【ゴッホ映画】今すぐ観られるおすすめ配信作品3選!芸術家の見た世界を体感
「炎の画家」と呼ばれるフィンセント・ファン・ゴッホ。彼が見つめた世界は、なぜこれほどまでに私たちの心を揺さぶるのでしょうか。 情熱的な色彩、大胆なようで繊細な筆づかい、そして孤独と希望がせめぎあう人生。ゴッホの作品には、彼が感じた世界そのものが生きています。 そんなゴッホの世界に、映画を通して触れてみませんか? 今回は、配信で手軽に楽しめるゴッホ関連映画の中から、特におすすめの3作品を厳選しました。美しい映像と心揺さぶるストーリーが、あなたを「ゴッホの世界」へと誘ってくれるはずです。
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ゴッホが見た世界とは?
ゴッホと聞いて思い浮かぶのは、《ひまわり》《星月夜》《夜のカフェテラス》といった代表作ではないでしょうか。鮮やかな色彩と独特の筆づかいが、彼の感性をそのまま映し出しているようです。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《星月夜》(1889)/ニューヨーク近代美術館
生き生きと咲くひまわり、夜空に瞬く星、静かに光るカフェの灯り。どれも日常の風景なのに、ゴッホの目には他の誰とも違う輝き方をして見えていたのかもしれません。
もともとは聖職者を目指していた彼にとって、絵を描くことは生きる実感そのもの。孤独と情熱を胸に、弟テオの支えを受けながら、精神の病と闘い、自分だけの世界を作品に刻みつけていきました。
ゴッホの作品に向き合うとき、「彼には世界がこう見えていたんだ」と想像してみると、絵の語りかけてくる声がぐっと近くに感じられるはずです。
ゴッホ作品の特徴と見どころをより深く知りたい方は、ぜひこちらもご覧くださいね。
オランダのポスト印象派画家ゴッホの人生とは?特徴と見どころ解説
オランダが誇るポスト印象派の巨匠ゴッホは、大胆な色遣いと独特な筆致で知られる画家です。日本の美術に親しんだことでも知られ、ゴッホの作品には多くの日本からの影響が見られます。
ゴッホの世界に浸れるおすすめ映画3選
フィンセント・ファン・ゴッホ 《夜のカフェテラス》(1888)/クレラー・ミュラー美術館
孤独と情熱に突き動かされながら、名作を生み出し続けたゴッホ。その短くも濃密な人生は、多くの映画で描かれてきました。
ここでは、ゴッホの内面や創作の裏側に迫るおすすめの3作品をご紹介します。スクリーンを通して、彼の世界に少しだけ入り込んでみませんか?
①『ゴッホ:天才の絵筆』(2009)10年間の画家人生を辿るアートドキュメンタリー
参照:https://filmarks.com/movies/2817
27歳で初めて油絵を描き、37歳でその生涯を閉じたゴッホ。『ゴッホ:天才の絵筆』は、わずか10年間に2000点以上の作品を生み出した彼の軌跡を、手紙と絵画を手がかりにたどるドキュメンタリー映画です。
ゴッホの心の声を届けるのは、フランスの名優ジャック・ガンブラン。2002年、映画『レセ・パセ 自由への通行許可証』でベルリン国際映画祭男優賞を受賞した彼が、本作ではナレーションを担当し、声だけで孤高の画家の人生をじっくりと描き出しています。
物語を進めるのは、研究者エレン・バクイス。弟テオに宛てた約900通もの手紙を翻訳しながら、耳切り事件やテオとの深い結びつき、画家としての試行錯誤と成長の過程を、静かに語っていきます。
狂気的なイメージが先行しがちなゴッホですが、本作では、技術の向上を真剣に求め続けたひたむきな姿が印象的です。絵具を塗るのではなく、線を引くように筆を動かす独自のスタイルにたどり着いたとき、彼は「ようやく自分の道を見つけた」と語りました。作品では《4本の切ったひまわり》を映しながら、その創作の喜びが丁寧に描かれています。
また、手紙の書き損じをめぐるちょっとした笑いのシーンや、南仏アルルでの孤独な制作の日々など、人間味あふれるエピソードも随所に登場します。乾いた風が吹き抜けるアルルの風景に、ゴッホの孤独な息づかいだけが残っているような映像演出も心に残りました。
クライマックスでは、晩年の自画像とともに、燃え尽きるように絵を描き続けたゴッホの最期が語られます。孤独と疲労の果てに命を絶った彼ですが、その魂はいまも作品の中に生き続けている。そんなメッセージが、静かに、でも確かに伝わってきます。
上映時間はわずか39分ですが、短さを感じさせないほど、ゴッホの世界に深く入り込める1本となっています。「ゴッホに軽く触れてみたい」「作品の背景を知りたい」という方におすすめしたいドキュメンタリーです。
