フジテレビ、再生に向けすでに社内の対話を開始 改革プランと人権・コンプライアンス強化策を公表
フジサンケイグループの持株会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH、東京都港区)は3月31日、傘下のフジテレビジョン(以下「フジテレビ」)で発生した人権・コンプライアンスに関する問題について、第三者委員会の報告を受けた上で、ガバナンス体制および人権・コンプライアンス対応の強化策を発表した。同日、フジテレビは自社の再生・改革に向けたプランも公表している。
第三者委員会は、タレントとフジテレビ社員のトラブルについて、取引先との間に存在する権力格差などを踏まえ、「業務の延長線上における性暴力であったと認められる」と判断した。また、弁護士を紹介するなど、同社幹部がタレントの利益のために行動していたことも指摘している。さらに、同様の重要事案が過去に2件存在したことも明らかにされた。
グループ全体での対応強化策
FMHではこれまでも、グループ会社社長が参加する「グループのコンプライアンスおよびリスクの管理に関する委員会」の設置や、研修、内部通報制度の整備を進めてきた。また、2023年11月には「グループ人権方針」を策定し、人権を尊重した事業運営のための体制構築に取り組んできた。
しかし、今回の事案を受け、こうした取り組みが十分に機能しておらず、理念も組織に浸透していなかったと総括。取締役会や会議体における実質的な議論の不足にも言及し、今後は経営層が主体的に関与する必要があるとした。
FMHが新たに打ち出した人権・コンプライアンス強化策は以下の通り。
同社取締役会・グループ社長会等での報告の必須化
・人権・コンプライアンスに関する議題を定常的に設定し、必ず議論を行う
・発生事案、リスク評価、改善策の進捗などを報告・共有
・必要に応じて外部有識者の意見を反映
「グループ人権委員会」の新設
・委員長にFMH代表取締役社長、委員に各社社長を任命
・副委員長に外部有識者を招聘(しょうへい)
・グループ各社からの定期報告、自己評価、人権デューディリジェンスを実施し、透明性と実効性を確保
・人権救済メカニズムの構築
体制強化と人材の登用
・コンプライアンス推進室と法務部を統合し「法務・コンプライアンス局」に改組
・外部から専門知識を有する人材を募集
・管理職以上への研修を必須化、匿名通報窓口の利用促進と対応の徹底
フジテレビでは独自の再生・改革プランを議論
フジテレビでは2月6日、第三者委員会の報告を待たずに「再生・改革プロジェクト本部」を設立。代表取締役を本部長とし、直下に中堅・若手社員によるワーキンググループ(WG)を設置して以下のテーマで議論を行ってきている。
・フジテレビが抱える課題認識
・中堅・若手社員の声を拾い上げるための仕組み
・会食・会合のガイドライン整備
・新たな人事評価制度(360度評価等)の導入可否
・コンプライアンス相談体制の見直し
・研修の実効性向上
・経営理念の再定義
・再生・改革の社内外への発信方法
社員・労働組合などステークホルダーとの対話やイントラネット上の「意見箱」も活用し、現場の声を収集。分析の結果、次の4点が主な課題として抽出された。
・人権リスクへの対応姿勢の不備
・コンプライアンス意識の希薄さ
・組織風土・企業文化の問題
・ガバナンス体制の脆弱(ぜいじゃく)性
これらの課題に対し、フジテレビでは「人権尊重の徹底」「企業風土改革」「ガバナンス強化」の3本柱で対応策を策定していくとしている。
本件に関して、FMHおよびフジテレビが示した主な資料は以下の通り。
・フジ・メディア・ホールディングス「ガバナンス体制・人権・コンプライアンスに関する対応の強化策について」(説明資料)
・フジテレビ「フジテレビの再生・改革に向けて」(本文)
・同上(説明資料)
詳細はFMHの公式サイトで確認できる。また、第三者委員会の報告書(公表版、要約版、公表版別冊(役職員アンケート))はフジテレビ公式サイトで閲覧できる。