島﨑信長「“諦め方が大人”って言われた」アフレコ秘話!信頼ゼロの異端ヒーロー物語『TO BE HERO X』インタビュー
「ヒーロー」が人々の「信頼」によって能力を得る世界を舞台に、10人のメインヒーローの群像劇を描くTVアニメ『TO BE HERO X』がフジテレビほかにて日曜朝9時30分に放送中。「信頼値」次第で誰もがヒーローになれるという斬新なストーリー展開と、3D・2Dが入り混じる挑戦的な映像でも話題を呼んでいる注目作だ。
目の前で命を絶ったナイスの身代わりとしてヒーローになり、ついにはヒーローランキングトップ10入りを果たした青年リン・リンの活躍を描いた【ナイス編】に続き、【魂電編】が描かれた。
このたび、そんな本作で<魂電>を演じる声優・島﨑信長にインタビューを敢行。キャラクター考察から物語に込められたテーマ、アフレコ秘話や“信長的”注目ポイントまで、たっぷり語ってくれた。
「どういうこと!?」島﨑信長『TO BE HERO X』インタビュー
遊園地で人気ヒーロー<魂電>を演じるスーツアクターのアルバイトをしているヤン・チョン。両親を失い「信頼値0」という誰からも期待されない幼少期を送ったヤン・チョンは、幼い頃に自分を助けてくれたレジェンドヒーロー魂電と再会することを夢見ていた。
思わぬきっかけで信頼値を集め、仲間と共に<新魂電>としてヒーローの一員に名を馳せたヤン・チョンだったが、6話では数々の困難が立ちはだかり、さらには仲間の一人が殺されてしまう。
ナイスを演じる花江(夏樹)くんに「信長さん、僕の恋人殺しましたね」とニヤニヤしながら言われました(笑)。その後が『魂電編』というのが面白いですよね。悪い奴が出てきたと思ったら急に好青年が登場して、どういうこと!? みたいな。
【ナイス編】のヒロイン、シャオ・ユエチンを襲撃した者こそ魂電であり、しかしその理由が明かされないまま新魂電=ヤン・チョンの物語が描かれる。まさに謎が謎を呼ぶ展開となっているが、演じる島﨑は魂電と、どのように向き合ったのだろうか。
「大切な人を失ったり、社会の闇に触れたり」
―本作への第一印象を教えてください。
挑戦的な作品だなと。とてもポジティブでクリエイティブな気持ちの勢い、エネルギーみたいなものを感じてすごくワクワクしました。魂電役として指名をいただいて、この座組、この作品に参加する期待感みたいなものを感じた覚えがあります。
―「新魂電」となるヤン・チョンというキャラクターをどう捉えられていますか?
「信頼値」というのが本作の肝となる設定だと思うんですけど、「信頼値」が可視化されていて、誰しも「信頼値1」以上は持っているでしょ? というのが当たり前の世界で、「信頼値0」のヤン・チョンは、相当しんどいだろうなと。ただ、むしろその環境下でよくあれだけの人の良さとか、醸し出してくる明るい人柄とかを失わずに育ったよなというところに拍手を送りたいです。君自身はそう思っていないと思うけど、ヒーローの素養はあったというか、最初の段階から十分強くてすごい人だなって思いました。
―【魂電編】のシナリオを読まれた感想は?
【魂電編】は3話しかないんですが、その3話の中で人間や社会の“ままならなさ”みたいなものがすごく表現されていて、もっと演じたいくらい面白かったんです。3話の中で、人に認められるようになるだけでなく、大切な人を失ったり、社会の闇に触れたりとか、自分の心がどんどん翳っていくところまで全部表現されていて……。
<旧魂電>のエピソードもすごい好きで、彼もとんでもないヒーローなんですよ。それは打算とか、自己顕示欲、承認欲求だけじゃ辿り着けない場所だと思うんです。旧魂電にも最初はきっとヤン・チョンのような、キラキラと輝く想いがあったはずなんですよ。そんな人でも、権威とか社会的地位を得ていくと、それを守ることに固執して、保守的になってしまう。ちょっとこう、人気者の人生の縮図? じゃないですけど、うまいこと世相を表しているなと。
新魂電も10~20年後に旧魂電のようになっていてもおかしくないよね、とも思ったので、この3話にいろいろな内容が詰まったシナリオだなと思いました。
「自分も曲がりなりに成長しているなと、ちょっと実感できた」
―ヤン・チョンの役作りはどのように?
