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今年の11月1日、「フリーランス保護新法」が施行された。多様な働き方が求められる今、フリーランスや副業として働く人たちは、どのような仕事を探しているのか。
急速な少子高齢化による労働人口減少に対応するため、政府は2018年に副業解禁し、誰しもが副業・兼業ができる社会を目指している。コロナ禍で普及したテレワーク、ライフワークバランスの変化を背景に、フリーランスや副業という働き方が広がりつつある。2023年9月に公益財団法人産業雇用安定センターが公表した「従業員の『副業・兼業』に関するアンケート調査」によると、2023年7月時点で従業員の「副業・兼業」を認めている企業および、今後認める予定の企業は合わせて約3割に達している。
こうした背景の中、最近のフリーランス・副業希望者はどのような仕事や条件を希望しているのか、また求人市場の動きはどうなっているのだろうか。本記事では、求人ボックスに掲載されたフリーランス・副業関連の求人と給与データを基に、最新のトレンドを調査し、その結果を紹介する。

【フリーランス・副業に関する仕事の検索数】コロナ5類移行後も微増で推移

2024年4-9月期はフリーランスや副業として働くことを想定した仕事（※1）の検索数が過去2年半で最高だった。新型コロナウイルスが「第6波・第7波」となって感染拡大していた2022年4-9月期と比較すると113.2%と微増している。

検索ワードランキングの集計・算出方法：「求人ボックス」利用ユーザーが、「求人ボックス」上でフリーランス・副業に関連するキーワード（フリーランス、フリーランサー、業務委託、個人事業主、副業）で検索した数をもとに算出。（※1）
2021年9月の検索回数を1として指標化。

「業務委託」希望者の検索ワードランキング 1位は「軽貨物 / 軽貨物ドライバー」

業務委託に関して、求人ボックスで最も検索されたキーワードは、「軽貨物 業務委託 / 軽貨物ドライバー 業務委託」だった。それ以降も、2位「配送 業務委託 / 配送スタッフ 業務委託」、8位「ドライバー 業務委託」と物流系運転手の求人を探していると考えられるキーワードが続いた。
運送業界に携わるドライバーは、2024年4月1日に施行した時間外労働に関する規制や、昨今のECの進展により需要が増加しており人手不足が深刻化している。物流量に左右されやすい業界であることや、働く時間を調整しやすいことなど、特殊な労働環境が影響し、業務委託で働く人が多いことも、検索数の多さに関係していると考えられる。
3位に「データ入力 在宅 業務委託」がランクイン。データ入力の仕事は、主にパソコンを使用して経理や業務に関するデータを正確に入力し、データベースの管理や整理を行う。働き方改革によってテレワーク可能な企業も増え、求人数は増加傾向にある。
業務委託に関する検索は、スキルや仕事内容が明確なキーワードが続いた。

検索ワードランキングの集計・算出方法：「求人ボックス」利用ユーザーが、「求人ボックス」上で「業務委託」に関する仕事探しを行う際に入力した検索キーワードの検索数上位を抽出、「軽貨物 / 軽貨物ドライバー」の検索数を100として指標化。

「副業」希望者の検索ワードランキング 1位は「完全在宅」

副業に関して、求人ボックスで最も検索されたキーワードは、「完全在宅 副業」だった。
2位「完全在宅 データ入力」と、出社が求められない仕事の検索が続いた。「完全在宅」という条件が人気な理由としては、外で働く仕事に比べて移動時間がなく、実働時間を増やして効率よく副業で稼げるということや、クラウドソーシングサイトの普及により、インターネット上で完結できる副業が手軽に行えるようになったことなど、さまざまな要因が考えられる。
3位に「週1回 副業 バイト」、7位には「副業 週1 業務委託」ランクインした。フリーランスの仕事は、業務量が指定された案件単位で進めるケースが多いが、労働時間が明確に決まっている仕事を求める人も多いと考えられる。
副業に関する検索は、働く条件が明確なキーワードが続いた点が業務委託の検索結果と異なる。

