「ライン(釣り糸)の太さはどうやって決める?」 ターゲット・タックル・障害物の有無で考えよう
釣りを楽しむ者なら、当たり前のように使用しているのがラインだ。仮に竿が無くても「手釣り」が出来るが、ラインと針が無ければ、釣りを楽しむことが出来ない。では、ラインの限界値というのは一体どんなモノなのだろうか?と、ふと考えてみた。これは、様々な釣りを経験してきた著者の、あくまで「体感の話」だ。
ラインの種類
まずは釣りにおける一般的な「ラインの定義」を考えてみると、多数の呼び名がある事に気付く。一つずつみていこう。
道イト
リールを使用する際に、リールのスプール部に巻きつけておくのが「道イト」だ。これはリールを使用する釣り方において、大元となるラインと言える。対象魚種にもよるが、リールには80m~200m程度巻き付けておくのが一般的だ。
ハリス
餌釣りの際、針を結ぶラインのことを「ハリス」と呼ぶ。魚から最も距離が近いラインのため可能な限り細い方が好ましいが、歯が鋭い魚だと切られてしまう危険性もある。実に悩ましいところだ。
幹(ミキ)イト
サビキや胴突き仕掛けなど、複数の針・ハリスを使用する際、「幹」にあたるラインの事を「ミキイト」と呼ぶ。複数の針に魚が食ってきたことを想定し、その重量や引きに耐えられるよう、ハリスよりも2ランク程度太くしておくのが好ましい。
エダス
幹イトに結わえ付けて使用するハリスのことを「エダス」と呼ぶ。これは、「幹」から出ている「枝葉」のように見える事から、このように呼ばれるようになった。こちらもサビキなど、複数本の針・ハリスが用いられる仕掛けで使用する呼び名だ。
ショックリーダー
ルアーフィッシングを楽しむ際、道イトとルアーの間に接続するやや太めのラインをこのように呼ぶ。道イトがPEライン、ショックリーダーはフロロカーボンライン……といった組み合わせが一般的で、結束部の強度を可能な限り落とさないよう、専用の結び方(ノット)が複数存在している。
その他
タチウオやイシダイといった極端に歯が鋭い魚を狙う際は、ワイヤーを用いた「ワイヤーリーダー」を使用する事が多い。また、延べ竿を用いるアユ釣りや渓流釣りでは、イト絡み防止・視認性アップ目的で竿先に直接結びつける「天井イト」、時に仕掛け全体が水没する事もある「水中イト」と呼ばれるラインが登場する。ラインは、我々アングラーの釣り方に合わせて進化してきたと言えよう。
ラインの限界は何で決まる?
我々は、上記を一括して「ライン」と呼んでいる。各メーカーが発売しているラインのラベルには直線強度が示されているが事が多いが、ラインの「太さ」は、どうやって決めるべきなのだろうか。その答えは「切れることなく無事に獲物を取り込める、でも警戒されないように出来る限り細いもの」……といった具合だ。
だが、「この号数の限界は~cm、~gの魚(イカ・タコ)までですよ!」なんて基準は聞いたことがない。ではここから、「ラインの限界を決める上で重要となる様々な要素」を考えていこうと思う。
水温
水温が低い時期は魚も活発ではないので、引き味がやや弱くなる傾向にあり、案外細い号数で良型が釣れることもある。逆に適水温期は魚が元気なため引きが強くなり、ラインが細いと心細くなる方も多いだろう。
魚種による違い
体型や生態により、サイズの割に引きが強い魚がいる。これこそがサイズよりも重要なファクターかもしれない。
根掛かりや根ズレ
海底が一面砂地であれば、根ズレ等で切れてしまうリスクは少ない。逆に磯場・岩場であれば、付着した貝殻・鋭利な岩がある……といった事も考慮してラインを選んだ方が無難だ。これは魚種とも深い関わりがある要素なので、何らかの手段で予め知っておくほうが良いと言える。
ゲストの存在
本命の魚以外に、歯が鋭い他魚・ワンサイズ大きな他魚などがいる場合はそれも考慮すべきだろう。これはブリ狙いの際のサゴシ・サワラ、キス釣りの際のベラ・フグ等が該当する。美味しいゲストなら併せて狙う価値があるものの、実に悩ましいところだ。
