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キリンのお引越しが終わらない…!「キリン側の理由もある」試行錯誤で半年以上

Sitakke

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新築のマイホームと聞くと誰もが夢みるものですが、「おびひろ動物園」では、キリンの親子が新居への引っ越しを拒んでいます。

5月6日の「おびひろ動物園」。
ゴールデンウィーク最終日も、大勢の家族連れでにぎわいました。

おびひろ動物園に2024年に新しく完成したのが、こちらの「キリン館」です。

このキリン館をめぐって、飼育員を悩ませるある問題が起きているんです。

完成から9か月。新しい獣舎に入ってほしい飼育員に対し、キリンの親子が入居を拒否…。

「手前まで来るが戻ってしまった」

おびひろ動物園の渡邊誠克園長がそう説明します。
試行錯誤が続くキリンの引っ越しを取材しました。

親子のために、観察もしやすく、そんな思いの新獣舎

いまから60年以上前の1963年、札幌市の円山動物園に次いで、北海道で2番目に開園した「おびひろ動物園」。

ホッキョクグマやニホンザルなど63種類、約280の動物がいて、アミメキリンはオスの「メープル」と、メスの「ユルリ」、2頭の子どもでオスの「ユメタ」の3頭が暮らしています。

この3頭のために建てられたのが2024年の8月に完成した「キリン館」です。事業費は約5億8600万円。

高い位置から、キリンと視線を合わせて観覧できて、悪天候でも冬場でもキリンが観察できるようにガラス張りの屋内展示室を備えています。

しかし、今、オスのメープルはすでに新しい施設に慣れて中に入ってますが、ユルリとユメタはなかなか入ってくれません。

渡邊誠克園長は「キリン側の理由もありますので、人間だけの都合どおりにはいかなかった」と話します。

どうして入ってくれないの?

せっかく作った新獣舎になかなか入ってくれないキリン親子。旧獣舎から歩いてすぐなのに、どうしてなのでしょうか。

渡邊誠克園長はキリンの生態についてこう話します。

「キリンは野生下では肉食の動物から身を守るということがあり、嗅覚とか聴覚、視覚すべてにおいて能力の高い動物。あと理由の1つに頑固な一面がある」

さらにもう1つの理由が警戒心の強さです。

こちらは2013年、おびひろ動物園で飼育されていたオスのキリンが釧路市動物園に引っ越すときの様子です。

輸送用の檻に警戒してなかなか入ろうとしません。
入っても逃げ出してしまいます。

警戒のあまり檻から逃げ出すキリン

その後、檻に入る練習を重ね、10日後にようやく引っ越しに成功しました。

実はメスの「ユルリ」も2019年に東京の多摩動物園からやって来たキリンです。

このときは25時間の長旅だったにも関わらず、すんなりと入居してくれました。

とにかく今の引っ越しでも大切にしているのは「強制しない」こと。

「注意を向けさせてキリンが自発的に入るようにというやり方でやっている」のだといいます。


安心して暮らせる日まで

去年から始まった新獣舎に引っ越すための訓練。

餌を持った飼育員が新しい獣舎に入りますが…メスの「ユルリ」は立ち止まってしまい、入ってきてくれません。

飼育員は、じっくり時間をかけてキリンとコミュニケーションを取りながら1つ1つ向き合っていくしかありません。

渡邊誠克園長がこう説明します。

「早い時期に分かったのは、個体によってガラスに自分の姿が反射して気になる。ですのでカーテンで反射を防ぎ、映らないよう対策している」

結局、旧獣舎で冬を越したキリンは、気温が安定した4月、引っ越しの訓練を再開。

4月下旬の夏の営業開始までに引っ越しを終えたいところでしたが…

「4月20日の時点で父親のキリンは中にいるのですが、このあとですね、母親キリンが入ろうとしているんです」

まるでお父さんキリンのメープルが「こっちだよ」と呼んでいるようにも見えます。

ですが、母親のユルリは手前まで来てくれるものの戻ってしまいました。
この状態が半年ほど続いています。

キリンが安心して新獣舎で暮らせることが第一。
飼育員は寄り添い続けながら試行錯誤しています。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年5月6日)の情報に基づきます。

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