投手4冠も視界の阪神・才木浩人は何が良くなったのか?データから見えてきた進化
8勝2敗、勝率8割、防御率1.11、85奪三振でタイトル独占の可能性も
ハーラーダービートップの8勝を挙げている阪神・才木浩人が7月2日の広島戦(マツダスタジアム)で7回1安打無失点の快投を見せた。
味方打線も森下暢仁に封じ込まれて延長までもつれたため(結果は3-0で勝利)勝ち星こそつかなかったものの、防御率はリーグ2位の1.11にアップ。8勝2敗で勝率.800はリーグ3位、85奪三振はリーグトップを走っており、投手4冠も視界に入っている。
須磨翔風高からドラフト3位で入団して8年目。2年目の2018年に6勝を挙げ、2020年にトミー・ジョン手術を受けてブランクを余儀なくされたが、2022年に4勝、2023年に8勝と着実に成績を伸ばしている。
今季ここまで良くなった要因はどこにあるのだろうか。データから分析した。
割合増えたスライダーの被打率は大幅に良化
昨季までの才木の持ち球はオーバースローから投げ下ろすストレートと落差の大きいフォークを主武器に、スライダー、カーブを織り交ぜる投球。しかし、今季はフォークとスライダーの割合が逆転し、スライダーが13.4%から22.6%に増加、逆にフォークは23.4%から21.4%に減少している。
スライダーの被打率はさらに大きな変化がある。昨季は被打率.478、被本塁打2だったが、今季は被打率.059、被本塁打なし。フォークの被打率.147、カーブの被打率.235と比べても、変化球の主武器はスライダーになっているのだ。
球速はストレートが平均で1.1キロ、スライダーが3.3キロ、カーブが6.5キロ低下。スライダーとカーブは鋭さを増した分、スピードは落ちたということなのか。ストレートとカーブの平均球速差は約40キロあり、昨季より緩急の幅も広がっている。
昨季に比べると、球速がやや落ちて被打率も悪化したストレートの割合を減らし、鋭さを増して被打率が良化したスライダーとカーブの割合を増やしている全体像が浮かび上がってきた。
ゴロが増え、対右打者の成績も改善
続いて対戦打者の打球性質も比較してみよう。打たれた打球をゴロ、ライナー、フライ、外野フライ、内野フライに分類したのが下の表だ。
わずかではあるものの、昨季より今季の方がゴロの割合は増え、ライナーとフライは減っている。これもスライダーとカーブの効果と見てよさそうだ。
そこで打者の左右による成績を比較したのが下の表だ。
やはりスライダー、カーブの効果だろう。対右打者の被打率が昨季の.226から今季は.172と大幅に改善されている。右打者から逃げていくスライダーとカーブが有効なのは明白だ。
189センチの長身右腕の才木は角度のあるストレートと落差の大きいフォークという縦の変化で攻めるタイプだったが、今季はそこに横の変化が加わったことで成績を伸ばしていると見ていいだろう。
雨天中止の影響もあって、交流戦明けから火曜日の先発ローテーションで回っている。これまでは日曜日でカード3戦目だったが、これからはカード初戦でエース級との投げ合いも増える。阪神の新エース襲名に向け、シーズン後半戦も成績を伸ばせるか。真価が問われるのはこれからだ。
※成績は7月2日終了時点
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記事:SPAIA編集部