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日本では知られてないけど、実は世界中から人が訪れている「村」がこちらです / 世界盆栽の日

ロケットニュース24

見慣れた日常の光景。例えば、日本に住む我々にとって住宅街はどこも似たような感じに見える。危うくスルーしてしまいそうな風景の代表だろう。だが、よくよく見てみると……え、凄い

そんな場所に出くわしたのは埼玉県の大宮を散歩している時のこと。スマホを見てるだけじゃ絶対にたどり着かなかったであろう村にたどり着いたのである。

そのほか、盆栽村で撮影した写真

・なんじゃこりゃあ

ことの始まりは「武蔵一宮 氷川神社」だった。氷川神社の総本社であり、大宮の始まりとされるほど歴史あるこの神社。日本一長いと言われる参道は駅からも近い。関東最強のパワースポットとも言われており、大宮に来たついでにその神聖な雰囲気を味わっていたところ、参道にある看板が立っていた。

この辺り一帯の地図であることはひと目で分かる。氷川神社を中心とした地図なのかな? と思いきや、その地図が指し示しているのは氷川神社ではなかった。どうやら、氷川神社からあるポイントまでのルートが書かれたものである様子。赤い四角で囲われた部分にはこう記載されていた。

大宮盆栽村と。

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> 盆栽村って何!? <
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盆栽のテーマパークでもあるんだろうか? しかし、盆栽テーマパークだとすれば大分大規模だ。そんなものが大宮にあったとは。もしかしたら地元民には有名なスポットなのかもしれないが、大宮に縁もゆかりもない私(中澤)からすると謎すぎる。そこで行ってみたところ……

・何の変哲もない住宅街と思いきや

何の変哲もない住宅街だ。う~ん、どの辺が盆栽村なんだろうか? 地図には村の説明は書かれてなかったし、謎は深まるばかり。と思いきや、よく見てみると……

公園や広場に普通の顔して松が生えていた。さらに、街路樹や庭木のバリエーションが豊富すぎて、街を歩くだけで盆栽の箱庭を歩いているようである。

建ち並んでいるのは普通の家で、パッと見は全く普通の日本の住宅街なだけに、余計にパラレルワールドに迷い込んだような錯覚を覚えた。こんなに木にこだわりある人が一カ所に集まることある? 地味に凄え……!

・歴史

そんな街を歩いていると、散策用の地図があった。やっぱりただの住宅街ではないようだが、テーマパークとも明らかに違うリアルの空気。ここは一体何なのか? その正体は無料の休憩室として配置されている『盆栽四季の家』に設置された看板に書かれていた。

なんでも、盆栽村は、大正12年の関東大震災後、東京の盆栽業者が理想郷を求めて移転してきたのが始まりな様子。当初、住む条件として「盆栽10鉢以上持つこと」などの取り決めがあり、現在もプロの盆栽作家の集団で、日本全国の盆栽になりうる樹がほとんど揃っているのだそうな。

大正12年と言うと、1923年だから今から102年前。そのコンセプチュアルさから現代的なセンスを感じていたが、実は歴史あるガチの村だったようだ。重ね重ね、こんな場所が大宮にあったとは。

・世界唯一

そんな盆栽村には、世界で唯一の盆栽美術館があるという。まさか気ままに散歩してるだけで世界唯一に出くわすとは。散策の締めくくりとしてもちょうど良かったので盆栽美術館に行ってみた。

JR土呂駅の近くにある盆栽美術館は、美術館としてはそんなに大きくはない手頃なサイズ感。外観からするとサクッと10分くらいな印象である。

入ってみると、エントランスには100周年記念企画展の盆栽が飾られていた。私のようなド素人がパッと見ただけでも雄大さが伝わってきたから、凄い盆栽なんだろうな

・入場してみると

入場料はなんと310円。1500円くらいするのかと思っていたので、盆栽美術館に入るほど盆栽に興味があるのか自問自答してたけど、310円というのを聞いて「とりあえず入っとけ」というメンタルになった。でも、楽しめるのかな

と思いきや、入ってすぐの廊下のところに盆栽の見方が書かれていた。盆栽も見方があるんだ……私はそう思うレベルの素人なため、当然、盆栽の違いとか分からないんだけど、そんなド素人の私が「へー」と思ったのは盆栽には正面があるということ。

で、まずは正面から見る。まあ、これは普通に盆栽に相対すればそうすると思われる見方で、私はここで「分かるかどうか」が盆栽鑑賞のセンスだと思っていた。私は分からないから盆栽好きな人とは趣味が違うんだろうなーと。だが、この次の段階に進んだ時、一気に世界が開けたような気がした。

・盆栽の世界

その次の見方とは下から見上げるという鑑賞方法。いや、そうは言っても植木鉢に収まるミニチュアサイズ。下から見上げたところでたかが知れてるでしょ? そう疑いつつも、腰をかがめてちょっと下から覗いてみたところ、雰囲気が一変した

天を掴まんとばかりに手を広げる枝。土から盛り上がる根にも今やどっしりとした歳月を感じる。普通に見ている時は「可愛いな」くらいの感想だった盆栽が、角度を変えて見るだけで大樹へと変わった。SUGEEEEEEEEEE!

その雄大さには生命の躍動すら感じる。なんなら小鳥とか住んでそうだ。現実でもなかなかお目にかかれないような立派さにしばらく動けなかった。押し入れを開けたら異世界に繋がってたみたいな気分である

・外国人客

初期段階でそんな感動を味わったため、その後の盆栽が全てしゃがんでじっと見てしまった。後ろをガンガン人が通り過ぎて行く。私が行った時は、日本人は見るともなく見て通り抜ける人が多かった。おそらく、私と同じく興味本位の様子見勢だろう。

一方で、同じくらい多かったのが外国人で、アジア系から白人まで色んな客がいた。そういう人たちは熱心に色んな角度から観察していたり、撮影OKの中庭にある盆栽の写真を何枚も撮っている人が多く、これ目的で来ているような雰囲気すらある。

中には、盆栽を前にして目を閉じてチルってる外国人もいた。盆栽を前に目を閉じるってどういうこと!? 私には分からない領域だが、宮本武蔵が無刀の境地に達するみたいな達人感がある

・見え方が変わる

そんな感じで美術館を一周してエントランスに戻ってきたところ、入った時よりも企画展の盆栽が大きく見えた。せいぜい30分くらいだったと思うんだけど、ものの見え方がガラッと変わった不思議な体験にこう思わずにはいられなかった。「310円は安い」と。

それにしても、特に有名駅ではないJR土呂駅の近くという立地を考慮すると、外国人率の高さに世界からの注目を感じる。ひょっとして、盆栽村のことを全く聞いたこともないのは私だけなんだろうか?

そこで念のためロケットニュース24の編集部員にも聞いてみたところ、埼玉県出身の砂子間正貫も含めて誰もこの村の存在を知らなかった。知ってる人は知ってるんだろうけど、やはり知る人ぞ知る村であることは間違いない様子。

変わらない生活、変わらない風景。その変化や刺激をついついSNSに求めてしまう。だがしかし、何の変哲もないと思っている日常の瞬間は、顔を上げれば類まれな出会いで満ちているかもしれない──。

参考リンク:盆栽村
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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