ヤン・チョンは素直なキャラクターでバックボーンも開示されていたので、割と印象のままに演じました。ただ、ちょっと印象的だったディレクションがあって。けっこう創作物の中の大学生って、リアルより大人に描写されることが多かったりするんですけど、ヤン・チョンは等身大の大学生で、今も迷える青少年というか(笑)。
すごく素敵だなと思って演じていたんですけど、ヤン・チョンが「どうせ俺なんて」と諦めを見せる芝居で、ディレクターさんに「諦め方が大人」って言われたんですよ。そう言われて、確かに少し物分かりが良すぎたかなと反省しました。
でも、ディレクションを受けてハッとしたんです。以前と同じ感覚で演じても、今の自分の積み重ねてきた年季とか、説得力みたいなものが自然と演技に乗るようになっていっているんだなと思って、ちょっと嬉しさもあった。年々研鑽を積んで、人生経験を積んで、説得力が増し続けている先輩方をずっと見続けきたから、自分も曲がりなりに成長しているなと、ちょっと実感できたので。すみません! という気持ちと少しの喜びもありつつ、そのやり取りは印象深くて、そこで改めてヤン・チョンのピントをしっかりと合わせることができました。
―アフレコ現場はどうでしたか? 共演者の方とは一緒に収録できたんでしょうか。
【魂電編】は、ほぼ皆さんいらっしゃいましたね。掛け合いながら収録ができてとてもよかったです。同じ空間で録っていると、距離感のズレやニュアンスのズレとかも当然分かりやすいじゃないですか。その場で掛け合って修正できるから、その辺のディレクションをちゃんとして頂いた印象がありました。
アフレコ終わりにシャン・チャオ役の広瀬(裕也)くんと2人で現場近くのカフェに入って、時間ギリギリまで芝居について話し込みました。クリエイティブな現場って話したくなるんですよね。学びや発見とかもあって、気持ちも高まるから、そういう良い現場だったなっていう印象がありました。
―普段ご自宅で映画やアニメをご覧になる際のこだわりはありますか?
職業病なんですが、話の筋とか構成、先の展開の予測とかは 自然としながら見ちゃったりします。アニメと実写でも見方が変わります。アニメだったら特に芝居が気になるし、 プロとして関わらせてもらっている視点で観たりすることも多い。音作りや、細かいこだわりとかを意識するのはすごい好きですね。 わりと自分の物差しみたいなものがはっきりしている人かなと思っていて、けっこう“ここ好き”っていうのは、よく思いながら観ています。
「僕も台本をもらうたびにワクワクしながら収録した」
―BANGER!!!の読者に楽しんで欲しいポイントはありますか?
ある意味それぞれの映画のような物語があって、それが最終的に交わっていくので、 ひとつのエピソードだけ観ても全貌は見えないんですよ。とはいえ、いろいろな種は撒かれているし、 重厚な世界観は感じるし、話の流れも面白いので、 いろいろ想像を膨らませて楽しんで欲しいです。
でも、変に全貌を先読みして理解しようとすると分からなくなっちゃうかもしれないので、集中するところと、ちょっと気を抜いて柔らかく観るところ、そんな見方をして頂けると、より楽しんで頂けるのかなと思います。
―今後の展開への期待感と併せて、メッセージをお願いします。
オムニバス形式の作品って「やってやるぜ!」という気概がないと挑戦しづらいものだと思うんですが、そこにガッツリと取り組んでいる作品です。他のヒーローのシナリオに魂電が出てくることもあるので、物語の交わり方とか、事態の動き方に、僕もワクワクしていました。
物語が進んでいくにつれて、ちょっとずつ世界の秘密みたいなものが解き明かされていったり、そうかと思ったらもっと大きい秘密が出てきたりとか。闇が見えてきたり、魂電に関しても、きっとそういうことだよね……みたいな想像が膨らむ内容が出てきて。僕も一視聴者のように、台本をもらうたびにワクワクしながら収録したので、きっと皆さんにもそういう風に楽しんでいただけるんじゃないかなと。ぜひ最後まで一緒に追っていただけたら嬉しいなと思います。
『TO BE HERO X』は毎週日曜日あさ9:30よりフジテレビほかにて放送中。【魂電編】最終話となる第7話は5月19日(月)12:00よりNetflix & Prime Videoにて最速配信