「通学路に死体が転がる」恐るべき環境の小学校で起こった奇跡の実話!観客満足度99%の感動作『型破りな教室』
治安最悪の街で起こった奇跡の実話
12月20日(金)より公開となる映画『型破りな教室』は、おそらく世界でトップクラスに治安の悪いであろうメキシコのある街で実際に起こった奇跡を描いた感動作だ。物語の舞台となるのは、国内最低クラスの学力レベルだった小学校である。
麻薬カルテルが牛耳る治安最悪の街マタモロス。小学校も施設の老朽化や教育資源の不足に悩まされ、学力テストを通過するためだけの形式的な詰め込み授業しか行えないような状況だ。しかし、そんな小学校に新任教師のフアレスが赴任してきたことから、生徒たちの学力はぐんぐん上昇。全国上位に食い込むまでになる。
いったいフアレスはどんな授業を行い、劣悪な環境で暮らす生徒たちの学習意欲を高めたのか? 実在の教師と生徒たちが起こした奇跡を描く本作は、どんな境遇でも希望を胸に努力することが明るい未来へと繋がるのだという、ともすれば陳腐になりかねないテーマをこれ以上ない説得力をもって描いている。
未来を担う子どもたちと、足を引っ張る生活環境
2023年制作の本作は、某辛口レビューサイトで批評家スコア95%、観客スコアにいたっては99%という驚異的な数字を叩き出している。実話ベースだけに“驚きの展開の連続!”みたいなエンタメ度は控え目ながら、小学校=生徒たちの境遇がどんなフィクション劇よりも衝撃的なので、ナチュラルなスリルにもあふれている。映画的に例えれば、家を出たら即「マッドマックス」みたいな世界なのだから当然だ。
そんな世界で未来に希望を抱くのは難しい。貧しい親には家計を支える即戦力としか思われていないし、身内にギャングまがいの人間が普通にいて、隙あらば“そっち側”へと誘導される。通学路では警察が非常線を張り、傍らには遺体がゴロゴロと横たわっている、そんな日常は私たちには想像すらできない。
それでもフアレス先生は、教室という枠にすらとらわれない実践的な授業で学習意欲を刺激する。学ぶことの楽しさを知り、未来に一筋の光を見出したことで次第に目を輝かせていく子どもたち。グレーがかっていた映像も中盤辺りからカラリと明るくなり、その頃には生徒たちにすっかり情が湧いてきて、心の中で拳を握りながら応援してしまう。
実話ならではのリアルな生活描写、各家庭の切実な事情
“これから”を生きる子どもたちと、その可能性を閉ざそうとする保護者たち。長い目で見れば子どもの成功は家族の助けにも繋がるはずなのに、それに気付けないほど彼らは困窮している。フアレス先生の授業は子どもの学力向上だけでなく、そんな負のサイクルを断ち切るための授業でもあるはずだ。
フアレス先生を演じるエウヘニオ・デルベスはビリー・ボブ・ソーントンにクリソツだが、オスカー受賞作『コーダ あいのうた』(2021年)でも印象的な人物を演じていたので見覚えがあるだろう。物語終盤、ある悲劇的な出来事を経てからのフアレス先生の行動、それが保護者の“気づき”を促す展開、そこからのラストシーンにはゴリゴリに涙を搾り取られる。そして“みんなハッピー!”では終われない其々の事情が、心の片隅にチリチリと鈍い痛みを残す。
『型破りな教室』は2024年12月20日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開