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猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】

いぬのきもちWEB

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで感じた何気ないことを語ります。
最近、『のぼりべつクマ牧場』の歴代ボス紹介(サチオ)に「道路際で猫に襲われているところを保護される」とあるのがXで話題になっていたから覗いてみると、たしかにそう書かれていた。「熊が猫に襲われる」というと驚くが、おそらくこのケースは、後に「人工哺育などを経て」とあるので子熊だったのだろう。

猫は熊より強い?


猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


生後どのくらいか分からないが、子熊とはいえ、たぶん猫は自分より大きな相手に襲いかかっていたのだろう。ただ、そのことにはあまり驚かない。なぜなら、先代犬の『富士丸』を迎えた頃の、妻(当時の)が飼っていたロシアンブルーの「イクラ(メス)」の態度を見ているからだ。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


イクラは体重2キロほどで、生後2カ月で迎えた富士丸より体は小さかったが、圧倒的にイクラの方が強かった。仲良くなりたい子犬富士丸が近寄ると、イクラは猫パンチで追い払っていた。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


その後、富士丸はすぐに大きくなり、20キロを超えるくらいになってもその力関係に変わりはなかった。椅子の上でくつろぐイクラに富士丸が近づくと、ペシッと頭をたたかれていた。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


体力的にまともにやれば圧倒的に富士丸の方が強いはずだが、なぜか体重2キロのイクラにいつもたたかれてシュンとしていた。でもイクラも本気ではなく、たたくときも爪は立てていなかった。でかい弟分と思っていたのか。

猫の気丈さは犬とは違う?


猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


ちなみに猫と熊に話を戻すと、大人の熊にも猫はひるまないらしい。YouTubeでは、ロシアで飼い主を守るために熊に立ち向かう猫の動画もあった。飼い主を守るために猫がそこまでやるかは怪しいが、おそらく自分にとって敵とみなしたのだろう。猫は本当に気丈というか、気が強いというか。飼い主に対しても自分が嫌なことなら屈することはなく、従順になることはない。そのあたりが犬と大きく違う。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


そもそも猫が人間と暮らすようになったのは、ネズミを狩ってくれるからという説がある。ネズミを狩るのは猫の本能なので、猫は己を変えていない。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


対して、犬は人間に仕事を与えられ、それをより効率よくこなすために品種改良されてきた歴史もある。犬は犬で、与えられた仕事を一生懸命こなし、ほめられることに喜びを感じる。猫は頼み込んでもそんなことしてくれない。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


現代の犬は仕事を与えられていないが、何かをしてほめられたり、ごほうびをもらったりするために従順になる。大吉と福助には何も教えていないし、呼んでも来ないことなどしょっちゅうなので、犬なのにやや猫っぽいところがある。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


でもやっぱり猫とは気質が全然違う。たとえばネズミに対してである。八ヶ岳にボロ山小屋を手に入れた当初は、夜な夜な屋根裏からネズミが走り回る音が聞こえた。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


管理事務所に相談すると、「犬がいるんですよね? ならネズミも怖がってそのうちいなくなると思いますよ」とのことだった。たが、ネズミは夜中に屋根裏を走り回り続けた。その音に私が目を覚ますと、大福は隣で爆睡していた。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


その後、山の家を少しずつ修繕、リフォームしていく中で、屋根裏をクローゼットにしたので、以来ネズミが走る音が聞こえなくなった。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


2023年11月には山に完全移住したが、ようやく家の中からネズミは出ていったようだった。さすがに毎日犬がそばにいるとネズミも居心地が悪いのか。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


そう思っていたが、先日、玄関下にある屋外の物置きスペースを大掃除していると、小さいネズミが1匹大慌てで逃げて行った。そしてすぐ後からもう1匹出てきて、慌てふためきながら走り去った。どうやら、そこに巣を作って長いこと生活していたっぽい。毎日、朝夕大福と散歩に行く度に通る通路のすぐ横で。

猫に比べて大福は【穴澤賢の犬のはなし】


しかしこれまで、大吉と福助がその場所に興味を示したことは1度もない。猫だったら速攻で狩られていたと思うが、大福は平和主義なのかもね。

プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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