【世にも奇妙な韓ドラ】 狂気のサイコパスがあなたのタクシーに乗ったら?Netflix「運の悪い日」
4月18日、Netflix(ネットフリックス)で『運の悪い日』(TVING, tvN/2023)の配信がスタートした。
約2年前の作品で新作ではないが、同VODのラインナップに加わったのをきっかけにご覧になった人もいるのではないだろうか。
もし“超長編映画”というジャンルがあるなら、本作がまさにそれ。サスペンススリラー映画顔負けの緊張感のなかで、映画よりも長尺のドラマだからこそ描くことのできる深みのあるストーリーが満足感の高い1作だ。
運の良い1日だと思っていたが、実は人生最悪の日を迎え平凡な日常が地獄と化した1人の男の顛末はいかに。良い夢が最悪の出来事を呼び寄せた、皮肉かつ奇妙な物語をご紹介。
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ざっくりあらすじ
ストーリーは、優しくお人好しなタクシー運転手テクが、長距離客を乗せたのをきっかけに悲劇がスタートする。長距離というだけもラッキーだが、倍以上の運賃まで支払うというから、お金の工面に困っていたテクにとってはまたとない話。
金運をもたらすという豚の夢で目覚めたその日、お客が朝から途切れず上機嫌で仕事をしていた彼に訪れた最大のプレゼントのような乗客に思えた。
しかし実は彼が乗せたのはサイコパスな連続殺人犯ヒョクス。4時間半かかる目的地まで背筋が凍るような過去の殺人談を聞かされながら行くことになり、最終的には人生を大きく狂わせる事態へと発展していく。
密室スリラーと俳優の熱演
序盤の見どころはなんと言っても、密室で繰り広げられるスリラー劇。最初は、まさかと思いながらも冗談程度にヒョクスの話を聞いていたテクだったが、徐々に彼の話が真実であることが分かっていき、タクシーという空間の中で張り詰めた空気が流れる。
危険を感じ恐怖心が増幅、逃げなければと必死になるテクの心理と、それに対して常軌を逸している側面を淡々と露わにしていくヒョクス。各キャラクターに扮したイ・ソンミンとユ・ヨンソクの熱演によって2人の相対関係が如実に描かれ、客と運転手から殺人鬼とターゲットにされた男へと関係性が変化する過程が印象的だ。
そして以降、テク自身が大惨事を招いたのか、もともとそうなる運命だったのか、どこでどうなったのか分からなくなる謎を呼ぶストーリーが視聴者の関心を引く、奇妙で悲しすぎる壮絶な人生が本格的にスタート。
一見メインに思えるほどの完成度の高いタクシー内の話は全てではなく、ただの序章に過ぎない。後半にいくほど観る者を唸らせる魅力を放ち、最終話まで目が離せない展開が繰り広げられる。
スリラーで終わらない魅力
それに加え、単なるスリラーに終わらないのも視聴者を釘付けにするポイント。テクが驚くほどのお人好しであるのが各エピソードにおいて核を成している。善良すぎると言っても過言ではない人間が絶対悪と出会い、生きていくのも辛いほどの経験をした時、悪に染まってしまうのか。
優しすぎるあまり損をしてきた自身の過去を振り返りながら、自分の在り方について考える姿が印象的で、韓国ドラマは大抵、復讐の化身と化すケースが目立つがテクが何を選択するのかご注目。少しずつだが、変化していく彼の言動をじっと見守りたくなるだろう。
そしてそんな彼が最後に、涙を流しながら「ありがとう」と噛みしめるように言った言葉の真意はどこにあるのか。実際にご覧いただきたい。
その他にも、幸運と不運、運命と偶然がそれぞれ紙一重であるといわんばかりに、人生の皮肉を描いている点や、“善意”をあざ笑うかのような構成、そして警察が持つ公権力の限界など社会的メッセージも視聴ポイントとなっている。
全体的にそれとなく要点をほのめかすだけで考える余白を多く与えるストーリーになっており、観る者の経験や考え方によってそれぞれ異なる解釈をプレゼントしてくれるだろう。
あなたは何を感じるだろうか。放送回を追うごとに面白さを増していくため、夜更かしにはご注意を!
(ライター/西谷瀬里)