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「乳幼児突然死症候群」のガイドラインが変わった! 「赤ちゃんを死なせない」 パパとママがこの秋冬に気をつけることとは?

コクリコ

子どもが寝ている間に何の予兆もなく突然亡くなってしまう乳幼児突然死症候群。2024年10月、その対策強化月間を前に公開された最新の啓発ポスター・リーフレットの内容が、一部変更となりました。変わった部分と秋冬の睡眠環境を整える最新のアイデアを紹介。

乳幼児突然死症候群の詳しい画像資料7点を見る

冬に発症率が高いことから、11月は「乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)」の対策強化月間とされています。国はポスターやリーフレットを使って啓発活動を行っていますが、2024年度はその内容が一部変更されました。最新のガイドラインでは何が変わったのか、また秋冬の睡眠環境を整えるコツについて、乳幼児睡眠コンサルタントの愛波あやさんにうかがいます。

◆愛波 あや(あいば あや)
乳幼児睡眠コンサルタント。国際資格認定機関・IPHI日本代表。Sleeping Smart Japan株式会社代表取締役。
出産後、自身が夜泣きや子育てに悩んだことから米国で乳幼児の睡眠科学の勉強を始め、現在は日本を代表する乳幼児睡眠コンサルタントとして、後進の育成や保護者に向けて睡眠・子育て・教育についての情報発信をしている。

「乳幼児突然死症候群」の予防策とは?

乳幼児突然死症候群とは、何の予兆や病歴もないまま、主に1歳以下の子どもが睡眠時に突然、死に至るという原因のわからない病気のこと。令和5年には48名の子どもが乳幼児突然死症候群で亡くなっています。

また、睡眠時には窒息事故のリスクも潜んでおり、睡眠環境を整えることは重要です。これから来る冬に備えて、どのような点に気をつけたらいいのでしょうか。

「乳幼児突然死症候群の原因はいまだわからず、予防方法は確立されていません。ですが、リスクを高めるポイントは明らかになってきているので、次のような点に気をつければ発症リスクを低くすることができます。

〈乳幼児突然死症候群の予防策〉

①子どもを仰向け(背部を下にして)で寝かせる。
②たばこをやめる・たばこの煙に子どもを触れさせない
できるだけ母乳で育てる。

〈安全な睡眠環境づくり〉

①子どもの体を温めすぎない
②子どもの寝床には何も置かない
親とは同室で寝て、寝床は別にするのがベター。

なお、予防策③『できるだけ母乳で育てる』に関しては、母乳で育てられた子どものほうが、乳幼児突然死症候群の発症率が低いことが統計的手法を用いた研究(※)からわかっていますが、あくまでもひとつの要素です。母乳で育てていないママは気にしすぎず、ほかの策や睡眠環境づくりで、対策してみてください。

※参考文献:Pediatrics (2011) 128 (1): 103–110. / Breastfeeding and Reduced Risk of Sudden Infant Death Syndrome: A Meta-analysis

最新のガイドラインの変更点は「掛け布団」!

今年度(2024年)にこども家庭庁から新たに出された啓発ポスター・リーフレットでは、従来のものから一部の内容が変わっています。

「大きな変更点としては、『掛け布団は軽いものを使いましょう』(旧リーフレット画像内①)だったのが、『上にかけるふとんは使わない』(新リーフレット画像内①)になったことです。また、それに伴い子どもが寝ているイラストからも、掛け布団が除かれました(新リーフレット画像内②)。

以前のガイドラインでは、『口や鼻などを覆うものはベッドに置かない』と書かれていたにもかかわらず、窒息事故のリスクになりうる『掛け布団の使用は軽いものであればOK』と書かれており、内容に矛盾がありました。

これが改変となり、『掛け布団は使用せず、服装で温度調整しましょう』になったのです。

なお、従来のものと同様、新たな基準でも、『添い寝をするときは、赤ちゃんを身体や腕で圧迫しないように注意しましょう』とあります。ですが、基本的に親が疲弊している場合は、添い寝はすすめられません。寝落ちして子どもの上に覆い被さってしまう可能性があり、窒息事故の危険性が高まるからです」(愛波さん)

掛け布団を使用せずに温度調整をするコツ

乳幼児突然死症候群の予防策は、以前は「掛け布団は、赤ちゃんが払いのけられる軽いものを」という記載だったものが、現在は「掛け布団は使用せず、服装で温度調整を」に変わっています。では、どのように温度調整をすればいいのでしょうか。「暖房の活用」と「服装」の観点から、温度調整のコツを紹介します。

温度調整のコツ①暖房を活用する

そもそも、子どもが寝ているときに快適だと感じる温度は、20~22度だといわれています。

大人にとって肌寒いと感じるくらいが子どもの睡眠時には適温ですが、夜の温度がそれを下回る場合は暖房を活用しましょう。就寝前は23度くらいに設定して部屋を暖めておき、夜中は少なくとも18~20度くらいを保つようにしてください。

子どもが朝4~5時に起きてしまう場合は、寒さが原因かもしれません。寝る前に暖房を切っている場合は、朝3時台にタイマーで暖房を使うのがおすすめです。

ただ、「適温が20~22度」というのは、あくまでもひとつの目安。部屋の位置や方角、エアコンの設置場所、子どもの平熱によっても変わるので、次のポイントを参考に我が家の環境が快適かどうかをチェックしてみてください。

