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東京二期会が16年ぶりに『カルメン』上演 高田正人によるレクチャー・コンサートのオフィシャルレポートが到着

SPICE

レクチャー・コンサートの様子

2025年2月、東京二期会が16年ぶりにビゼーの『カルメン』を上演する。開幕に先駆けて、レクチャー・コンサートが2024年11月14日(木)にカワイ表参道コンサートサロン パウゼにて開催された。本イベントのオフィシャルレポートが到着した。

前半は、『カルメン』についてのレクチャーが行われた。講師を務めたのは、テノールの高田正人。公演ではレメンダード役を演じる。軽妙かつ作品のツボを押さえたトークは達者の一言!時に笑いを交えながら、参加者を作品の世界に誘った。

『カルメン』は現在、『蝶々夫人』『椿姫』とともに世界三大オペラに数えられている人気作だ。世界での上演回数は常に上位。声楽抜きの器楽のみで演奏されることも多いため、オペラに触れたこともない方でも、一度はメロディを耳にしたことがあるのではないだろうか。このオペラが現在の隆盛に至るまで歴史は次のような経緯がある。

作曲者は、36歳で夭逝したビゼー。彼が亡くなる3か月前にパリで初演(1875年)されたのが『カルメン』であり、自身にとって最期のオペラ作品となった。初演は評判が悪く、その後、世界で最も多く上演されるオペラになるとは想像さえできないまま、ビゼーはこの世を去ったことになる。

『カルメン』メインビジュアル

高田は、初演が不評だった理由を、《上演された劇場の特性》と説明する。フランス革命後の1800年代初頭、ナポレオン・ボナパルトは、自身の監督下に置くために、パリ市内の劇場を8つに絞った。その中に、最も権威を持つパリ・オペラ座があり、また『カルメン』が初演されたオペラ・コミック座があった。パリ・オペラ座が格式を重視したグランド・オペラの上演を主とするのに対し、コミック座では大衆性の強いオペラ・コミック(台詞が入り、お芝居の要素が強いオペラ)を上演していた。代表的な作曲家はオッフェンバックだ。軽妙で明るい作品に慣れた劇場の聴衆に、凄惨な場面が多く描かれる『カルメン』が受け入れられなかったというのも納得がいく。

それでも一部では話題を呼び、ビゼーの死後、『カルメン』はウィーンで上演される。この公演の成功がきっかけとなり、『カルメン』は世界中で上演されていくことになる。チャイコフスキーが「この作品は10年後にはオペラの最高峰の作品になる」と予言した通り、世界で最も有名なオペラに成長していくことになった。

高田は二期会における『カルメン』の上演史にも触れた。二期会での初演は1954年。二期会の創立者の一人でもある川崎静子がタイトルロールを務めた。華があり、よく響く歌声で人気を博し、“カルメンお静”の異名を取ったという。その後、二期会の重鎮であり、近年まで二期会の要職を歴任した伊原直子が受け継いだ。そして2025年、新たなヒロインに選ばれたのが加藤のぞみと和田朝妃。加藤はイタリアを拠点に活躍し、2024年にバーリ・ペトルツェッリ歌劇場『蝶々夫人』でスズキ役を演じたことが記憶に新しい。和田は東京二期会オペラ劇場『こうもり』(2017年)に出演した際、演出のアンドレアス・ホモキに見いだされ、チューリッヒ歌劇場のオペラスタジオに入所し、現在はベルリン・ドイツ・オペラに所属する俊英だ。

カルメン:加藤のぞみ

カルメン:和田朝妃

その他、自由を愛するロマであるカルメンの人物像が物語にもたらす効果や舞台となるセビリアとドン・ホセの出身地であるバスク地方との地理関係、また文化背景なども解説。参加者たちは作品への興味を深めたに違いない。

後半のハイライト・コンサートでは、高田がドン・ホセを務め、カルメンのカヴァー・キャストである豊島ゆき、オーディション時に演出のイリーナ・ブルック(実父はピーター・ブルック)から「理想のミカエラ」と激賞されたという宮地江奈が出演。親しみ深いアリア「ハバネラ」をはじめ、ビゼーの情熱的で美しい音楽と迫力の歌声が、会場を大いに湧かせた。(ピアノ:古野七央佳)

ミカエラ:宮地江奈

左から高田正人、宮地江奈、豊島ゆき、古野七央佳

期待が高まる東京二期会オペラ劇場『カルメン』は、2025年2月20日(木)~24日(月・休)、東京文化会館 大ホールにて上演される。指揮は沖澤のどか、管弦楽は読売日本交響楽団。

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