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【ピエール瀧が行く ファンキー!公園】調布市・狛江市「多摩川住宅」敷地内の公園で感じる不思議なノスタルジア〈後編〉

さんたつ

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ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」!今回は前回に引き続き、東京都調布市/狛江市の「多摩川住宅」敷地内からお届けします。

多摩川住宅敷地内の公園

ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。近著は『ピエール瀧の23区23時 2020-2022』(産業編集センター)。

世代じゃなくても感じられる、不思議なノスタルジア

っていうか今気づいたんだけど、団地の棟を「イロハニホヘト」で分けてあんのね。あそこ「イ号棟」だもんね。そして道を渡った側は解体工事が進んでる。団地の棟がなくなってるエリアが出始めてるのか。

—— いやあ、リサーチ不足でした。どうも耐震性の問題から「ロ号棟」が解体されて、これから建て直すみたいです。現在工事をしている囲われたエリアの中に「中央公園」ってのがあって、感じのいいコンクリ遊具がいくつもあったらしいんですけど……。

「多摩川住宅2棟団地マンション建て替え計画」「2028年完成」「地上12階」だって。きっと「中央公園」ていうぐらいだからすごかったんだろうな。隙間からちょっと工事の様子が見えるけど、完全に今は更地になっちゃってる。こっちにも幼稚園があるけど、こっちはピカピカだね。まあ建て直す方が、住む分には快適だし、移住者も増えるだろうしね。モデルルームみたいなのもある。

—— 「シティテラス多摩川」って書いてありますね。

ああ、もう「団地」とか「住宅」とか言わないんだ。じゃあ絶対「ロ号棟」とか呼ばれることはないよね。遊具が置かれたとしても、現代っぽい安全そうなヤツが置かれるんだろうな。

—— とはいえ、その隣にはまだ昔ながらの団地と、公園もまだいくつかありますんで、そっちの方に移動しましょうか。

そうね。うわ、ここがその公園? UFOがある! こっちこそが、本当の「宇宙公園」じゃん(笑)。さっき現代的なマンションを見たばっかりだから余計思うんだけどさ、この多摩川住宅は俺みたいなおっさんとじゃなくて、こういう遊具が残ってるうちにかわいい女の子とか連れてきて写真集とか作るべきなんじゃない? 成海璃子ちゃんとか、グループアイドルの子たちとかでもいいからさ。こういうのは、やっぱ記録をちゃんと残しておくべきだと思うな。交通新聞社で出せばいいんだよ。どうかな?

—— こっちの方も、きっと建て替えが決まってるでしょうからね。

そうそう、だから今のうちじゃんか。でもこっちはもうちょい後っぽくない? 「ト号棟」って書いてある外壁の塗装が塗りなおされて、最近ケアされてる感じもするし。こっち側が解体されるのは10年後くらいなのかもなあ。

解体前に見ておくべし!な理解困難な造形物

—— では、その「ト号棟」を通って次の公園に行きます。こちら「大公園」ですね。

すごい何これ? ゆらゆら帝国の「空洞です」じゃん! いやあこれはさっきのUFOといい、中に入り甲斐があるよ。そんでこれ何? 滑り台?

—— どう形容していいか分からないですが、とりあえずユニークですね(笑)。

というか、どういう着想でこれが考えだされて、着工にGOサインが出たんだろう?(笑)。結構有名な人がデザインしてるのか、もしくは多摩美でコンペが行われて当時の学生がデザインした作品とかかな? 人間の大きさで真ん中を滑ったら、まあまあなスピードで飛ぶと思うんだけど(笑)。そこにもうドーン!て飛んでいきそう。そんで、ここにはいらないんじゃない? ってところにも滑るとこがある。遊具っていうか、もう作品だよね、これ。若干けがしそうなとこも含めてさ、すげえやばくない?

この断層とか意味不明だし。でもかっこいいよ!こんなの見たことないわ。やっぱ、これには俺じゃなくて若い娘さんとかを連れてきて写真撮るべきって話じゃか。画になるだろうし。いやあこれは本当に解体される前に見に来るべきだと思うな。

—— グローブジャングルもまだありますしね。

あの球体遊具も昔はいっぱいあったのに、子供が指切断する事故起きてから見なくなったもんね。本当にさ、今みたいな平日の昼間、つまり皆さんがお仕事なさったり、子供ちゃんが学校に行ってる、人があんまりいない時間に来るのがおすすめだよね。独り占めだもん。

—— では最後の公園に行きましょう、こちらは「ほねほね公園」です。

なるほど「ほね」ってこういうことか! それでまたキノコのヤツがあるけど、ここではベンチ扱いなんだな。ここでお弁当とかおやつとか食べなよ! みたいな感じで。長年の酷使と、経年劣化で歪んじゃっているけど。ていうか、分かった! この多摩川住宅は、要するに昭和の公園のボックスセットなんだな。一個一個の遊具も、完成度が高いしね。味わいがハンパない。

—— 順次工事が行われるみたいなんで、引っ越すのは難しいとしても、遊びに来る価値はありますよね。

いやでもさ、若い夫婦とかファミリーでもここに住みたいって人いるんじゃないかな? 現代の新しいマンションとか建物にある、上から目線のちょっといやらしい感じが全然ないじゃん。住民の人には申し訳ないんだけど、ここに遊びにきた人間にとっては、この団地のたたずまいや感じ全てを含めて“公園”っていう感じがする。ここに遊びに来れば、結構長い時間楽しめると思うな。「そんな俺らが住んでるエリアに知らん人たちに来られちゃ困るんだけど」っていうのは重々承知の上で、それでもあえて言わせていただくんだけれども。建物も含めて、みんなのDNAに刻まれたノスタルジーを感じるっていうか。なんか不思議と落ち着くじゃん? 若い人たちでも、この雰囲気を楽しめる人は多いと思うな!

多摩川住宅敷地内の公園

昭和公演ボックスセット度 ★★★★★
なぜか落ち着く度 ★★★★★
行くなら今のうち度 ★★★★★

水飲み場:なし  トイレ:なし
自販機:なし   灰皿:なし

多摩川住宅敷地内の公園
住所:東京都調布市染地3-1-115 ほか/アクセス:京王電鉄京王線国領駅から徒歩15分

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2025年5月号より

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