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リリース40周年!大滝詠一「B-EACH TIME L-ONG」は普通のベストアルバムじゃない

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2025年03月21日 大滝詠一「B-EACH TIME L-ONG 40th Anniversary Edition」発売日

3月21日はナイアガラデー


毎年、桜の開花が近づく季節になると決まってある程度の支出を伴うため、それなりの資金を調達して臨まなければならない。花見の宴席のため? それも少なからずあろうが、なんといっても3月21日のナイアガラデーに何かしらの新譜がリリースされるからである。全国のナイアガラー(大滝ファン)にとっては嬉しいながらも財布の紐が弛みっ放しの季節なのだ。お互い大変ですナ、ご同輩。

当たり前のように書いているが、今さらながらに記しておくと “NIAGARA” は福生の師匠、大滝詠一が自らの名前を元に興したレーベル名で、かの名盤『A LONG VACATION』が1981年3月21日リリースだったことに因んで、毎年この日に新たなアイテムが発売され続けているのである。

周年にあたるタイトルの復刻が中心のリリース、今年2025年は『B-EACH TIME L-ONG 40th Anniversary Edition』と『Complete NIAGARA SONG BOOK』の2本立てに加え、書籍『All About Niagara』の改訂版が3月18日に販売開始された。さらに4月には山下達郎デビュー50周年を記念して、​​大滝がプロデュースしたシュガー・ベイブ『SONGS 50th Anniversary Edition』の全形態(CD、レコード、カセット)のリリースも控えている。そのほか関連書籍や雑誌もあってまさに嬉しい悲鳴なのだ。

1985年にリリースされたベストアルバム「B-EACH TIME L-ONG」


『B-EACH TIME L-ONG』が最初にリリースされたのは1985年6月1日。それまでに出されていた『A LONG VACATION』『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』『EACH TIME』といった3枚のアルバムから選曲された10曲に、新曲「Bachelor Girl」とインストゥルメンタル版の「夢で逢えたら」を加えたベストアルバムだった。商品としての最たる特徴は、CDとカセットのみでのリリースであったこと。どちらを買うか迷った挙げ句、結局CDとカセット両方を買わざるを得なかった自分を思い出す。40年の時を経て今回初めて発売されたアナログレコードも当然買わなくてはならないのが、ナイアガラーの端くれとしての使命であろう。

内容も普通のベストアルバムではない。ボーカル入り楽曲の前に、井上鑑がアレンジを手がけたインストアルバム『NIAGARA SONG BOOK』『NIAGARA SONG BOOK 2』のストリングスバージョンが前奏的に編集されている。その両盤に未収録だった「白い港」と「Bachelor Girl」のストリングスに関してはこの時が初収録で、後者は新たにレコーディングされたもの。細かいところをいうと「夏のペーパーバック」の楽曲パートはアルバムバージョンではなく、12インチアナログ盤で構成されたボックス『EACH TIME SINGLE VOX』に収録されていたシングルバージョンが使われていた。また、アルバムのプロモーション・オンリーで「バチェラー・ガール」の12インチ透明盤が存在している。

ナイアガラの夏がやってきた


「カナリア諸島にて」に始まり、「夢で逢えたら」のインストで締めくくられるアルバムは夏の雰囲気が満ちあふれている。ジャケットは永井博。当時の宣伝物にも "ナイアガラの夏がやってきた" と記載があり、夏のアルバム『A LONG VACATION』が既にスタンダード化していた様子が窺える。全てにおいて緻密に計算され尽くした大滝の作品群、アルバム毎のコンセプトはもちろんのこと、視点はもっと拡く、『A LONG VACATION』がヒットしていた1981年夏の時点で、その後も毎年アルバムを出して1985年にベスト盤を作ることを想定していたそうだ。『シーサイド・コレクション』というタイトルまで考えていたらしい。

全12曲中、1曲目から9曲目までは3ブロックに分けられ、それぞれのブロックに上述した3枚のアルバムから1曲ずつピックアップされた構成になっている。さらに3曲が加えられているのは、ベストは従来12曲入りが定石だったという事実に基づいているそう。「カナリア諸島にて」「オリーブの午后」「夏のペーパーバック」でまず1ブロック。次に「恋するカレン」「白い港」「ペパーミント・ブルー」でまた1ブロック。続いて「雨のウェンズデイ」「Water Color」「銀色のジェット」でさらに1ブロック。そうやって聴いてみると、姉妹作のようなアルバムに同系統の曲が意識的に紡がれていたことがよく判る。

ナイアガラ作品をきちんと整理した「All About Niagara 1973-2024」


新曲「Bachelor Girl」は、本来はアルバム『EACH TIME』に収録される予定だった「フィヨルドの少女」とのカップリングで、1985年11月1日にシングルリリースされ、共に1986年6月1日リリースの『Complete EACH TIME』に収められた。それもまた再発盤、30周年記念盤、40周年記念盤が出されており、ナイアガラーでない限りはもう何が何だか解らない状態だろう。その辺りがきちんと整理されている書籍が、今回発売になった3度目の増補改訂版となる『All About Niagara 1973-2024』なわけです。これもまた7インチレコード+Tシャツ付きの「DELUXE EDITION」があるのでご注意あれ。

細かい話は抜きにして、最新リマスタリング音源で蘇る『B-EACH TIME L-ONG 40th Anniversary Edition』は夏向けの最高のリゾートアルバムとして、ナイアガラ初心者も、熟練のナイアガラーも満足させられる作品集だ。レコードは透明カラーヴァイナル仕様で2枚組の重量盤、B2サイズのポスターも封入されている。そしてやはり2枚組となったCDのDISC2にはプロモーション・オンリーだった貴重なカセット音源が収録されている。40年前にCDとカセットを買った自分も、今回はレコードとCDを買うことになるのは必至。今年もまたナイアガラー歓喜の春がやって来た。嬉しいですナ、ご同輩。

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