【知られざる神戸名物・野球カステラの歴史を紐解く】春日野道『手焼き煎餅 おおたに』の野球カステラ 神戸市
多様な交流が行われ、誇るべき文化が数多く生まれてきた神戸。その中でも長い歴史を持ち、地元民から愛されてきた「野球カステラ」をご存じでしょうか?
現在、神戸市内で販売を続けているのは7、8軒になっているとのこと。今回は実際に店舗を巡り、店と野球カステラの歴史を紐解きます。「野球カステラ愛好会」に関する記事はこちら
今回伺ったのは創業100年を超える老舗の煎餅店『手焼き煎餅 おおたに』。店は阪急電鉄「春日野道駅」からすぐの場所にある大日商店街内にあります。
店に入ると煎餅が並べられていますが、その奥には焼き台が。煎餅や野球カステラは毎日、ここで手焼きで作られています。
現在煎餅を製作している大谷さんは3代目。大谷さんが55歳の時にそれまで店を切り盛りしていたお父様が亡くなり、そこからいきなり煎餅づくりをすることになったのだとか。当初は会社員として働きながら、勤務後に煎餅づくりを学ぶ日々だったそう。
この日は野球カステラを製作する様子を見せていただいたのですが、1つ1つの作業がかなり丁寧。大谷さんの手の力加減によって、絶妙な量の生地が型に入れられていきます。
野球道具の形を綺麗に出すためには生地が少なくても、多くてもダメなのだそう。実際に生地を多く入れた場合どうなるかを見せていただいたのですが、パンッという大きな音がして破裂してしまいました。熟練の技と感覚であることを再認識させられます。
そうして出来上がったカステラがこちら!グローブの指の部分や帽子の線など、くっきりとかたどられていて本当に綺麗です。
香りがよくなるようごま油を使ったり、常連さんへの味のアンケートを行い生地にバターを使ってみるなど、味は先代のころよりもさらにアップデート。焼き立てをいただきましたが、しっとりとした食感に加え優しい甘さとコクのある味わいが絶品でした。
これまで数人の弟子をとってきたという大谷さん。自身も会社員でありながら煎餅づくりを学んだという経験があるからか、未経験の人でも女性でも「大丈夫!できる」と背中を押してきたのだとか。
「最近は野球カステラの知名度が上がり、たくさんの人に手に取ってもらっている。体力との勝負ですが、これからも元気なうちはこの味を守り続けていきたい」と話してくれました。
長い歴史の中、守ってきた伝統と”おいしさ”を追求する柔軟さ、そして技をつないでいく想いに感動した記者。今後はそんな”神戸の銘品”を、おいしくいただくことで応援していきたいと思います。
場所
手焼き煎餅 おおたに
(神戸市中央区割塚通7丁目2-11)
営業時間
10:00~18:00
※日曜日は16:00まで
定休日
月曜日、火曜日