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「中学受験」高学年になっても算数が不得意 親が知っておくべき「コツ」「テクニック」を気鋭の算数専門塾長が解説

コクリコ

中学受験算数専門塾「フォトン算数クラブ」塾長・武井信達先生に聞く、算数が得意になる方法連載2回目。今回は、中学受験の算数につまずいたときのリカバリー方法を、教育ジャーナリスト・佐野倫子さんが伺いました。全3回の2回目。

【密着写真19枚】「探究スペシャル」に参加した子どもたち

教育ジャーナリスト・佐野倫子です。「中学受験伴走(サポート)」シリーズ。前回に引き続き、中学受験の算数の取り組み方について、算数1科専門塾「フォトン算数クラブ」塾長・武井信達先生に直撃した様子をお届けします。今回は、高学年で算数の苦手意識を持ってしまったお子さんに向けた、その解消法について。解決方法はあるのでしょうか?

佐野倫子(さの・みちこ)
東京生まれ、早稲田大学卒。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。おもな著書に『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2人の男の子の母。

武井信達(たけい・のぶたつ)
フォトン算数クラブ塾長。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了(同大学卒業)。中学受験算数指導歴30年以上。2007年に東京・自由が丘にて、算数1科のみの中学受験塾「フォトン算数クラブ」を1人で創業。現在は、自由が丘・白金高輪・日本橋の3エリアに教室を構える。

記憶力がカギに!?

──中学受験の算数は、5年生の学習範囲に重要単元が目白押しです。しかも授業数も増え、内容もハイレベル。進むのも速く、5年生でつまずいてしまう子が多くいる印象です。高学年で算数に苦手意識を持ってしまった場合、どうすれば解消できるのでしょうか?

武井信達先生(以下、武井先生):誤解を恐れずに言えば、中学受験の算数ができるようになるために一番大事なことは「記憶力」だと思っています。それこそ5割くらいは記憶力ではないかと、講師生活30年の身として感じています。

どの科目も覚えて定着させることで伸びていきます。それは算数であっても同じこと。いわゆる頭の回転が速いというのも大切かもしれないけれど、着実に記憶していけると点数につながっていきますね。

また、問題文をしっかり読み、解くときに順序立てて考える力も大切です。頭の回転より、記憶して定着を図ることのほうが圧倒的に大事です。ひらめきがないから無理、と嘆くよりも、記憶したことを引き出して使う力のほうがよほど重要です。

「フォトン生が毎日必ずやっていることがあります」(武井先生)。

1日10分過去の単元を解き直すこと

──では、算数の知識はどうしたら定着するのでしょうか? 家庭でもできる方法があれば教えてください。

武井先生:前回もお話ししましたが、フォトンでは、1日1問ノートというのを作って生徒に取り組んでもらっています。授業で使ったテキストで、間違えた問題に印をつけておき、その中から1問、毎日ノートに解き直していく。

ポイントは、今週間違えた問題じゃなくて、入試の出題範囲である4年生以降の過去のテキストや単元から、1問ずつ解いていくこと。そうすることで、忘れかけていた知識が定着していきます。1日1問10分でいいんです。これがのちに絶大な効果を生みます。高学年でも効果がしっかり出ますよ。

過剰な他人との比較はNG

──中学受験は長丁場なので、一度でも「算数が苦手だな」と感じてしまうと、子どものやる気も低下してしまいます。親も焦ってしまうけれど、塾のカリキュラムはどんどん進んでいく。この「苦手スパイラル」を脱却する方法はありますか?

原理の大切さを語る武井先生。

過剰な他人との比較はNG

武井先生:そうですね、中学受験というのは、親御さんも本当に大変だと思います。それを少しでも助けられたら、といつも思っています。

まず人間には知識欲があります。知識を増やせる勉強とは本来楽しいもの。日々追い込まれてやらされていると忘れがちですが、「楽しい」を子どもが忘れないようにしてあげることが大切です。

次に、どうしてやる気が低下してしまうかを考えると、ひとつは他人と比べるからなんですよね。偏差値の上下よりも、コツコツ地道に頑張って努力することで、解ける問題が増えていくことに面白さを見出してほしいなと思います。

もうひとつは、悪い点数を取ると怒られるからです。算数が嫌いというより、親に怒られるから嫌いと思ってしまう。子どもは混同してしまっているので、保護者の方にはなるべく怒らないでほしいと思います。

原理を理解していないと解けない

武井先生:実際に塾で算数がついていけないと感じるときは、「単元の原理を理解しているか」を常に考えてください。

何を今さら? と思われるかもしれませんが、定着が大事とはいえ、まず原理を理解しないと表面的な暗記になります。わからなければ先生に質問して、しっかり理解をしているか親御さんが確認をするという地道な作業で成績はぐっと上がります。

理解したら、その後で問題を解き、間違えた問題に印をつけ、後日解き直す。定着するまで何度か適切なタイミングで1日1問の解き直しをご家庭で取り組ませましょう。とても地道ですが、確実に実力がつきます。

「男子校と女子校での入試の算数は大きく違います」(武井先生)。

──できない、ついていけていない、となると思わず𠮟ってしまうけれど、それだと何も解決しないということですよね。私も経験がありますが、焦ってしまったり、テストで手がついていない問題を見ると、絶望的な気持ちになるので、つい……。

武井先生:気持ちはわかります。怒りは恐れの裏返しですからね。でも安心してください、実際は入試で満点をとる必要などないのです。捨て問は必ずあります。

超難関男子校を例に出すと、「こんな問題、誰も解けないだろう」という難問が出されたりしますが、それができなくても充分合格点を取ることができます。逆にそういう地雷のような問題に手を出して時間を使ってしまうと、悲惨な結果につながります。

また、女子校は標準的な問題が出題される割合が高いことが多く、むやみに焦る必要はありません。地道に原理を理解して確実に解ける問題を増やして、「解く楽しさ」を意識していきましょう。

───◆──◆───

難問が解けないからと、親が心配したり、𠮟ったりするのは効率が悪いとおっしゃる武井先生。テストに解き残しがあるとストレスを感じるという話はよく聞きますが、志望校によってはすべてが解ける必要はないとのこと。取捨選択が大切ということですね。

次回3回目では、中学受験でここだけは外せない「重要単元」について伺います。
   
撮影/安田光優
取材・文/佐野倫子

『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)

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