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料理家が海外旅行に出かける際の「持ち物リスト」──自炊料理家・山口祐加さんエッセイ「自炊の風景」

NHK出版デジタルマガジン

料理家が海外旅行に出かける際の「持ち物リスト」──自炊料理家・山口祐加さんエッセイ「自炊の風景」

自炊料理家・山口祐加さんの「料理に心が動いた時」

自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴ったエッセイ「自炊の風景」。

山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。料理家が海外旅行に出かける際の「持ち物リスト」。ましてや、旅行先で自炊する山口さんの場合は何か特別なアイテムがあるのでは……? その品々を公開していただきます。

※NHK出版公式note「本がひらく」より。「本がひらく」では連載最新回を公開中。

料理家の海外持ち物リスト

 海外を旅したことがある人なら、必ず一度は「持ち物リスト」を旅の前に検索したことがあると思います。異国の地で「まさか」がないように、できるだけ安心して過ごせるように。私もそのひとりで、いまだに長旅の前は持ち物リストとにらめっこ。でも、私がいつも持って行く荷物の中で、一般的なリストに載っていないものがあります。それは、異国の地でホッとする食事を作るための食材。中南米を1か月半旅行した時に持って行った食材は次のとおりでした。

・米 2kg
・梅干し 20個
・味噌二種類 500g
・鰹節 小分けパック12個
・昆布 5枚
・板海苔 10枚
・小さな羊羹ようかん 6個
・おいしい緑茶とほうじ茶のティーパック 30個

 これらを持って行っている理由は主に三つ。一つ目は、海外で日本の食材は割高なのと、クオリティの面で日本から持って行ったほうが安心できること。二つ目は、海外の人に私が料理家であることを話すと十中八九「日本料理を食べてみたい!」と言われること。和食大好きな私としては、素材が活かされた日本の味を体感してほしいので喜んで作ります。三つ目は、米2kgを持って行っても旅の最中に食べきれるので、荷物の容量に無駄がないこと。日本の食材がなくなった分、海外で手に入れたおいしいものを詰めて帰ってきます。

 上記の食材リストは、たくさんの旅を積み重ねる中でブラッシュアップされた精鋭集団と言っても構いません。

 米は海外でシンプルな日本のご飯を食べたくなった時に炊きます。板海苔があるのでおにぎりにもできますし、巻き寿司も作れます。醬油は旅先の街中にあるスーパーで手に入る場合が多いので、必要な場合は現地調達します。シンプルなおにぎりでも、日本のお米はおいしいのでおにぎりを食べたことがある海外の人たちも「米がとにかくおいしい」と上機嫌。

メキシコシティで作った時は標高が高いのでご飯が硬めの仕上がりだった

 梅干しはおにぎりの具にもできますし、海外で料理の仕事をしている人は日本の注目するべき食材として梅干しを認識している場合が多いので、「これが本物の梅干しか!」と喜んでくれます。旅は移動が多いので、自炊できる宿に泊まっておにぎりを作って携帯することもあります。その時に具材として梅干しを入れておけば、防腐効果があって少し時間が経っても安心して食べられます。ちなみに調理道具はどうしているかというと、現地にあるものでなんとか作っています。たとえばお米はフライパンでも炊けますし、笑えないほど切れない包丁も旅の醍醐味として切れない可笑しさを味わっています。閑話休題。梅干しは持って行ったお茶と一緒にお湯で薄めれば、心休まる温かい飲み物にもなります。

 味噌は米味噌と赤味噌の二種類を持って行きます。味噌があれば、現地で調達したじゃがいもや玉ねぎでみそ汁が作れますし、ポルトガルを旅した時は、イワシを捌いてにんにくや生姜と混ぜ合わせてなめろうにしたら現地の人たちに大人気でした。砂糖はどこの家庭にもあるので味噌と合わせてタレを作り、なすやピーマンを炒めるのも人気の一皿。炊いたご飯にちょっと味噌をつけて食べるのも、旅の中で発見したおいしさの一つです。

みそ炒めは保守的な舌を持つイタリア人にも好評だった
電子レンジで作った茶碗蒸し。見た目は微妙でも味は遜色ない

 鰹節と昆布があれば、合わせ出汁が作れます。まだ持って行ったことはないですが、出汁パックでもいいと思います。メキシコのオアハカを訪れた時は、レストランで隣になった藍染めアーティストの女性と仲良くなり、日本にもよく行っていて和食が大好きとのことで私が和食を作ってもてなすことに。その時に合わせ出汁を使ってみそ汁、茶碗蒸し、サワラの炊き込みご飯を作りました。ただでさえ炊き込みご飯にはごちそうなのに、海外で食べる時の特別感と言ったらありません。彼女も「最高」と喜んでくれました。よかった!

余った炊き込みご飯はお土産に持って帰ってもらった

 板海苔は米と一緒に食べる以外にも、フランスを旅した時はチーズを挟んで食べるのも一興でした。

 羊羹やお茶は、日本のティータイムを味わってほしくて持って行きます。羊羹はなんとなく苦手な人が多いかな? と思っていたのですが、トルコでもペルーでも大人気でした。とらやの羊羹を持って行っているのですが、包み紙の美しさや、創業500年の伝統を話すとみなさん驚きます。お茶はティーバッグを持って行っているので、旅先で出会った人たちにちょっとしたギフトとして渡すのにもぴったり。ちなみに海外は硬水の国も多く、緑茶は日本と同じ味に淹れられないこともあり、海外の方にはほうじ茶のほうが人気です。

 1年間の海外旅を通して、海外の人たちの日本食に対する関心が想像以上に高いことを実感しました。日本から持ってきたおいしいものを嫌がる人はいません。ぜひ「おいしい外交」の参考にしてみてくださいね。

※「本がひらく」での連載は、毎月1日・15日に更新予定です。

プロフィール

山口祐加(やまぐち・ゆか)
1992年生まれ、東京出身。共働きで多忙な母に代わって、7歳の頃から料理に親しむ。出版社、食のPR会社を経てフリーランスに。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。著書に『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』(紀伊國屋じんぶん大賞2024入賞)、『軽めし 今日はなんだか軽く食べたい気分』、『週3レシピ 家ごはんはこれくらいがちょうどいい。』など多数。

※山口祐加さんHP https://yukayamaguchi-cook.com/

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