【浜松市秋野不矩美術館の特別展「秋野不矩と高畑郁子 -インドとの邂逅-」 】 白の空間に高畑郁子の赤と秋野不矩の黄が映える
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は浜松市天竜区の浜松市秋野不矩美術館 で3月16日まで開催中の特別展「秋野不矩と高畑郁子 -インドとの邂逅-」を題材に。
静岡県磐田郡二俣町(現浜松市天竜区二俣町)生まれの秋野不矩(1908~2001年)と愛知県豊橋市で育った高畑郁子(1929~2023年)。新制作展、創画展で作品を発表し、インドへの旅行でインスピレーションを受けた二人の日本画家を対比させる特別展。
秋野は50代半ばに初めてインドを訪れ、大地や大河といった自然、その一部としての人間の営みを描いた。一方、高畑は40代半ばで初めてインドに足を踏み入れ、今回展で見られるように、人々の信仰に生きる姿に感銘を受けたようだ。後にチベットや中南米も訪れた高畑の「信仰」への関心は、出品作によく表れている。
秋野不矩美術館の企画展は、「ホスト役」たる秋野作品とゲスト作品の関連付けの妙にいつも感心させられる。今回もしかり。真っ白な第2室に入って、思わずため息が漏れた。
四つの壁の二面を高畑、残る二面を秋野で占めているのだが、色のコントラストが非常に美しい。高畑の「遺跡に立つ」(1975年)、「赫界」(1978年)、「浄界」(1978年)の3点は仏教やヒンズー教の神々を赤の線でいくつも重ねている。秋野の「ガンガー」(1999年)、「民家(ブバネシュワールオールドタウンA)」(1993年)は乾いた黄色が印象に残る。いかにも秋野らしい色彩感覚だ。
パッキリ別れた赤と黄。これが白い壁面に映える。部屋全体が一つの作品のようだ。
高畑の作品をじっくり見るのは初めてだったが、特に1950年代の作品は西洋絵画からの影響が強く感じられた。太い直線で人物の体の輪郭を描く「髪」(1957年)やサーカス団を主題にした「曲馬」(1960年)などからは、ベルナール・ビュフェへのあこがれをかぎ取った。真偽は不明だが。
(は)
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■浜松市秋野不矩美術館「秋野不矩と高畑郁子 -インドとの邂逅-」
住所:浜松市天竜区二俣町二俣130
開館:午前9時半~午後5時
休館日:月曜
観覧料(当日):一般800円、大学生・高校生・専門学校生500円、70歳以上400円、小中学生無料
会期:2025年3月16日まで