キッシン・ダイナマイト12年ぶり来日公演を兀突骨Joe-Gがレポート! 2024.11.18@渋谷WWW
ヤング・ギター公式ウェブサイトをご覧の皆様、どーも、兀突骨のギタリスト:Joe-Gこと円城寺慶一です! 今回は縁あって、去る11月中旬、約12年ぶりに来日を果たしたドイツの5人組:キッシン・ダイナマイトを観に行ってきました! 往年のヘアー・メタルやグラム・メタルに通ずるキャッチー&パワフルなサウンドで人気のバンドですよね! 彼等のライヴを観るのは初めてですが、当日の感想なんかをギタリスト目線でお伝え出来ればと思いますっ!
ステージを動き回っていても安定したプレイ
まずは簡単に自己紹介から。僕のことを知っている方はご存知の通り、自分はヤング・ギターのお陰様で(?)“筋肉ギター”というジャンルのキャラクターで普段活動しております。健康的なロック・ギタリストを広めようと、日々ジムとスタジオを行き来する生活なのですが、ジムといったら筋トレですね! 普段デス・メタル・バンド(兀突骨)をやっている僕ですが、ジムでよく聴く音楽が、実はハード・ロックやAOR系が多く、今回のキッシン・ダイナマイトも、新作『BACK WITH A BANG』(2024年)はもちろん、他のアルバムも聞きながらトレーニングをしているんです。やっぱりスタジアム・ロックはテンション上がりますからねっ!
そんな中、ある時来日決定のニュースを見て、「これは観たい!」と思っていたところ、ちょうどライヴ・レポートのお話がきて即決でした!(笑)
※pic: Joe-G
ライヴ当日はいきなり寒くなって、普段タンクトップやTシャツで過ごしてる僕ですが、遂に長袖デビューした日だったんです。会場内に着くと、なんとビックリ、超満員で既に会場の熱気がムンムン状態でした。長袖で来てしまったのを若干後悔するほどにあったまっていて、来場者が今回の来日をどれだけ楽しみにされていたのか分かりましたね。
実は今回の会場:渋谷WWWに、自分は初めて訪れまして。劇場型のライヴハウスで、驚いたのが、どこの位置からもステージがよく見えるっていうその作り。演奏も見やすいだろうなぁ…と思いながら、運良くPAの真裏に通して頂けて、素晴らしい位置をゲット出来ました(笑)。
ほぼオンタイムで開演し、SEからのメンバー入場でまず目を引いたのが、ESP製のギターを持ち登場した上手ギター:アンデ・ブラウンのマッチョな胸元を見せるシャツ開けスタイル(笑)。「絶対、週3〜5回はジムに行ってるだろうなぁ…」と、筋肉ギタリスト的にそちらにまず目が行ってしまいました(笑)。アンデはヴォーカルのハネスと兄弟なのですが、いい意味で全然似ていないですね(笑)。
Hannes Braun (vo)
Ande Braun ( g )
Jim Muller (g )
Steffen Hail(b)
Sebastian Berg (dr)
オープニング・ナンバーは新作のタイトル・トラックでもある「Back With A Bang」。ギター・イントロが始まり、「あれ? ギター音がちょっと小さい?」って一瞬思ったのですが、すかさず専属のPAさんがサウンドを上げて調整し、バランスが良くなりました。自分もバンドで海外公演をしたりするのですが、海外では、最初ギターの音が小さくなってる状態でスタートすることが結構ありまして、日本だとあまり経験したことがないので、海外では小さいレベルから始めるのが当たり前なのかなぁ…と。もちろん、野外や大型のフェス・イベントとかだと、リハの時間も十分取れない場合が多いので、ある程度クリッピングしない音量からスタートして、1〜2曲やる中でサウンドを調整していくと思うので、そういう現場に慣れているPAさんの場合は、優先的にサウンド作りがそうなるのかなぁ…と思ったり。
下手ギターのジム・ミューラーはアイバニーズ製のギターを使い、メインのソロを担当してまして、音源まんまのソロを1曲目からカマしてきたのが衝撃的だった(笑)。もちろん、普段からアルバムをよく聴いていて、ギターが上手いのは知っていましたが、録音の音源とライヴ・サウンドでは音作りが違うし、音源通りにはいかないはずなのですが、ギターの位置も割と低めで、タッピングを織り交ぜた速弾きのソロを軽々とクリアして、音源と同じサウンドとクオリティで「やべぇ!」って思いましたね(笑)。
1曲目って、ギタリスト的に最初の難所なんですよ。ツカミのインパクトって大事だなぁ…と、僕は思っていて、1曲目から演奏が上手くいくと、なんか「この日は最後まで上手くいくぞ」って、ジンクスみたいなのがありまして。逆に他のアーティストを観る時も、1曲目はやはり判断材料になったりするんですが、この日のジムは、オープニング・ナンバーから完璧な文句のつけようのないギター・ソロを弾いてきて、ここで僕は“筋肉ギタリスト”から“ただのギタリスト”目線に変わりました(笑)。
3曲目の「No One Dies A Virgin」(2022年『NOT THE END OF THE ROAD』収録)は、僕がキッシン・ダイナマイトの中でも特に好きな楽曲なのですが、ギター・イントロがとにかくカッコイイ!! 某アメリカのスタジアム・バンドを彷彿とさせるようなメロディ・ラインなんですが、爆発力があって、テンションが上がります! ジムのメイン・リフはミドル・レンジ寄りで、’80年代ハード・ロックによくあったピッキング・ハーモニクスを織り交ぜるリフが、僕はたまらなく好きで、この曲にはそのすべてが入っていると言っても過言ではないと思います!
