銃撃に合った負傷者のもとへ向かう、新米救急隊員とベテラン隊員の出会いを描く『アスファルト・シティ』緊迫の本編シーン
「第76回カンヌ国際映画祭」コンペティション部門出品を果たした『アスファルト・シティ』が、6月27日(金)より公開される。このたび、タイ・シェリダン演じる初々しい新米救急隊員のクロスと、ショーン・ペン演じる百戦錬磨のベテラン隊員ラットの衝撃的な出会いを描いた本編映像が解禁となった。
NYハーレムの救急医療現場のリアルを描く
犯罪と暴力が蔓延るニューヨーク、ハーレム。その危険地帯を縦横無尽に駆け回る者たちがいる。出動命令を受けるやいなや、命を救うために飛び出して行く救急救命隊員だ。彼らを待ち受けるのは、ギャングの抗争、ドラッグを巡る銃撃戦、オーバードーズ、DV、言語の通じない人々の争い——まさにこの世の〈地獄〉と呼ぶべきハーレムの救急医療現場。その知られざる〈リアル〉に肉迫する、緊迫の没入型スリラーが誕生した。
腕利きのベテラン救急救命隊員の主人公ラットを演じるのは、『ミスティック・リバー』『ミルク』で2度アカデミー賞主演男優賞を受賞した、名優ショーン・ペン。ラットの相棒となるもう一人の主人公・新人隊員のクロスには、『X-MEN』シリーズ、『レディ・プレイヤー1』のタイ・シェリダン。主演の二人は製作総指揮も兼任、撮影前に救急車に同乗して救急救命隊と行動を共にし、役作りを超越した体験を全身に叩き込んだ。さらに、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのキャサリン・ウォーターストン、『ラストデイズ』のマイケル・ピット、元プロボクサーのマイク・タイソンら個性派キャストがハーレムの街で力強く生き抜く人々を演じる。
監督は、「カンヌ国際映画祭」ある視点部門に出品された『ジョニー・マッド・ドッグ』や『暁に祈れ』など、バイオレンスをテーマに社会と人間のダークサイドに真正面から斬り込む容赦なき作家魂で高く評価されるジャン=ステファーヌ・ソヴェール。元救急救命隊員が書き上げた原作を基に、“救急現場で闘う英雄たちに捧げる”ため、決して目を背けてはならない真実の物語として結実した映画『アスファルト・シティ』。登場人物たちと共に衝撃の125分をくぐりぬけた私たちが、最後にたどり着く光とは——?
泣き叫ぶ声やいくつものサイレン音が混じりあう騒々しい中をかき分けて、銃撃に合った負傷者のもとへ行くクロスとラフォンテーヌ(マイケル・ピット)。汗と血が止まらず、時々刻々と弱っていく負傷者を目の前に呆然とするクロスに、上司のラフォンテーヌはイラついて「新人とじゃ対応できない」とベテラン隊員ラットに助けを求める。代わりに入ったラットは、負傷者に対して「持病はあるか?」「銃声は何発聞こえた?」と意識が途絶えないよう声をかけ続けながら慣れた手つきで処置を施していく。ブルックリンの騒々しい音に負傷者の浅い呼吸とクロスのアドレナリンのでた小刻みな呼吸が混じりあう。そして傷口を止血するために、圧迫包帯を巻いた時の悲痛な叫びによって凄まじい緊張感がほとばしるシーンとなっている。
映画冒頭で描かれるこのシーンは、本作を作るにあたってジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督がリサーチのために救急救命隊の仕事を体験していたブルックリンのワイコフハイツ病院で実際に目の当たりにした事例だ。「リサーチのために救急車に同乗していたところ、夜中に銃撃戦の通報が入ってきました。所々からパンパンパンと聞こえてきて、独立記念日だったのもあってどこかで花火を打ち上げている音かななんて思っていたのですが、救急隊員の方に『あれは、まだ銃撃戦がつづいているんだよ』と言われてとても驚きました。落ち着くまでしばらく隠れていました」と7月4日のアメリカ独立記念日での経験が元になっていることを明かした。
ペンとシェリダンは「医療従事者を演じる」のではなく「医療従事者になる」べく、撮影までの2か月間、週3~4日この病院で救急隊員と夜勤の救急車に同乗しトレーニングを重ねた。日中には約5時間、教室での臨床実習、そして心肺蘇生法、挿管、点滴の方法などを一緒に学び、技術的なプロセスを習得した。2人は「この映画を通して医療に携わる人々の人生がどのようなものなのか、彼らが背負っている重荷について理解してもらえることを願っています」と医療従事者への敬意を表した。
本作のサウンドデザインをしたのは、『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』(2019)をはじめ数々の音響賞を受賞したニコラス・ベッカーと、ギャスパー・ノエなど多くの監督が信頼を寄せるケン・ヤスモト。登場人物と一体化し混沌としたサウンドスケープで、観る者を没入感に誘う音響にも注目だ。
『アスファルト・シティ』は6月27日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開