深度100m以上で獲物を捕らえる? 世界初<キングペンギン>が捕食する瞬間を撮影することに成功
亜南極に生息するキングペンギンは別名「オウサマペンギン」とも呼ばれており、地球上で2番目に大きいペンギンです。
キングペンギンは肺呼吸を行う鳥類でありながら、深度100メートルを超える暗い海に潜水し採餌するという、驚くべき能力を持つことが知られています。これまでの研究により、キングペンギンが深くて暗い海で餌を採ること自体は知られていたものの、実際にどうやって獲物を捕らえているかわかっていませんでした。
そのような中、東京大学大気海洋研究所とフランス国立科学研究センターシゼ生物学研究所の研究チームは、キングペンギンの背部に小型カメラを装着し、本種が深度100メートル以上の深くて暗い海で魚を捕らえる様子の映像を世界で初めて撮影することに成功したとのことです。
深い海で狩りをするキングペンギン
別名オウサマペンギンとも呼ばれるキングペンギンは南緯40~60度の亜南極に生息する鳥類で、ペンギンの中では地球上で2番目に大きい種として知られています。
キングペンギンの特筆すべき点は体の大きさだけではありません。なんと深度100メートル超の深くて暗い海で狩りができるという驚くべき能力を持っているのです。
これまで映像による記録がなかった
これまでの研究でキングペンギンが深い深度で採餌していることが知られていましたが、逃げ回る魚を追いかけているのか、あるいは止まっている魚に静かに近づいて捕まえるのか、詳しい餌の採り方はわかっていませんでした。
これには肝心な映像による記録がなく、潜水の深さなどの記録では魚の動きやペンギンと魚の間の駆け引きが不明だったためです。
ペンギンの背部にビデオカメラを装着
キングペンギン以外のペンギンが餌を採る瞬間の映像は、これまでにいくつかの種で報告があります。しかし、いずれの種も深くまで潜らないペンギンであり、太陽の光が届く深度での記録に限られてました。
このような中、東京大学大気海洋研究所とフランス国立科学研究センターシゼ生物学研究所の研究チームは、インド洋南部ケルゲレン諸島のキングペンギンの背部に、LED光源の付いた小型のビデオカメラを装着。
世界で初めて、キングペンギンが暗い海で餌を採る瞬間を映像で記録することに成功しました。
キングペンギンの優れた餌採り能力
映像では、キングペンギンが捕食の0.5~1.5秒前に首を餌の方向に向け、その後首を伸ばすようにして一気に魚をついばみ捕食。魚はくちばしに捕まる瞬間までペンギンの接近に気づかないか、捕まる0.1秒前に回避行動をとっていたそうです。
この事実は、魚に気づかれることなく忍び寄ることができる能力が、キングペンギンにはあることを示唆しています。
実際、この研究でビデオカメラを装着したペンギンは約1時間30分の映像の中で136回の捕食を試み、そのうちの86.8%に値する118回の捕食で魚を捕まえることに成功していたとのこと。
キングペンギンは上昇中に捕食する
また、ビデオカメラについたセンサーに記録された潜水深度の変化では、キングペンギンが深度100~150メートルまで一気に潜った後、潜水の中盤で上昇と下降を数回繰り返していることが判明しています。
さらに、この記録と餌採りのタイミングを比較したところ、81.6%の捕食が上昇中に行われていることが判明したのです。
こられのことからキングペンギンは、上昇と下降を繰り返しながら効率的に捕食を行っていると考えられました。
また、より深く暗い下方から魚に近づくことは、獲物に気づかれにくくなるメリットがあることに加え、明るい海面を背景にすることで、魚のシルエットを捉えやすくする効果を利用している可能性があると考えられられています。
みんな独自の方法で獲物を捕食
キングペンギンが生息する亜南極には、ナンキョクオットセイやミナミゾウアザラシなど大型種も生息しており、これらの動物たちもキングペンギンと同じ魚を餌にしてるようです。
しかし、体の大きさや泳ぐスピード、小回りのききやすさが異なっており、それぞれに合った方法で餌を採っていることが知られています。キングペンギンはというと、上昇と下降を繰り返しながら捕食を行うといった、独自の方法を使っていることが今回の研究で判明しました。
この研究はキングペンギンがどのようにして過酷な環境を生き延びてきたのかの解明や、同じ海域で同じ餌を食べる複数種の動物がどのように共存しているのか理解する手掛かりになることが期待されています。
(サカナト編集部)