大分トリニータ 後半戦のキープレーヤー 揺るがぬ意思で最終ラインを統率する野嶽惇也 【大分県】
大分トリニータの後半戦がいよいよ幕を開ける。6勝8分5敗、勝点26で10位。昇格プレーオフ圏内の6位を狙うチームにおいて、後半戦のキーマンと目されるのが野嶽惇也である。
本来はボランチとして迎えた今季だったが、開幕前の負傷によりセンターバックへとコンバートされた。これまでも複数のポジションをこなしてきたユーティリティー選手で、今季は守備の要としてチームを後方から支えている。最終ラインではブラジル人CBのデルラン、ペレイラと共にチャレンジ&カバーを繰り返し、試合ごとの状況に応じた最適な守備を遂行。野嶽が持ち前の洞察力で全体を見渡し、組織を整えている様子は、まさに「守備の舵取り」である。
昨今はセンターバックの大型化、高速化が著しい中、野嶽は高さもスピードも圧倒的ではない。それでも相手アタッカーの特性を読み取り、ポジショニングとタイミングで封じる術がある。冷静に、したたかに対応する姿は、知性派センターバック。本人も「自分の振る舞いが結果に大きく関わってくるポジション」と語っており、いかにチームに安定をもたらすかという視点でピッチに立っている。
最後尾からチームを統率する野嶽惇也
理想とするのは、かつて大分でもプレーした元日本代表・森重真人のような存在だという。後ろにどっしりと構えるリーダーがいることで、味方は思い切って前に出られる。「自分がいることでチームが機能すると思わせること」。それが野嶽が目指す「センターバック像」なのだ。
後半戦に向けては、右サイドで攻撃の起点をつくり、逆サイドから仕留める形を理想に掲げる。守備面では、特に外国籍FWとのマッチアップを通して多くを学び、経験値を高めている。「試合が一番の筋トレ」と笑う通り、日々の接触と駆け引きが、体とメンタルの両方を鍛えている。
また、野嶽の成長はフィジカル面にとどまらず、精神面の成熟にも表れている。主力が不在のときこそ自らが軸となり、ピッチ内外でバランスを保つ意識を強く持つようになったという。プレーだけでなく、姿勢や振る舞いを通じてチーム全体に影響を及ぼす存在へと変化しつつある。
引き分けの多かった前半戦。簡単に崩れなくなった守備の裏には、野嶽の頭脳が確かにあった。今やその存在はチームにとって不可欠。光の当たりづらいポジションで、静かに着実に信頼を勝ち取ってきた野嶽が、トリニータの命運を背負い、後半戦を走り抜く。
「センターバックは動じぬ心が大事だ」と語った
(柚野真也)