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山火事被害の大船渡のわかめ販売で支援 今知ってほしい課題

TBSラジオ

岩手県大船渡市の山火事の発生から、昨日で3ヶ月が経ちました。
被災した大船渡市綾里地区を支援しようと、関東近郊の有志が集まる市民グループが杉並区の劇場「座・高円寺」の前で毎月開かれているマルシェ「座の市」で綾里の特産のわかめなどを販売しています。今月の「座の市」で販売の様子や課題などを取材してきました。

発生から3ヶ月 大船渡市の山火事

まずは、綾里地区の山火事被害について、市民グループ「綾里のわかめ屋さん」奥野誠司さんに伺いました。

綾里のわかめ屋さん 奥野誠司さん


火災の被害が一番大きかったところが、我々のわかめが来ているところ。綾里の生産者の年収の大半を占めているものなので、大船渡の火災があって、浜に、そこに収穫直前のわかめがあるのに、海に行けない、家に帰れない事態だったんです。当初収穫を始めるシーズンから2週間くらい結局遅れたんですかね。鎮圧が宣言されてやっと家に帰れて、あれがあと1週間、2週間遅れたら今年のわかめは全滅かもねみたいな危機だったんです。結局育ちすぎると、味が落ちちゃうので、そのわかめは全部廃棄するしかないよね、というギリギリの事態だったんですね。私たちが交流している方のところでは、作業小屋や、わかめを保管していた冷凍コンテナ、漁具、ほぼほぼ全部焼けてしまって、レンタルで調達したり、場所を貸してもらったり、収穫から出荷作業がなんとかできているような状態ですね。


わかめにも旬があって、3月、4月ごろに収穫し、1年間冷凍保存して、年間通して販売しているそうです。鎮火が4月7日だったため、本当にギリギリの収穫だったということです。

(山火事鎮圧後、現地入りして収穫作業を手伝った「綾里のわかめ屋さん」のメンバー)

座の市は毎月第三土曜日に開かれていて、毎月およそ20のグループが出店しています。取材した「綾里のわかめ屋さん」は座の市に10年ほど前から出店していて、今はおよそ10人で活動。メンバーは岩手や大船渡にゆかりがあるわけではなく、以前発行されていた綾里漁協の「食べ物付き情報誌」の読者仲間です。

(座の市の販売の様子)

綾里のわかめは漁場が良く、ミネラルなど栄養分が高いそうで歯ごたえがあるのでサラダのほか、煮物にしても煮崩れしない特徴があるそう。その綾里からわかめや、「海のパイナップル」と言われる「ホヤ」の加工品など特産の海産物を仕入れて販売しています。

わかめを買いに来た人は

座の市に、わかめを買いに来た方に話を聞いてみました。

「岩手県出身です。火災がやっぱり大変だったので、同県人として、心痛いなというのがあったので、なるべく買おうと思って今日も来ました。子どものときから食べてますね。三陸の綾里のわかめ、流通良かったので、食べています。「頑張って」とは一言に言いづらいですけど、美味しいものは伝わるので「美味しい」って言い続けるのがいいかなと思っています。」

「先月来て、わかめ売り切れで無くて、今月雨だけど来てみようかなと思って。火事は知ってましたけど、直接身近には感じてなかったから、この海産物のことで様子も聞いて知って、大変だったなということで。私たち直接行けないから、特産品を買って、少しは役立ててもらうという気持ちはあります。」


取材日は大雨だったんですが、雨の中わかめを求めて買いに来ていました。4月の開催日は、晴れたこともあって、多くの方が買い求めて、売り切れたそうです。

(晴れた日の座の市の様子)

鎮火して終わりではなく、これから

綾里のわかめ屋さんの奥野誠司さんは、山火事発生から3ヶ月が経った今、全国のみなさんに知ってほしいことがあると、このように話していました。

綾里のわかめ屋さん 奥野誠司さん

「焼けて大変でしたね。わかめが獲れるか獲れなかったかギリギリでしたね」みたいな目立った話以外に、これからどうするみたいなところがあまり報道されていない。漁協としてはこれからなんですよね。とりあえずわかめはなんとか出荷できたね。だけど、山火事で燃えちゃった山が、山崩れしちゃうかもしれないんだけど、どうするの?それ以外に、ウニの漁をするためのものも失ったり、実は火事場泥棒的に持って行かれたみたいなところがあったり、目の前に物があるのに収穫できない、漁ができない状態になっている漁師の方がいっぱいいて、我々も売り上げの一部を送ったりとかもしました。火災が鎮火して、そこから先あまり出てこない話題にも注目していただけると、ありがたいなと思っています。

鎮圧、鎮火して一気に報道が減ってしまったけれど、まだ道具を失ったままの方もたくさんいるし、山を見ても、火災の影響で根っこが痛み、今にも倒れそうな木もあって、不安はたくさんあるということでした。

取材した日には、先月、大船渡にわかめの収穫ボランティアに行ったという大学生も手伝いに来ていましたが、奥野さんは多くの方に現状や課題をとにかく知ってほしいと話していました。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)

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