三軒茶屋の気になる老舗企業「金冠堂(キンカン)」「山元オブラート」を訪問!
家庭の常備品だったり、日ごろからお世話になっていたりと、みなさんおなじみの“アレ”を手掛ける会社が、実は三軒茶屋にある。創業約1世紀の老舗企業を訪問して、知っているようで知らない会社や商品のこと、教えてもらいました!
金冠堂(キンカン) [創業大正15年(1926)]
夏の風物詩、虫さされといえばの「キンカン」。実は、出発はやけどの治療薬。第一次世界大戦で衛生兵だった創業者が、親戚の子供をやけどで亡くしたことを機に、やけどに使える万能薬を4年かけ開発。大正15年(1926)に完成させたという。
「果実の金柑が名前の由来? とよく聞かれるのですが、朝鮮半島(現在の韓国)でキンカン開発時、現地で金の王冠が出土したことにあやかって名付けられました。なので、金柑は創薬以来使われていないのです」と、営業開発部の加藤拓馬さん。
拠点を三軒茶屋にしたのは昭和初期から。工場は三宿にあったが第二次世界大戦の空襲で焼失し、1945年より現在地へ。1986年に埼玉工場に移転するまでキンカンはメイドイン三茶だったのだ。
テレビCMで知名度は全国的となり、もうすぐ100周年の企業の顔。今願うことは?
「夏だけ使って余らせる方が多いのですが、肩こりや腰痛にもぜひ! と言いたいですね。こった時にすぐ塗るとスーッと気持ちいいです」と同部の吉田稜さん。
「最近はキンカンを知らない世代も増えているので、幅広い世代に向けた商品たちとともに、キンカンを知っていただきたい」と加藤さん。目指すは“家庭の常備薬”再普及!
金冠堂
東急電鉄田園都市線・世田谷線三軒茶屋駅から徒歩5分。
東京都世田谷区三軒茶屋1-34-14
☎03-3421-6171
山元オブラート [創業大正3年(1914)]
服薬に、菓子包装に使われるオブラートを手掛けて110年。その創業は、十五大財閥の一つ、浅野財閥が関わり、実業家の山下太郎が日本鋼管社長の白石元三郎の後援で設立。社名は両者の名から命名された。
「創業時は柔らかいキャラメルなどを包むのに作ったと聞いています。この会社に勤めていた私の父が戦前に機械化をして、戦後の財閥解体時に会社を買い取ったんです」と代表の片平三郎さん(以下同)。
オブラートの主原料は昔から北海道産じゃがいもと水。糊化したでんぷんをローラーで延ばして乾燥させる。三宿の本社に工場があった70年代末までは高さ100mの煙突があり、10台ほどの機械が終日フル稼働した。現在の製造拠点は北海道だ。
オブラートの薄さはわずか20ミクロン(0.02㎜)〜50ミクロン。服薬用は薄く、ゼリー用は厚く、キャラメルなど水分の少ない菓子はその中間で作り分ける。が、近年需要が多いのは粉状に加工した粉末オブラートとか。
「やっぱりお菓子用が多いのですが、養殖ウナギの餌という変わった使われ方も。餌が沈むと魚は食べないし水も汚れる。そこで、餌に混ぜ込めば長く浮くと提案したんです」
ただ包むだけじゃないオブラート。この名脇役の可能性から今後も目が離せない。
オブラートを使った簡単な薬の飲み方。サプリやカプセルにもぜひ!
コップよりも小さめのぐい飲みなどの器に飲み水を注ぐ。
薬を包んでこぼれないよう口を閉じたオブラートを水の中へ。
10秒ほど浸したら一気に飲む。とろみでスルッとのどを通る。
山元オブラート
東急電鉄田園都市線・世田谷線三軒茶屋駅から徒歩14分
東京都世田谷区三宿1-8-10 山元ビル
☎ 03-3411-8331
取材・文=下里康子 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2025年1月号より