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cali≠gari 過去曲大放出、新しい“昔話”で満員の観客を躍らせた『30=6+7+8+9』公演を振り返る

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cali≠gari

30=6+7+8+9
2025.03.14 恵比寿ザ・ガーデンホール

『30=6+7+8+9』という小学校で習うようなシンプルな計算式を見て、cali≠gariの歴史とディスコグラフィーを知っている人間ならば、きっとニヤリとするだろう。昨年9月に結成30周年を迎え、年明けにセルフカバーアルバム『30』をリリースしたcali≠gari。このタイトルは『第6実験室』『第7実験室』『8』『9』と、2000年代にリリースしたアルバム4枚のタイトルを合計したもので、つまりは、この4枚からセレクトしたナンバーが収録されているということだ。

そして本作を引っ提げてのツアー『30=6+7+8+9』が2月1、2日に大阪で、3月14、15日に東京で開催。フライヤーには「過去曲大放出」「新しい“昔話”をしよう――」のキャッチフレーズが躍り、懐かしの楽曲が聴けるということもあってか、見事に満員御礼となった。そのことについて、本稿でレポートする東京公演初日では「久しぶりにソールドアウト2日間させていただきまして……改めてお前らという生き物は現金なんだなっていうことがわかりました。そんなに古い曲が聴きたいのか! 今を生きてるバンドに対して結構なね、仕打ちをしてくれるよ。どういうことよ!」と桜井青(Gt)は荒ぶったが、それもある意味では愛情の裏返し。20余年の時を巻き戻してバンドの歴史を振り返り、今、現在のパフォーマンス力で過去に新たな光を当てながらも、cali≠gariというバンドの核は当時から何も変わっていないことを示してみせた。

開演時刻となり、拍手に迎えられたメンバーが最初にドロップしたのは、2002年にリリースされた『第7実験室』の収録曲で『30』発売にあたり新たなMVも制作された「ハイカラ殺伐ハイソ絶賛」。桜井が性急にカッティングを鳴らせば、石井秀仁(Vo)が艶やかな声をあげて、客席からピッタリと同じタイミングで腕が上がる。そんな見事なシンクロぶりを見れば、この曲がいかに愛されてきたかは明らかだ。石井のシャウトボーカルから「いくぞ東京!」と号令をかけて「まほらば憂愁」へとつないだ桜井は、心のまま自在に動きながらソファに腰かけてプレイし、その横に腰かけた村井研次郎(Ba)が色気たっぷりのランニングベースを奏でていく、その絵面のサマになりようと言ったら! 石井も予測のつかない動きでステップを踏み、この自由奔放さこそがcali≠gariの醍醐味なのだと知らしめていく。

以降も中毒性の高いリフレインでフロアを踊らせる「-踏-」、三拍子のリズムで桜井が訴えるようにリリックを吐き出す「白い黒」、エレクトロなSEから軽妙かつエフェクティブなサウンドでクラップを巻き起こす「フラフラスキップ」と、リズミカルなナンバーを並べて楽しく客席を揺らしていく。それでいて、どこか社会を嗤い飛ばすようなシニカルが滲むのがcali≠gariの特性であり、爽快なギターと低音ベースで贈る「虜ローラー」でも大きく手を振るオーディエンスが歌うのは《バイバイバイ イナイ イナイ イナイ》というフレーズ。「黒い球体」でも《暗黒》や《暗闇》といったワードが登場するが、転がる球体のごとく変則的に次々変わっていくビートは“リスナーを音で揺らす”というロックの大原則を譲らない。cali≠gariの楽曲にしては平易な日本語で石井が切々と語る「マス現象 ヴァリエーション2 諸事万端篇」でも、シリアスな空気を村井の指弾きがかき回し、さらにアッパーな「ギャラクシー」で一気にブチ上げ。“界隈”を強烈に皮肉った毒丸出しの「近代的コスメ唱歌」でも、エレクトロな音がポップを醸して、拳の海と拍手の波を巻き起こすのだからお見事だ。村井の艶っぽいランニングベースに、桜井のエッジィで多彩色なギタープレイ、それらに乗って何かに憑かれたようにステップを踏む石井と、手練手管に長けた3人のパフォーマンスは目にも耳にも贅沢なご馳走となって届き、120%の心地よさをオーディエンスに届けていく。

村井のベースソロを挟んでからは、さらにジェットコースターのように多彩なカオスを披露。石井が上着を脱ぎ、桜井はソファに腰かけて「愛の渇き」をリラックスしたムードで届けると、一転、タイトルからして衝撃的な「ママが僕を捨ててパパが僕をおかした日」では手を掲げるオーディエンスを明るいライトが照らし、アイロニカルな一体感を醸して大きな拍手を呼ぶ。さらに「スクールゾーン」では“ハイハイ!”と声をあげて爽快にトバし、レトロ感あるリズムで石井が踊る「わずらい」から、勢いづいたドラムフィルでなだれ込んだ「東京ロゼヲモンド倶楽部」では妖艶を全開に。バンドロゴはネオンのように光り、ジャジーなサウンドに乗って狂気的なステップを見せる石井が《いらっしゃいませ》と歌えば、場内にクラップの渦が広がっていく。激しく煽り立てたり何かをエモーショナルに訴えるのではなく、平熱のシニカルで共感を呼び、大きなグルーヴを作り上げる彼らの手腕は、やはり唯一無二のものだ。

笑顔さえ浮かぶ軽快なムードは、そして踏切音から始まった「マグロ」で祭りの様相へと発展。続く「舌先3分サイズ」もアッパーなテンポでオーディエンスの腕を気持ちよく上げさせるが、歌詞を見れば双方とも決して気持ちのいい曲でないのがミソだ。そこにギターロックな「青春狂騒曲」をぶつければ、客電の上がった場内に合唱が湧き、《僕の後ろに道は続く》とストレートなメッセージが響きわたっていく。そんな感動的な光景を引き継ぐように、壮大なSEから幕開けた「その行方 徒に想う…」では、明滅するライトとスタンドマイクで放たれる石井の伸びやかなボーカルが場を圧倒。客席から突き上がる拳とコズミックな同期音でトランスを誘うが、一転、歪みの利いたボーカル&プレイで暴れ回る「昏睡波動」で本編を締めくくるという予測不能な展開がたまらない。静から動、聖から邪のギャップに、大きな歓声と拍手が湧いたのも当然だろう。

アンコールでは冒頭に記述した桜井のMCのあと、まずは「恵比寿いくぞ! 叫べ! 叫べよ!」と「-187-」が投下。繰り返される《死ね!》《殺してやる!》の嵐に拳が上がり、最後の《死んじまえ!》で湧いた拍手に桜井が「ありがとう」と礼を述べるカオスもcali≠gariらしい。そこからシャウトでコールされた「クソバカゴミゲロ」では、オーディエンスもタイトルを合唱して身体を折り曲げ、桜井と村井は客席に下りて左右にスイッチ。そこで石井が繰り返すリリックが《たいした理由は別にない》なのにも、思わずニヤリとさせられる。そう。もしかしたら、彼らがバンドや音楽をやっているのも、こうしてステージに立つのも、大した理由は別にないのかもしれない。だが、理由がないということは、裏を返せば本能のままの行為ということで、それは即ち、彼らが音楽の神に選ばれた証拠でもある。だから彼らの音楽は30年以上を経ても長く愛され、こうして我々の心と身体を躍らせるのだろう。

昔話は何百年経とうと、いつの時代も子供を楽しませる。それはcali≠gariの楽曲も同じことなのだ。

取材・文=清水素子 撮影=マツモトユウ

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