時にベースのシュテファン・ハイルとジムが向き合って、頭をギリギリまで近づけていく、激しいパフォーマンスをしていて、いつ額がぶつかってしまうのかヒヤヒヤしながら観ていたのですが、妙技とも呼べるカッチリした動き方で、全く問題なくパフォーマンスしていたのが凄かったです! キッシン・ダイナマイトのライヴを観たのは初めてなわけですが、このバンド、みんな本当にステージ上をよく動く。動きまくるし、アクションもするし、余裕の表情で弾くし…で衝撃的でした。
たまに、海外のバンドと自分のバンドも含めた日本バンドのパフォーマンス…というか、ライヴでの動き方の違いについて思考するのですが、海外って日本とは違い、ダンス等のリズム文化が根底にあったりして、身体の重心の位置が低いな…と思うんです。その文化の影響か、はたまた遺伝子レベルなのかは分からないですが、強靭な脚腰からくる体捌きで、ステージを動き回っていても、上半身の軸はブレずに安定したプレイを可能にしているように見えます。なるほど、海外のギタリストがカッコ良く、さらに上手く見えてしまうのは、ただの海外フィルターがかかっているのではなく、重心の取り方がそもそも違うのか…と推察していました。 逆に日本では、縦ノリのジャンプや腕を振ったりして、上半身をダイナミックに使うバンドは多いのですが、下半身がしっかりしていないと重心はブレてしまうので、演奏が上手くいかなかったり、誤解を恐れずに言うなら、ちょっと軽く見えてしまう部分があるな…と思ったりもして。
つまりは…日本のバンドマン達! 下半身を鍛えましょう!!(笑) スクワットから逃げてはダメです! 海外のバンドマンはジーパンがパンパンになっていて、脚の筋量の多さが違いますね。
楽器持ったまま人を載せるなんて…!
そんな感じでパフォーマンスにも注目して観ていたら、始まりました「Yoko Ono」! この曲(『NOT THE END OF THE ROAD』収録)でこのバンドを知ったくらい、インパクトのあるタイトル(笑)。最初MVを見た時、「まさか本人feat.か?」って思ってたら、オノ・ヨーコさんの昔の風貌を真似た人が出てきて爆笑でした(笑)。曲はノリが良く、王道ハード・ロックながら、イントロ等に日本っぽいメロディが入り、そして“Yoko Ono”の部分をフックにしたサビなんて、誰も予想だにしてなかったはずです。サビにきた瞬間、やはりお客さん全体でシンガロングしてましたね(笑)。
キッシン・ダイナマイトは本当に歌メロが素晴らしく、覚えやすいんです! ヴォーカルのハネスの歌はミドル〜ハイの抜けが良くて、歌詞も聞き取りやすいし、ちゃんと音源通りのピッチを崩さないで歌っている。「歌上手いなぁ」って、感動でした。
その後も、「Queen Of The Night」からの「The Devil Is A Woman」という新作の連曲で、遅めのノリの良い曲が続いて、リフがやっぱりカッコいい! そして、サビがスッと頭に入ってくるし、シンプルだからこそ魅せられる良い曲だなぁ…と。覚えやすくて口ずさみやすい、こんなに分かりやすく伝わる曲が沢山あるって、改めてすげぇなぁ…と。
上手のアンデは、主にバッキングやオブリを担当していたのですが、ジムとのサウンドのコントラストが分かれていて、高音が煌びやかな感じで、彼の弾くオブリ・パートが、楽曲に彩りを持たせていました。あと、意外と久しぶりの来日なのもあってか、過去作からの楽曲もバランスよく配置してくるなぁ…と。
ジムは後半になっても、ギター・ソロを外さないでしっかり決めてきますね。終始動き回っているので、疲労してくる頃合いですが、プレイが一切ブレない。弾いてるフレーズも、観ていてとても勉強になります。 「Six Feet Under」(2012年『MONEY, SEX AND POWER』収録)では、アンデがアコースティック・ギターを持ち、ジムがエレクトリックでメロウなロック・バラードを奏でていました。ショウの最初からずっとアコがステージの後ろに見えていて、「いつ使うんだろう?」って思っていたら、やっとここで登場しました(笑)。しかも、この曲のためだけにです。