②『ゴッホ 真実の手紙』(2010)手紙で回顧する兄弟の伝記的ドキュメンタリー
参照:https://filmarks.com/movies/61644#goog_rewarded
ゴッホの創作活動の裏には、絶えず彼を支え続けた弟テオの存在がありました。テレビ用映画としてイギリスBBCによって製作された『ゴッホ 真実の手紙』は、そんな兄弟の深い関係性に焦点を当てたドキュメンタリーです。
物語は、彼らが交わした多くの手紙を中心に進んでいきます。画家になる前のゴッホが画商として働いていたこと、職場を追われて牧師を志したこと、実らぬ恋に悩んだこと……。芸術家という華やかなイメージからは想像もつかない、孤独と苦悩に満ちた日々が描かれます。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《ジャガイモを食べる人々》(1885)/ファン・ゴッホ美術館
印象的なのは、手紙からにじみ出る言葉の率直さです。ゴッホは芸術への迷いや貧困の現実、自分の心の状態までも、包み隠さずテオに打ち明けていました。読み進めるうちに、まるで親しい友人の秘密を知るような、深い共感が芽生えてくるかもしれません。
この作品では、再現ドラマとドキュメンタリーの手法が融合しています。主演のベネディクト・カンバーバッチがゴッホ役を演じ、観る人に語りかけるような演出は、視覚的にも聴覚的にも強い印象を残しました。時代背景や兄弟の心の距離感までリアルに感じられ、ドキュメンタリーでありながら、1つの物語として没入できる構成になっています。
「ゴッホの人生をざっくり知りたい」「まずは人となりを知る入口がほしい」という方には、特におすすめの作品です。
③『永遠の門 ゴッホの見た未来』(2018)スクリーンに再現される彼の視点
第75回ヴェネチア国際映画祭でワールドプレミアを飾り、ウィレム・デフォーが男優賞を受賞。さらにアカデミー賞主演男優賞にもノミネートされたことで、大きな話題となったのが『永遠の門 ゴッホの見た未来』です。
この作品は、ゴッホの人生そのものというよりも、彼の視点、つまり世界の見え方や感じ方に焦点を当てます。「見ること」を映画のテーマに設定し、新たな表現に挑んだのは、画家でもあるジュリアン・シュナーベル監督です。
画面を通じて体験できるのは、ゴッホが見ていたであろう感覚の世界。光がゆらぎ、色が溶け合い、風景が揺れるように映し出される映像表現は、観る人を静かにゴッホの眼差しの中へと引き込みます。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《医師ガシェの肖像》(1890年)/オルセー美術館
主演のウィレム・デフォーも圧巻の演技を披露しています。セリフは少なく、表情や目の動き、身体の揺れといったわずかな動きだけで、苦悩と希望のはざまで生きた画家の内面を映し出しました。彼の存在感が、この作品にリアリティと静かな迫力を与えています。
映し出されるのは、芸術の喜びだけではありません。精神的に不安定になりながらも、描くことをやめなかったゴッホの姿が、時に幻想的に、時に痛々しいほどリアルに描かれます。
感受性の強い方にとっては、彼の苦しみや孤独があまりにも強く迫ってくるかもしれません。それでも、この映画でしか味わえない体験がきっとあるはずです。
目に映る風景の美しさと、その奥にひそむ痛み。その両方を感じながら、ゴッホの見た未来に少しだけ近づいてみるのはいかがでしょうか。
映画と展覧会で体感するゴッホの軌跡
ゴッホが見つめた風景や感情のゆらぎは、今を生きる私たちにもどこか響くものがあります。ご紹介した3本の映画を通して、彼の見た世界に少しだけ触れることができるかもしれません。
2025年9月からは、日本でもゴッホの傑作が間近で鑑賞できる「大ゴッホ展」が開催予定です。オランダのクレラー=ミュラー美術館から名作《夜のカフェテラス》など約60点が来日し、ゴッホの画業を初期から晩年まで時系列でたどる構成となっています。
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映画で心を動かされたあと、実際の作品を目の前にすると、きっと感じ方もまた深まるはずです。映像と実物、それぞれの体験があなたの中で交差し、ゴッホの世界をより鮮やかに立ち上げてくれることでしょう。
まずは気になった作品から、気軽にゴッホの旅をはじめてみませんか?
参考文献
『ゴッホの地図帖 ヨーロッパをめぐる旅』ニーンケ・デーネカンプ、ルネ・ファン・ブレルク、タイオ・メーデンドルプ(著)、鮫島圭代(訳)、千足伸行(監修)(講談社、2016)