『エイリアン:ロムルス』のゼノモーフには、日本の操り人形「文楽」の技術が用いられている
が大ヒット上映中だ。驚異の宇宙生物ゼノモーフを、CGに頼らずアニマトロニクスによる特撮で蘇らせた本作は、限りなくリアルな恐怖を体験することができる。実はこの表現にあたって、日本の文楽という技術が部分的に用いられているのだ。
ゼノモーフは宇宙で最も完璧な生命体であり、究極の兵器でもある。強酸性の血液を有し、食物を必要とせず、どんな環境下でも生き残ることができる。骸骨のようなヒト型の形状に、引き延ばされた筒状の頭部、そして骨のような尾を持つ。
(c)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ゼノモーフ(またはゼノ)は、ヒトの体内に寄生する地球外生命体で、『エイリアン』シリーズではタイトルにもなっている敵対者だ。『エイリアン:ロムルス』では旧式の効果技術でゼノモーフを作ることがフェデ・アルバレス監督のコンセプトだった。レガシー・エフェクト社のチームによると、デジタル・アーティスト、コンセプト・アーティスト、鋳型職人、造形作家、画家、ロボット工学専門家など80名のアーティストによって4体のゼノが創作された。その全員がジェネラル・コンセプト・デザインを元にして取り組み、フルに機能するよう作られた。
アルバレスが特に重要視していたのは、役者たちが、フル機能型アニマトロニクスのゼノモーフと相互に触れ合えるようにすることだ。「フェデは、表面の質感をとてもラフでシャープにすることを求めました。ちょうどサメの皮膚のような、触るだけでこちらが傷ついてしまうような感じを求めていたのです」とシェーン・マハンは言う。
(c)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.
レガシー・エフェクト社のチーム全員が情熱を傾けて、ゼノをオリジナルの『エイリアン』のような雰囲気に作り上げた。4体のゼノモーフはそれぞれ異なる目的で作られている。いわゆる“ヒーロー”ゼノモーフは、フルサイズで、ロボット工学的に完全なアニマトロニクスのクリーチャー。身長8フィート(約244cm)でとても痩せている。これとサイズは同じだが、もっと軽量な棒あやつり型アニマトロニクスは、ひとりのパフォーマーが操るもので、より急激でダイナミックな動きを出すために使われた。
その他の2体のゼノは、スタント・パフォーマーが着るスーツにアニマトロニクスの頭部を装着したものだ。脊椎動物の基礎構造を半透明のドームで覆ったもので、腕と脚には半透明のパネルがつけられている。レガシー・エフェクト社のチームによると、状況によってそれらの脚と腕を通して放射する光を見ることができ、それによって格子造りのような雰囲気(スレンダーなウエストに長い手足の昆虫的な雰囲気)が生まれているという。
ゼノモーフが登場するほとんどのシーンは、アニマトロニクスとスーツと文楽(日本式操り人形)とCGという4つのコンポーネントを混ぜ合わせて描かれた。文楽の流動性、スーツを着たスタント・パフォーマーの敏捷性、フル・アニマトロニクスの堂々とした美しさが、ゼノモーフに旧式であると同時に真新しいアドバンテージを与えている。「観客はものの1分もしないうちに、客席でくつろぎながら、自分たちが目にしているものを本物だと感じ、どういうテクニックが使われているのだろうなどと気にすることもまったくなく、ストーリーに夢中になることでしょう」とマハンは言う、「そうなってくれれば、私たちは自分たちのやるべき仕事をやり遂げられたということになります」。
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ゼノが成熟して出てくる繭は半透明の皮で覆われている。「ストーリー・ポイントとして、電気に照らされてアレの中が見える場面があります」とマハンは言う、「そこで私たちは作り直しを行ない、通路に小道具のケーブルを通して、装置も作り、その装置がネバネバで気持ち悪いアレの中を照らすようにしました」。
この不気味な恐怖は劇場で。『エイリアン:ロムルス』は大ヒット上映中だ。