まるで“ばあちゃん家”に来たみたい!? 四季を感じる「民家風キャンプ場」(音更町)
帯広から北西、音更町高倉の農村風景に溶け込むように、2024年4月に誕生したキャンプ場『山のばあちゃんち』。
民家を改装した管理棟やサイロが並ぶ素朴な風景の中、自由な過ごし方と十勝の自然が楽しめると、キャンプ好きの間で注目を集めています。
オーナーの想いから生まれたこの場所。今回は、その誕生秘話とともにご紹介します。
みんなが集まる大切な場所を守りたい
帯広市を北上し、音更町を抜けてさらに北西、鹿追町へと向かう途中にある『音更町高倉』。畑と木々に囲まれた、のどかな農村風景が広がる地域です。
その一角に佇むのが、キャンプ場『山のばあちゃんち』。一見すると、民家風の管理棟とサイロが並ぶ一般住宅のように思えますが、“自由度”と“十勝らしい風景”が魅力的で、キャンプ慣れした人々の間で、ひそかな話題を呼んでいます。
このキャンプ場のオーナー・小野寺真理江さんは、雑穀業者で働いていた経歴や我が子の皮膚トラブルをきっかけに、『小豆』を使ったスキンケアブランドを手掛けて販売をする仕事をしています。そして、自身も孫がいる“ばあちゃん”です。
画像:北海道Likers
もともとこの場所は小野寺さんの祖父母の家でしたが、早くに離農し、親族が長らく空き家の状態で所有していたのだそう。
数年前のとある日、『ばあちゃんち』を手放すことにした親族から、小野寺さんが“思い出を守る”ため土地を引き継ぎました。
「人手に渡ってしまいましたが、このあたり一帯の畑は祖父母が所有していたものです」と、管理棟周辺に広がる広大な畑を指さして教えてくれました。
画像:北海道Likers
「幼少期、夏は祖父母とともに畑仕事を手伝い、秋には敷地内で収穫した栗を使って、みんなで栗ご飯を囲みました。冬は管理棟となっているこの建物の隅で、祖母と一緒に収穫した小豆を選別していました。ここは本家だったので、長期休みは親戚達がたくさん集まって過ごしたんです。とにかく、思い出が詰まった”みんなが集まる”場所を手放したくなかった」
『ばあちゃんち』を引き継いだ小野寺さんが次に考えたのは、この場所の活かし方。農村地帯にあり、四季折々の風景が味わえるこの場所の特性から、“ちょっと変わったキャンプ場”にすることを思いつくのです。
“田舎のばあちゃんちを思い出す”キャンプ場
画像:山のばあちゃんち
まずは、『ばあちゃんち』を自身の手で一つ一つDIYし、手を加えていくことに。外壁や内装に“小豆”色を取り入れながら塗り替え、痛んでいた畳を取り外し、フローリングに張り替えました。
画像:北海道Likers
水回りは、汲み取り式トイレから簡易水洗トイレに変更し、台所を炊事場に改良して手を加えることに。
画像:山のばあちゃんち
『ばあちゃんち』は大部分を改装しつつも、模様入りのすりガラスや丸い電球など懐かしい風合いをそのまま残しています。そして、管理棟として新たなかたちで息を吹き込まれた空間へと生まれ変わりました。
画像:山のばあちゃんち
さらに、周囲の約50㎡の敷地は、草刈りなどを行いながら適度に整備することで、車の乗り入れが可能な、区画なしのフリーサイト型オートキャンプ場『山のばあちゃんち』の完成です。
1泊1,800円(大人一人/夏季料金)で、キャンピングカーやテント、車中泊とどんな形の宿泊でもOK。
事前予約があれば薪の販売はしているものの、キャンプ用品のレンタルや販売はありません。管理棟は、前述したトイレと炊事場があるのみで、食べ物もすべて持ち込みが必要です。
「あえて“何もないキャンプ場”というコンセプトにしたけれど、若干不安があった」という小野寺さん。しかし、小野寺さんの不安は、オープンして間もなく解消されていきます。
来場するキャンパーたちは、楽しみながら「”キャンプスキル”が試される」と使い慣れたアイテムを駆使しているのだそう。焚火やBBQでこだわりの食事を満喫したり、日高山脈に沈んでいく夕日を楽しみながら、夜空一面に輝く星空の風景に感動したり。
各々の楽しみ方を存分に楽しめるコアなキャンプスポットに姿を変えて、“みんなが集まる”場所となっています。
画像:山のばあちゃんち
「この場所は高台なので、季節ごとに楽しみがありますが、夏の夜は隣町の花火も見えたりするんですよ。この風景すべてが映画のような世界で幻想的です」
取材した日は、夏目前の6月。耳を澄ませば遠くからトラクターの音やセミの鳴き声、鳥のさえずりが聞こえてきます。柔らかな風が肌をなでるのを感じていると、草木のざわめきが遅れてついてきます。それはまさしく、夏休みに“田舎のばあちゃんち”に寄った気分になれる場所でした。
イベントも開催される“みんなの集まる場所”
画像:山のばあちゃんち
今後は、畑を活用した収穫体験の企画や、近隣の農家と連携して希少種である小豆『朱鞠(しゅまり)』の栽培やパン・お茶・化粧品販売を予定いるのだとか。
画像:山のばあちゃんち
さらに、キャンプ場のシンボルであるサイロを利用した『サイロサウナプロジェクト』が、2025年7月よりスタートしています。
画像:山のばあちゃんち
なかでも直近の一番のイベントは、2025年8月に道内各地からアーティストやキッチンカーを招いて開催される『野外フェス』です。
イベントの締めは、18時から始まるキャンプファイヤーをみんなで囲んでのひととき。その後はそのままキャンプ場に泊まり、一晩ゆったりと過ごせます。
おとなの夏休み。結フェス
開催日時:2025年8月23日(土)12時開場
料金:【チケット】2,000円【キャンプ利用】+1,000円【車中泊利用】+500円
詳細情報
画像:北海道Likers
山のばあちゃんち
住所:北海道河東郡音更町高倉西4-64
電話番号:070-2302-8336
チェックイン:13:00~16:00
※時間外のチェックインは要事前相談
北海道Likersライターのひとこと
夏休みは『山のばあちゃんち』に来て、キャンプやフェスで過ごしてみたくなりますね!
筆者がおすすめな、街の喧騒に疲れた方におすすめの場所です。
キャンプ利用以外に、貸切プランを利用してイベントが開催されていることもあるそうなので、Instagramの公式情報をぜひチェックしてみてくださいね。
取材・撮影・文/村梶 友陽
【画像】山のばあちゃんち
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