川達三、井上ひさしが参加した。何やら指し示す松本とそれを見やる井上。同時期の予定帳には「清張さんの会」なる書き込みがあり、頻繁な行き来を思わせる。

2人の出会いは1950年代半ば。松本が新聞社を辞めて作家専業の道を進むにあたり、井上の言葉が大きく影響したようだ。展示を見ると、井上の扱った主題を松本が「自分も」とばかりに「追っかけて」いるのが分かる。

その一例が1949年に発生した「下山事件」だ。国鉄総裁だった下山定則氏が失踪し、轢死体で見つかったこの事件を、井上は1950年に「黯い潮(くろいうしお)」という題名で小説化し、松本は1960年のノンフィクションシリーズ「日本の黒い霧」で取り上げた。

同じ事件を、新聞記者出身の井上は物語として描き、記者ではなかった松本がノンフィクションとしてまとめているのが興味深い。内容もそれぞれ自殺説、他殺説を基調としており、対照的だ。2人のキャリアの道筋が交差する様子が浮かんできた。

(は)

<DATA>
■長泉町井上靖文学館「井上靖と松本清張 作家の視点」
住所:長泉町東野515-149 
開館:午前10時~午後5時(水曜休館、祝日の場合は翌日休館)
観覧料(当日):大人・大学生200円、高校生以下無料、長泉町在住・在勤者無料
会期:3月11日(火)まで

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