石破おろしが「命がけの政治闘争になっていない」理由
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、7月31日の放送にノンフィクション作家の常井健一が出演。なぜ石破茂首相は参議院選挙の結果を受けても辞めないのか、その理由を解説した。なお今週、長野智子は夏休みとなっている。
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「『石破、辞めろ』『石破、辞めるな』の大合唱が全国的に起きているのか、永田町でだけなのか。わからないところもありますが、これからの政治、政局はどうなっていくのか語っていただきます。まず参議院選挙の結果をどうご覧になりましたか?」
常井健一「石破自民党は土俵際で踏みとどまった、という率直な感想です。選挙結果についても、退陣をめぐる政局でも踏みとどまっていると。そういう評価なんですけど、リスナーさんからしたら『惨敗したのに何言っているんだ』と思われるかもしれません。確かに自民党は与党過半数割れを起こしました。ただ冷静に見れば、あと3人で過半数回復なんです」
鈴木「はい」
常井「二階さんを倒した和歌山の保守系無所属の方(望月良男氏)がきょう、除名になったんです。この方を『入党はさせないけど』というかたちで1人確保したと考えれば、あと2人確保すれば必達目標達成なんですね」
鈴木「会派を組めばいいと」
常井「あとはいつも自民党と行動を共にしてくれるような枠組みがつくれれば。3人を確保するハードルはそんなに高くない。残り2人についてもある程度、目星がついているといわれています。さらに地方の1人区で惨敗が予想されていましたが14勝18敗でした。負け越しなんですけど、自民党での最悪のシナリオは2007年の第1次安倍政権のとき。6勝23敗だったんですね」
鈴木「そんなに負けていましたか」
常井「それよりも8勝している。終盤の情勢調査と当日の出口調査では、8つの1人区で劣勢だったのが逆転勝利するかたちになったんです。自民党視点からすると」
鈴木「先日、番組(選挙特番)を0時(24時)までお届けしました。そのあと滑り込みセーフみたいな感じで」
常井「そう。いくつか挙げると福島、栃木、群馬、岐阜、岡山など。実際、選挙に関わっている人に聞くと投票箱のフタが閉まるまで粘りに粘って巻き返しを図った、という話をけっこうされていて。野党候補にかなり水をあけられた新潟でも1ポイント差まで来た。宮崎でも0.9%まで追い詰めた。投開票中の選挙特番のとき自民党本部はお通夜みたいな感じでしたが、22時ぐらいから雰囲気が変わっていった、とも聞いています」
鈴木「なるほど」
常井「自民党県連、地方の組織にとっては『おらが保守王国でこんな苦戦はあり得ない』『石破さんはとんでもないことをしてくれた』という怒りがあるけど、党本部の視点で全国を俯瞰すると、思ったより負けていないよ、というところなんです。だから自民党の石破さんの続投意向と地方の自民党組織との間にあるギャップとは、こうした景色の違いなんですね。動きを見て皆さんもモヤモヤを感じていると思いますけど」
鈴木「はい」
常井「このモヤモヤの原因は、自民党の国会議員が抱いている危機感が『自民党は負けたと言いきれないけど』という条件付きの反省であることなんですね。一種の正常性バイアスにかかっていて。実態としてはもう無党派層に見向きもされない政党になっているけど、俺たちはまだ大丈夫だ、と思い込んでいる、というのが自民党の国会議員の深層心理にあって。石破おろしが命がけの政治闘争に至っていないわけです」