検索ワードランキングの集計・算出方法：「求人ボックス」利用ユーザーが、「求人ボックス」上で「副業」に関する仕事探しを行う際に入力した検索キーワードの検索数上位を抽出、「完全在宅 副業」の検索数を100として指標化。

「フリーランス・業務委託」の職種別月収ランキング1位は「SAPコンサルタント」平均85.4万円

求人ボックスに掲載された求人のうち、職種別に「フリーランス」および「業務委託」の求人給与を調査した。
平均月収が最も高かったのは「SAPコンサルタント フリーランス」の85.4万円だった。
SAPとは、財務会計、人事、製造、供給チェーン管理など、企業の業務を一元的に管理できるソフトウェアで、SAPコンサルタントは、そのソフトウェアを導入、運用する際に支援する専門家である。SAP社が実施している認定試験「SAP認定コンサルタント」は非常に専門性が高く、高度な知識が求められる。多くの企業や業界で導入されていること、高い技術力が求められることから、月収が高くなる傾向にある。
ついで2位は「プロジェクトマネージャー フリーランス」74.5万円、3位は「データサイエンティスト フリーランス」71.8万円とIT系の高度人材が続いた。

求人給与の集計・算出方法：求人ボックスで過去掲載した求人情報に基づいて中央値を算出。（2024年10月掲載情報）

フリーランス・副業に関する求人数、今年の5月以降に急伸

また、フリーランス・副業に関するキーワードについて、2023年8月から2024年9月の1年間に「求人ボックス」に掲載された求人数推移を調査した。

平均求人数が最も多かったのは「副業」の約231万件で、2024年5月以降、増加傾向にあった。そのうち副業を容認する労働条件を示す「副業OK 正社員」については、87.4万件と、この一年で求人数を大幅に伸ばしている。「業務委託」、「フリーランス」についても同様に増加傾向にあった。
「フリーランス保護新法」の施行により、労働契約に関する明確なルールや保護措置が強化されることで、より多くの人がフリーランスとしての働き方を選びやすくなる。副業でフリーランスを始める人が、これまで以上に安心して収入を得られるようになるため、副業市場の活性化が進むと考えられる。

集計・算出方法：求人数推移は、「求人ボックス」に掲載された求人数の推移。

11月1日に施行された「フリーランス保護新法」とは

フリーランス保護新法（正式名称：「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」）は、2024年11月1日に施行され、フリーランスと企業間の取引を適正化し、フリーランスが安心して働ける環境を整備することを目的とした法律である。フリーランスが従来、労働基準法の適用外だったため、不当な取引や報酬遅延などの問題が発生しやすかったことを背景に制定された。

フリーランス保護新法の主なメリット

フリーランスとして働く人にとって、以下のようなメリットがある。

契約内容の明確化：契約条件が書面または電磁的に明示され、曖昧な口約束を防ぐ。 報酬の適正化：納品後60日以内に報酬が支払われることが義務化され、遅延や未払いが防止される。 不当な要求や報酬減額の禁止：不当な報酬減額や一方的な契約変更が禁止され、フリーランスの労働環境が改善される。 ライフイベントへの配慮：妊娠・出産・育児・介護などの理由で不利益を被らないように企業側の配慮が義務化される。

フリーランス側の対応内容

フリーランスは、仕事を受注する際に、新法により以下の点に注意する必要がある。

取引条件の確認：契約書に業務内容、報酬、支払い期日が明示されているか確認する。
支払い期日の確認：納品後60日以内の支払いが守られているか、再委託の場合は元委託者から30日以内に支払いが行われているかを確認する。
トラブル対応：トラブルが発生した場合は、相談窓口（フリーランス・トラブル110番や公正取引委員会など）に連絡する。

企業がフリーランス保護新法に違反した場合

公正取引委員会や厚生労働省などの関連機関が調査を行い、企業の違反行為が確認された場合は、助言、指導、勧告が行われる。改善が見られない場合、さらに厳しい措置として命令や公表が行われることがある。