劣化度合い
仮に新品で売られている商品であっても、メーカーからの発送時期や在庫処分品・ワゴンセール品もある。これらの強度は当然新品の物とは違ってくるので、考慮しておく必要がありそうだ。
使用タックル
柔らかい竿/ライトタックルを使用している場合は竿でタメが効くので、ラインがワンランク細くてもなんとかなるケースもある。だがその反面、暴れまわられて竿をのされ、悲惨な事になる事も多い。リールを使用している場合はドラグ性能も関係してくるので、タックルのパワーをある程度把握した上で釣りを楽しみたい。
著者の経験
ではこれらを踏まえて、様々な釣りを楽しんできた著者の経験を紹介したい。ここに記載している太さはハリスがメインだ。
0.6号~1号の世界
視力が良いメバルを狙う場合、柔らかい竿を使う上に仕掛けを真っすぐ落とす事が多い釣りなので、この号数が使える。過去には瀬戸内の船釣りで0.6号を使用し、29cmのメバルを釣ったことがある。上手くやれば30cmクラスも仕留められるはずだが、ラインブレイクでバラしてしまう事を考えると0.8号が無難だと感じる。
ちなみに同日、1号で50cmクラスの真鯛を仕留める猛者もいた。これは時期が2月であり、柔らかい竿+電動リールだから取り込めたのかもしれない。勿論、アングラーの腕による部分も大きい事を追記しておきたい。
1号~3号の世界
この号数は、堤防やチョイ投げで最もよく使用される太さだ。1~1.5号なら根魚・キスなど様々な魚が狙える。だが仮に20cmクラスのカワハギが掛かった場合、1.5号は切られる事がある。これはカワハギの歯が鋭い事、ポイントにカキ殻や岩がありラインが擦れやすいことが原因と考えられる。
では30cmを超える魚は2号以上、さらに大きいなら3号以上が安心……と考えたくなるが、実際はそうではない。著者が5月に1.85kgのアオリイカを釣った際のリーダーは2号。さらに、9月の夜にメバリングタックル+リーダー2.5号をセットし、活けイワシを足元に落として69cmのスズキを仕留めた例もある。
寒い時期のエビ撒き釣りでは、1.5号や2号ハリスでスズキクラス(60cmオーバー)を釣っている人も多い。この辺りからラインというものがよく判らなくなってくるが、「魚種と時期、竿が特に重要」ではないかという仮説が立つ。
4号~6号の世界
歯がそれほど鋭くないハマチの場合、60cmクラスまでならハリス/リーダー4号(16lb程度)でルアーでも泳がせ(ノマセ)でも普通に釣れる。とはいえ、群れの中に80cmクラスが潜んでいることも考慮すると、4号ではあまりに心細すぎる。ヒラメも50cmを問題なく仕留めているが、歯が当たった瞬間にスパッと切れてしまった事を考えると、針掛かりの位置まで考慮すべきだろう。
だがそうなると、8号でも切れそうな気がしてしまうのは著者だけか、はたまた釣り方(ウデ)の問題なのか……。このクラスの太さだと、サイズよりも魚種と釣り方が大事だという確信を得られる。
単純思考では決められない
ラインの強度というのは道イト・ハリスなど「どの部分」なのか、また「結束部と結び化・サルカン等を使用しているかどうか」によって大きく変わってくる。時期や魚種、タックル強度、どんな仕掛けなのか等を多角的に考え、確実に獲れるようワンランク太くしておくのが無難だろう。だがそうなると、警戒されて食いが悪くなるのもまた事実だ。
ラインの太さに困った場合は、当TSURINEWSで紹介される仕掛け図等を参考にしてもらえれば、大まかな太さを把握できるはずだ。その上で、対象魚をより深く研究し、日々腕を磨いてみてほしい。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>