間もなく放送から20年‥韓国ドラマ「ラブコメの元祖」歴史を変えたその名作とは
韓国ドラマで根強い人気を誇るジャンルといえば、ラブコメが挙げられる。今年6月に放送(2005年6月1日)から20周年を迎える『私の名前はキム・サムスン』(MBC/2005)もその1つだ。
憧れずにはいられないストーリーや設定、シチュエーションによって視聴者の理想を叶え、多くのトキメキをプレゼントした作品で、名作として知られている。
時代の変化と共に様々なタイプのラブコメが登場してきたが、どのドラマにも必ずといってもよいほど本作の香りが漂っており、昨年話題を呼んだ『ソンジェ背負って走れ』(tvN/2024)や『となりのMr.パーフェクト』(tvN/2024)にも共通する部分があった。
ロマンチックコメディーの公式を確立したという声も聞かれるほどで、多くのドラマファンを虜にした要素の数々は、いまだ色褪せることなく各作品に盛り込まれ、”定番”として愛され続けている。
そこで本記事では、ラブコメの元祖ともいえる『私の名前はキム・サムスン』のなかで、韓ドラ界において、後世に引き継がれるほど視聴者にウケたポイントを一部振り返ってみる。
(図)Danmee 韓国ドラマでもう一度活躍してほしいK-POPアイドルトップ3
日韓で大ヒットしたラブコメ
『私の名前はキム・サムスン』は、2000年代序盤、日本で韓国ドラマが支持されるようになった時代に、韓ドラ人気を牽引した大ヒット作の1つ。
主演のヒョンビンは、大ブレイクを果たして一躍スターダムにのし上がり、日本人ファンまで獲得。ヒロインのキム・ソナも、知名度と人気を思うままにした。
もちろん本国でも多くの人に愛され、平均視聴率は36.9%、最も高い時でなんと51.1%にまで及ぶなどシンドロームを巻き起こした。
御曹司と平凡なヒロインの恋
愛された理由は、いくつかあるがそれまでのロマンスものと大きく違っていたのが、ヒロインの設定。コンプレックスがあり、仕事や恋愛、家族などに悩む、平凡で現実的なキャラクターが観る者の共感を呼んだ。
その一方で相手役には、非現実的ともいえるイケメン御曹司を置いて、誰もが羨むようなシンデレラストーリーに。
少女漫画を彷彿とさせるファンタジーと、視聴者自身のことであるかのようなリアリティーを絶妙に織り交ぜながら共存させることで、ドラマファンの理想や夢を刺激して物語に夢中にさせた。
トキメキを倍増させるツンデレキャラ
そしてそれをさらに盛り上げたのが、男性主人公のツンデレキャラ。ヒョンビンが、いつもは傲慢で冷たいが、時折優しさを見せるキャラクターを見事に描き出して、そのギャップでドラマファンを魅了した。
また、劇序盤の冷淡でぶっきらぼうな態度が、ヒロインに惹かれていく過程で不器用ながらも相手を思いやり、甘い眼差しを向けるようになる変化も大きな見どころに。困った時に必ず助けてくれるヒーロー的な一面と相まってさらに魅力を放っていた。
ドラマのヒットとともに、“ツンデレ”というワードやキャラクターが広く浸透したと言われており、ヒョンビン自身もツンデレキャラで複数のドラマに出演して作品を成功へと導いてきた。
最悪の出会いを果たした犬猿カップル
そんな彼のラブコメ出演作にも盛り込まれていたが、『私の名前はキム・サムスン』は、主人公の男女が最悪の出会いを果たすところから物語がスタートする。これも多くのロマンチックコメディーで見られるお決まりの展開だ。
顔を合わせると言い合いがはじまり些細なことでも衝突、ぶつくさと文句まで言う始末で、恋愛に発展する可能性ゼロにも見える相反する2人だが、いつしか甘い雰囲気が漂いはじめていく。
いがみ合っていた過程を経たことで、上ない高揚感を味わった視聴者は多い。
胸キュン名シーン
そして胸キュンせずにはいられないシーンまで登場して、さらにドラマファンをときめかせた。いくつか名場面と言われるシーンがあるが、その1つが最終回。
主人公の成長を感じられるキム・ソナのナレーションを背景に、いつものように口喧嘩をしながら、階段の途中で手すりを挟んでキスをし、視聴者に強い印象を残した。当時、聖地巡礼で足を運んだファンも多かったのではないだろうか。その他、男子トイレという意外な場所やワインを飲んでのキスシーンも有名だ。
ラブコメには高い確率で当該作品を象徴する場面があるものだが、さすが元祖。計算されつくした演出と役者の演技によって、印象的なワンシーンを盛り込み物語を最大限に盛り上げている。
(ライター/西谷瀬里)