ヴェルスパ大分 県代表の座を懸けた熱戦、PKで決着 【大分県】
天皇杯全日本サッカー選手権(以下、天皇杯)の県代表決定戦。ヴェルスパ大分は、前回決勝で敗れたジェイリースFCとの再戦で、PK戦の末に雪辱を果たした。2年ぶりの天皇杯出場を決めたその勝利には、「最後まで諦めない」強い意思と、積み上げてきた準備がにじんでいた。
試合は立ち上がりから動いた。前半8分、右サイドからのクロスにMF重田快が鋭く反応。頭で押し込み、ヴェルスパが先制に成功した。しかし、後半21分に同点とされ、以降は互いに譲らぬ一進一退の展開が続いた。延長戦に入ってもスコアは動かず、勝負の行方はPK戦に委ねられた。
勝利を手繰り寄せたのは、守護神・姫野昂志だった。1本目、相手のキックを完璧に読み切り、冷静にセーブ。勢いをもたらしたこのプレーが、チームの集中力を一段と高めた。続くキッカーたちは全員成功。「自分が止め、仲間が決める」(姫野)という狙い通りの展開となり、劇的な勝利を収めた。
試合は一進一退の展開が続いた
中村元監督は「惜しいで終わらせたくなかった」と語り、選手にはPK戦前に(キッカーを)立候補するようにを促したという。「最初は誰も手を挙げなかった」と明かす場面もあったが、蓄積してきた練習の成果が勝負の場で発揮された。
この試合を通じて中村監督が強調したのは、「勝ち切る力」と「最後までやり切る姿勢」だった。ロングボールを使った戦術も、前線の強みを生かす明確な狙いのもとで実行され、攻撃のバリエーションとして機能した。また、今大会は若手を含む多くの選手に出場機会を与え、チームとしての選手層の厚みを感じさせる内容だった。
PK戦を含むこの接戦の経験は、リーグ戦においても貴重な糧となるはずだ。競った試合を制するための精神力と集中力、そしてプレッシャーの中で発揮される個の力。それらがそろったとき、チームは「勝てる集団」として完成する。
天皇杯では「J1クラブと戦える舞台まで進みたい」と中村監督は意気込む。姫野も「(2回戦の対戦相手となる)アビスパ福岡とやってみたい」と目標を掲げる。かつてベスト16まで進んだ実績を持つヴェルスパにとって、全国のサッカーファンにクラブをアピールする場でもある。「知名度を上げて、リーグ戦の集客につなげたい」(中村監督)とクラブが一体となって勝ち上がる思いは強い。
勝利し抱擁、中村元監督と姫野昂志
(七蔵司)