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体温付近で、接着力が1000倍変わる接着剤!

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今日はすごい接着剤の話。といっても人の体に使う接着剤。

例えば、身近なものだと絆創膏や紙テープ、湿布薬や、ロキソニンテープのような外用鎮痛消炎薬といったもの、カラダに貼って使いますよね。

身体に貼って使うもの、ここが不満!

どんな接着剤なのかをご紹介する前に、街の方に、こうしたモノへの不満や要望を聞いてみました。

・「水に濡れるともう中がふやふやになっちゃうんで、結局また新しいのに取り替えたりするんで、ちゃんとした完全防水っていうのがあったらいいなって。絆創膏ですね。」

・「ロキソニンテープはよく使いますので、そういう時にヨレちゃうことはあるわね、腰の場合は。一人でやっちゃうじゃないですか、あっていう間にこう重なっちゃうっていうの?例えばこっから左にこうやろうとするんですけど、こうやってる間にこの辺でベロンとヨレちゃってペタっとなっちゃうときがある。テープがペロペロペロペロしてるから、こうなっちゃうんでしょうね、きっとね。」

・「中学校3年生です。体育のときとかにコケちゃって、座りながら(絆創膏)貼った時に、そのあと立って動いたら剥がれちゃったりとか、血と一緒にくっついちゃったりとか、そういうときに剥がすとき痛くなったりとか。」

・「指先のバンドエイドは内側同士がくっつきやすくて貼りにくい。で、その割にそのままスポッと、手洗ったらそのままスポッと抜ける時とかがある。それちょっとストレスかも。」

分かる~!という話ばかり。防水の絆創膏でも濡れるとどうもダメなことが多いし、絆創膏はくっつきすぎて剥がすときに痛くなることもあります。指先の絆創膏もうまく貼れた!と思っても、スポッと指サックを外すみたいに抜けること、あります!あります!

そして、ロキソニンテープのような貼る消炎薬は、うまく貼れないし、汗かくと剥がれてしまいます。みなさん、きっと、同じ気持ちですよね!

濡れた所でも使える接着剤を開発!

さて、ではいったいどんな接着剤が開発されたのか?

医療と工学を組み合わせたデバイス(装置)を作る研究をしている、東北大学学際科学フロンティア研究所、准教授の阿部博弥さんのお話です。

東北大学学際科学フロンティア研究所 准教授 阿部博弥さん

「一般的には接着剤というのは、乾燥した所で使うような接着剤が多いんですけれども、濡れた所でも使える接着剤を開発しまして、まあ、なかなか世の中にはそういった接着剤、無いんですけども、ムール貝が海水中でも岩にくっつくというところからヒントを得まして、その特性を取り入れた、水中でもくっつく接着剤というのを作ることが出来ました。

ムール貝は、貝からヒゲみたいな足を出してるんですけども、その足が岩に強くくっついて剥がれない、海流にさらわれないという特徴を持っていまして、足の先端に、そういう接着性を特に示すカテコール基という化学構造がたくさん入っていまして、このカテコール基っていう化学構造を、今回の接着剤にも取り入れることで、同じように色んな所にくっつく接着剤というのが実現しました。」

濡れた所でも、くっつく接着剤なのです!私たち人間は、身体の中も表面も濡れています。だから、濡れたままでくっつく接着剤が必要だ、と考えて開発を始めました。

阿部先生は元々、神経伝達物質のドーパミンの研究をしていたのですが、ドーパミンがたくさん連なってできるポリドーパミンというものと、たまたま見たムール貝のカテコール基(集まり方・構造の種類)が似てるぞ!となって、目に留まりました。そこで、今回はこのポリドーパミンをメインの材料として使って、ムール貝の接着力が実現しました。

(ムール貝のこの部分の接着の仕組みからヒントを得たそう。)

手術などで切った個所を縫わずにしっかりと塞いでおくことが出来るようになる、ということです。

ちなみに、私たちの体の中にある、メラニン色素も似たような構造だということで、身体に悪くない、優しい接着剤です、ということでした。

強くくっついて優しく剥がれる 接着力の差は1000倍!!

もう一つ、この接着剤には大きな特徴があります。再び阿部先生のお話です。

東北大学学際科学フロンティア研究所 准教授 阿部博弥さん

「温度で接着力を変えるという特徴を取り入れまして、体温以上で強くくっついて、体温以下だと簡単に剥がれてくれる。で、その差も1000倍以上の接着力の差を生み出すことができますので、強くくっついて優しく剥がれるということになります。

そうですね、温水中にこの接着剤をつけた腕を入れまして、そうすると勝手に接着し始めまして、35度がちょうど切り替えの点になってきますので、保冷剤を少し当てて剥がれてくる。フワフワっと弱まってきて、スッと取れるような、痛くなく剥がれるというような感じになるかと思います。ホント手でつっついたくらいの力で剥がれるようになりますので、その1000倍くらいあることによって、確かに、強くと優しく、という言葉が両立するかな、とは思っています。」

(疑似的な体内環境、温水中での接着力の実証のようす。 写真はすべて阿部先生提供。)

強くくっつきすぎると、剥がすときに身体の組織などにダメージを与えてしまうので、優しく剥がせることが大事。でも、剥がすときのことまで考えた接着剤は、なかなか無かったと思いますよ、と阿部先生。

医療関係だけでなく、企業とも、一般用途も含めて製品開発に向けて話が始まったところ、ということですから、水に濡れても剥がれない絆創膏や、粘着面がくっついても、冷やしたら綺麗に剥がれて貼りなおせる消炎薬も、近い将来手に入るかもしれませんよ!

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)

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