続く「The Best Is Yet To Come」(『BACK WITH A BANG』収録)は、歌メロがトップ・レベルで好きなので、もうこの2曲のヴォーカルだけで、かなりジ〜ンと目頭に熱いものがきてました(笑)。激しい曲を連発してからのロック・バラードやメロウ・ソングはずるいです!(笑) 「The Best Is〜」の曲名は、「本番はまだこれから!」みたいな感じだと思うのですが、今回観たライヴの個人的な感想では、今がこのバンドの所謂全盛期とか黄金期とか呼ばれる時なのかなぁ…と勝手に思ったりして。事前に予習のため、過去のライヴ映像なども観ていたのですが、今回の公演は圧倒的な完成度で凄まじかったんです。
「I Will Be King」(『MONEY, SEX AND POWER』収録)ではハネスが王様になりきってローブをまとい熱唱!割とキャリアは長くなってきていると思うのですが、その中で構築された流れや、各メンバーの信頼関係なども含め、ステージで魅せて、聴かせる。簡単なように思えますが、ショウを最後まで楽しませることが出来るアーティストって、今や少なくなってきてるんじゃないかなぁ…と。キッシン・ダイナマイトは間違いなく最高でした!!
その後、アンコールも2曲やってくれて、極め付けが最後の組体操!(笑) あとで聞いたのですが、2013年の初来日時もやっていたらしく、もはやお決まりの流れなんでしょうね。初見の僕にはとても新鮮な体験でした。そして、やはり体幹が良い! 楽器持ったまま人を載せるなんて、体幹がないと出来ない芸当なので、やはり筋肉はすべてを解決するなぁ…とまとめてみたり(笑)。
とにかく最初から最後まで、メモ書きの手が止まってしまうほどに引き込まれる素晴らしいライヴでした! 自分のギター・サウンドやステージでの魅せ方についても非常に勉強になり、個人的な実りも収穫もありまして、キッシン・ダイナマイトがさらに好きになってしまいました! このライヴのセットリスト通りにプレイリストを作って筋トレしまくります!!(笑)
キッシン・ダイナマイト 2024.11.18@渋谷WWW セットリスト
1. Intro(SE)〜Back With A Bang 2. DNA 3. No One Dies A Virgin 4. I’ve Got The Fire 5. SE〜My Monster 6. I Will Be King 7. Yoko Ono 8. Queen Of The Night 9. SE〜The Devil Is A Woman 10. Love Me, Hate Me 11. Only The Dead 12. Six Feet Under 13. The Best Is Yet To Come 14. Not The End Of The Road [Encore] 15. You’re Not Alone 16. Raise Your Glass
兀突骨:リリース・インフォメーション
この度、12月18日(水)に兀突骨デビュー15周年記念ベスト・アルバムが発売されます! 現メンバーでリレコーディングされた楽曲2曲を含む『血塗ラレタ旅路』、新曲1曲とリレコーディング1曲を含むレア・コレクションの『疾風ノ如ク』、そして前者は、なんと2枚組のLP版も!…という3種類同時発売で、とても豪華仕様となってます!!
僕がギターで加入してから約10年──今のメンバーの全盛期は間違いなく今! ということで、是非とも購入してライヴにも足を運んで頂きたく思います!
INFO
血塗ラレタ旅路 / 兀突骨
発売 | B.T.H. Records | CD、配信
各種配信・ショップURL
疾風ノ如ク / 兀突骨
発売 | B.T.H. Records | CD、配信
各種配信・ショップURL購入特典 タワーレコード:缶バッジショップディスクユニオン:おもしろMC集(DVD-R)ショップ
(レポート●円城寺慶一(兀突骨、Potalist) pix●Yuki Kuroyanagi (except※))