〈子どもが暑がっているときのサイン〉
・子どもが夜中に起きたとき、背中や頭に汗をかいている
・子どもが怖い夢を見たり、夜中に「ギャーッ」と叫び声を上げて起きる

〈子どもが寒がっているときのサイン〉
・子どものお腹や背中が冷たくなっている

このような状態が見られたら、温度を1度上げる・下げるなどして、調整してみましょう。

ちなみに、湿度は40~60%がベストです。秋冬は乾燥しがちなので加湿器の使用をおすすめしますが、ない場合は濡れタオルを寝室に干したり、湯を入れたボウルを置いておくのでもOKです。

温度調整のコツ②月齢や温度に合った服を着せる

掛け布団は使用せず、かわりにおくるみやスリーパーでうまく温度を調整します。「新生児~6ヵ月」「6ヵ月~1歳すぎ」それぞれでおすすめの服装を次にまとめました。

〈新生児~6ヵ月〉

おくるみとスリーパーが一体化した「おくるみスリーパー」がない場合は、通常のおくるみでも構いませんが、正しく着せないとほどけて窒息事故につながる可能性もあります。そのため、基本的にはおくるみスリーパーをおすすめします。

〈6ヵ月~1歳すぎ〉

「6ヵ月~1歳すぎ」の子どもには、肌着やパジャマの上にスリーパーを着せます。私が開発したスリーパーは、着たままオムツ替えができますし、着心地が良いのでおすすめです。

「新生児~6ヵ月」「6ヵ月~1歳すぎ」いずれの場合も、夜中、寝ているときの室温が20度以下になる場合は、「室温20度以下の場合」の服装を着せて寝かせましょう。

素材は基本的に綿100%のものがおすすめです。肌触りも良いですし、通気性にも優れているので、“温めすぎ”防止にもつながります。

発症リスクを下げる「寝返り返り」の練習法

寝返ってうつぶせから仰向けに戻る「寝返り返り」の練習をするのも、乳幼児突然死症候群の予防につながると愛波さんはいいます。

「寝返り返りができるようになれば、うつぶせ寝のままにしておいても良いとされています。そのため、日頃から寝返り返りの練習をするといいでしょう。

練習は、日中に行います。子どもがマットの上で寝返りをしてうつぶせの状態になったら、子どもの体を手でサポートしながら、くるんと体を返してあげましょう。このとき、子どもを一度持ち上げてから寝返り返りをさせるのは練習になりません。必ずマットの上で一連の動作を行うようにします。

また、腹ばい遊び(タミータイム)をするのも、寝返りと寝返り返りの練習になります。腹ばい遊びのやり方は、マットの上に子どものお腹が接するように置きます。もしくは、ママやパパが仰向けに寝て、胸の上やお腹の上などに子どもをのせて行ってもOK。そして、名前を呼んだり、おもちゃを使ったりして、子ども自身で頭や顔を持ち上げられるように誘導しましょう。

なお、腹ばい遊びをするときは、安全のためにも必ず大人の監視のもとで、行うようにしてください」(愛波さん)

心配な場合は、ベビーモニターを設置

子どもの睡眠中の様子が気になって、安全かどうかをこまめにチェックしに行ってしまうこともあります。こうしたときには、ベビーモニターが役立ちます。

「子どもが安全な状態で寝ているかどうかをチェックできるので、ベビーモニターはおすすめです。ただ、あまりにも気になって四六時中見てしまうというタイプのママ・パパにはおすすめできないので、性格やライフスタイルに合わせて取り入れるかどうか判断してください」(愛波さん)

家族みんなが幸せでいるためには、ママ・パパもしっかり休むことが大切です。  写真:アフロ

「私はみなさんに安全な睡眠環境を保ち、親子ともに安心して質の良い睡眠がとれるようになってほしいと思っています。ちょっとした知識で大切な命を守ることができますので、ぜひ新しいガイドラインをもとに睡眠環境を見直してみてください。

なお、『掛け布団がないので、寒すぎるのではないか』と心配して、服を着せすぎるのも注意が必要です。子どもの体に熱がこもってしまうと、高体温(うつ熱)になって乳幼児突然死症候群の発症リスクが上がるので、暑くなりすぎないように気をつけましょう」(愛波さん)

新たなガイドラインが発表された2024年度。今一度、アップデートされた正しい知識を知り、安全な睡眠環境を整えることで、大切な子どもの命を守りましょう。

─◆─◆─◆─◆─◆─◆─

◆愛波 あや(あいば あや)
乳幼児睡眠コンサルタント。国際資格認定機関・IPHI日本代表。Sleeping Smart Japan株式会社代表取締役。
出産後、自身が夜泣きや子育てに悩んだことから米国で乳幼児の睡眠科学の勉強を始め、現在は日本を代表する乳幼児睡眠コンサルタントとして、400名以上の乳幼児睡眠コンサルタントを育成。また、ママ・パパ向けに睡眠・子育て・教育についての質問に答え、情報を配信する「愛波子育てコミュニティ」を運営。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本(講談社)』『マンガで読む ぐっすり眠る赤ちゃんの寝かせ方(主婦の友社)』『忙しくても能力がどんどん引き出される 子どものためのベスト睡眠(KADOKAWA)』、監修書に『ママにいいこと大全(主婦の友社)』がある。

取材・文/阿部雅美

参考書籍/『ママと赤ちゃんのぐっすり本』(講談社)

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