ダウン症息子の担任教師「癇癪の原因は発達障害かも」と衝撃発言!?さらに母親の特性まで指摘され…
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
終わらない反抗期?癇癪がずっと続いているダウン症息子
昨年は小学3年生だったきいちゃん。
以前からきいちゃんは癇癪が強く、手を焼いていましたが、これもダウン症の子どもの特徴なのかと半ば受け入れ半分、諦め半分で子育てをしていました。しかし、ちょうどこの頃、きいちゃんはますます癇癪がひどくなり、全く言うことも聞いてくれず、それどころか、ワザと反対なことをします。反抗期か……?と思ったのですが、それを言ったらずっと反抗期が続いているきいちゃん。「もう、いい加減にして!」と、声を荒げてしまったことも正直、数えきれないほどありました。
格闘する毎日に疲れてしまい、学校の担任の先生に相談させていただいたりもしていました。そうして、3年生の1学期の個人面談の日がやってきました。
学校の個人面談で言われた衝撃的なこと
その頃も問題行動の多かったきいちゃん。当然、それをどう解決していくかの相談になります。きいちゃんの問題行動は家だけではなく、もちろん学校でもありました。
そして担任の先生が真剣な顔で一言、
「お母さん、ショックを受けないでほしいのですが……」
「はい……」と私。
「きいちゃんの特性はダウン症だけではないかもしれません」と先生。
(へ?どういうこと……??きいちゃんはダウン症という確定診断を受けてるんだけど……はて?ダウン症だけではないって……??)と思っていると、
「きいちゃんの様子を見ていると、ダウン症の特性というよりも、ADHD(注意欠如多動症)の特性に似ているのでは……と感じることが度々あります。最近の問題行動ももしかしたらそうした特性が関係している可能性も考えられるかもしれません」
「…………はっ!?!?!?………」
ADHD(注意欠如多動症)ってあの発達障害で有名な?でも、今までそんな診断されたことがなかった……。
まさかのADHD(注意欠如多動症)⁉
「お母さん、きいちゃんはこれでもすごく成長しているんです。実は1年生の時は1時間も椅子に座っていることができなかったんです。それが、今年から1時間座っていられるようになってすごく成長しています。でも、やはり多動なところや感情を制御できないところがあ
って、それはもしかしたらADHD(注意欠如多動症)などの特性からきている可能性もあるのかもしれないと……」
感情を制御できない……そういえば、きいちゃんは生後3か月くらいから私がうまくミルクがあげれなかったら怒ったりして、こんなに怒りっぽい赤ちゃんっているんだって驚いたことがあったな……。
それにダウン症の子は癇癪が強い子が多いと言われているけど、それでもきいちゃんの癇癪っぷりは飛びぬけて、なぜダウン症でもきいちゃんだけこんなに癇癪がすごいんだと悩んでいた……問題行動だってそう言われてみれば、納得のいくこともある……と、脳内のシナプスが繋がりまくり、点が線になっていろいろな答え合わせができていく私。
そして先生は、最後に衝撃的なことを言われたのです。
「え⁉私っ⁉⁉」先生からさらに驚愕な一言が……!
「そしてお母さん、またショックを受けないでほしいのですが……」と先生。
「は、はい……」と私。
「私は専門家ではないので、こんなことを申し上げるのは本当によくないのですが……ADHD(注意欠如多動症)などは、遺伝的な要因も関係することもあると言われています。……実はお母さんにも似たような傾向があるのではと思って……」(※)
「え……?似たような傾向って……私にも、ですか……?」
「そうですね、お母さんの普段の様子を拝見していても、なんとなく共通する部分があるように感じることがあります。ただ、あくまで私の個人的な印象なので、もし気になるようでしたら専門の先生にご相談されてみてもいいかもしれません」
「…………私っっ!?!?!?………」
きいちゃんの話から、いきなり私の話になってしまいました。
きいちゃんだけでなく、私がADHD(注意欠如多動症)!?!?ちょっと待って、きいちゃんにはダウン症だけではなく、ADHD(注意欠如多動症)という発達障害もあって、その親でもある私もADHD(注意欠如多動症)という発達障害があるかもしれないってことーーーー………!?!?
あまりに驚愕な個人面談に突入してしまいましたが、この続きはまた後日書ければと思っています。
(※)ADHD(注意欠如多動症)の遺伝について:現段階では親からの遺伝が原因となって発現する可能性を確率によって表すことはできませんが、ゼロであるとは言い切れないと考えられています。
執筆/星きのこ
(監修:鈴木先生より)
医師以外の人が疾患名を告知してはいけないルールになっています。ただ、「いくつか行動面で気になるところがあるから、かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか」などと普段関わる先生や支援者の方が、やや濁した言い方で保護者が気づけるよう伝えることはよくあります。保護者が気づいた時点が早期発見ととらえればいいのです。
きいちゃんはダウン症だったわけですが、何か一つの病気が診断されるとそれだけに目がいってしまいがちです。この現象は主治医でも同じで、てんかんや悪性腫瘍など診断を付けると問題の症状を併存と考え、第2の診断がつけられないことが多々あります。その問題の症状が専門外ならなおさらです。それが時によっては今回のように学校の先生が気づくことがよくあります。私がいつも言う子どもを見るセンス(知識と経験)のある先生です。運とタイミングで左右されます。きいちゃんはいいセンスを持った先生に巡り合えてラッキーだったのです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。