続ける勇気をくれる!5年のDIYが形になった場所――福崎の古民家喫茶『動き人』 福崎町
JR福崎駅を北西へ抜け、のんびりとした田園風景を進んでいくとたどり着く一軒の古民家喫茶『動き人』(福崎町)。引き戸を開けた瞬間、土間の懐かしい香りが鼻をくすぐり、息がふとゆるむような空気に包まれます。
この場所には、静かな佇まいからは想像できない“物語”があります。
物語の中心にあるのは、店名にもなっている「動き人」という言葉。店主の中田さんは、自分の夢を「動かしてくれる人」に出会った経験があり、その人たちを「動き人」と呼んでいます。そして、自分が古民家をDIYで蘇らせたように、「ここが誰かの動き出す一歩につながれば」という思いを込めて、このカフェが生まれました。
「本格的なDIYがしたい」と、中田さんが築90年の古民家を購入してから5年間。仕事終わりに少しずつノコギリとトンカチを手に、ひとりでリノベーションを進めていったといいます。
以前は建築とはまったく異なる仕事をされていたそうですが、素人ながら間取りを研究し、天井の梁は当時のまま残し、壁は「今日はここ」と決めて少しずつ塗る。そんな地道な作業を積み重ねていったそうです。
カウンターやウッドデッキなど、幼い頃に憧れていた家の特徴も取り入れながら進めた作業は楽しい反面、“古民家の趣を古びた印象にしないためにはどうするか”という悩みも多かったそう。
吹き抜けは真っ暗で怖かった物置を、こだわりと勢いで乗り越えられたそうです。
その突破口になったのが「光」でした。「光を入れたら一気に綺麗になって、やっとゴールが見えたんです」と笑う中田さん。
ようやく完成し、カフェとしてオープンした当初は、まさかのコロナ禍の真っ只中。客足が遠のき、不安も大きかったといいます。
それでも料理の研究を続け、手を止めることなく前へ進んできた姿勢が、今の店内に漂うしなやかな空気にもつながっているように感じました。
「毎日いろんな人に会えることが嬉しい」と話す中田さん。レジ横に並ぶレコードプレーヤーは常連客からのもので、ここに流れる時間の温かさがそのまま形になっています。庭のサザンカも、森のように生い茂っていた場所を一本ずつ丁寧に整えた成果なのだとか。
こちらのおすすめはプリン。柔らかいタイプが主流だった時に、「自分の好きな硬いやつが欲しい!」という思いから生まれた、“昔ながらのしっかり固め”が原点の一品です。
週替わりのランチも見逃せません。個人的に好きなのは油淋鶏定食。登場していると迷わず頼みます(笑)。ご飯とお味噌汁、ほっとする小鉢などが並ぶその定食には、店全体と同じく、積み重ねてこられた日々が味に滲んでいます。
でも、このカフェの本質的な魅力は、5年間の積み重ねが“ひとつの空間として形になっている”という事実そのもの。「毎日少しでも好きなことを続ければ、ここまでできるんだ」——建物自体が、そんな“静かな励まし”を体現しているようにさえ思えます。
悩んだとき、迷ったとき、ここに来れば背中を押してもらえる。何かを始めたい人にも停滞してる人にも寄り添ってくれるような力を持つ場所――そんな古民家喫茶「動き人」。ぜひ直に感じに来てほしい場所でした♪
場所
動き人
(神崎郡福崎町高岡1141-2)
営業時間
月曜日
ランチ 11:30~14:00 ※予約のみ
火曜~土曜日
ランチ 11:30~14:00
カフェ 14:00~17:30(L.O.17:00)
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください
定休日
日曜日
駐車場
有り(店舗前6台)