次世代へつなげるインテリジェンスの宮殿「東京都立中央図書館(港区)」-第3回 進化する東京の図書館を訪ねて
東京都港区南麻布に広がる閑静な有栖川宮記念公園の一角に、瀟洒な佇まいの建物があります。こちらは「東京都立中央図書館」で、約229万冊(2024年3月現在)の蔵書を有する国内最大級の公立図書館です。
都立中央図書館の特徴は、何といっても豊富な蔵書と、知識や情報を得たい人のためのサービスが充実しているところ。約229万冊のうち、開架されている35万冊ほどの図書は来館者が自由に閲覧することが可能です。調査や研究に役立つ豊富な資料を有するため、利用者の問合せに応じて様々な図書の紹介や情報の提供を行うレファレンス(調べもの相談)サービスがあります。
個人のみならず、都内の区市町村立図書館や学校、都各局への支援事業など、首都東京の中核図書館として、幅広くきめ細やかにその役割を担っているのです。
充実の開架図書や、多様な閲覧室、展示室やホールにカフェテリアなど1階から5階までの各フロアに、体系的な知識と情報が詰まった都立中央図書館。
一日およそ千人の人が訪れるインテリジェンスの宮殿・都立中央図書館を、企画経営課の中村茂彦さんと情報サービス課の西口真梨奈さんにご案内いただきます。
都立中央図書館の基本情報
都立中央図書館の概要
所在地:東京都港区南麻布5-7-13
アクセス:東京メトロ日比谷線「広尾駅」1番出口から徒歩8分
階数:地下2階から地上5階
開館時間:月~金曜日 10:00~21:00(特別文庫室10:00~17:30)
土・日曜日・祝日 10:00~17:30
休館日:毎月第1木曜日(祝日または、ほかの休館日に当たる時は第2木曜日)、第3金曜日
設備の保守点検日、特別整理期間、12月29日~翌1月3日
利用方法:1階受付カウンターにて入館証を受領。入館証は、書庫の資料やオンラインデータ
ベースの利用の際に必要です。書架に並ぶ資料は館内で自由に閲覧できます。
都立図書館の歴史
1973(昭和48)年、都立中央図書館は、都心で交通の便が良い有栖川宮記念公園の高台の一角に開館しました。
都立中央図書館が開館された経緯は、前身の都立日比谷図書館が集積してきた蔵書を保存するための充分な書庫スペースが必要とされたことも要因のひとつです。
都立日比谷図書館の蔵書が移転され、開館した都立中央図書館は当時、28万冊余の蔵書を有していました。なお、都立中央図書館の「中央」は、中央区ではなく、都立図書館の中心館であることを意味しています。
ここで少し、都立図書館の歴史に触れておきます。
1908(明治41)年に開館した東京市立日比谷図書館がルーツとなる東京都立図書館の歴史は古く、これまで複数の都立図書館が開館や閉館を重ねてきました。
1976(昭和51)年から10年間は、中央図書館を中核に、日比谷、立川、青梅、八王子、江東の6館の都立図書館が都民へ図書サービスを提供していました。
その後、併合や区への移管などを経て、都立図書館は、都立中央図書館と国分寺市にある都立多摩図書館の2拠点となったのです。中央図書館と多摩図書館。首都のインテリジェンスを支える2つの図書館
都立中央図書館が誕生してから52年。国内最大級の蔵書と充実したサービスを備える都立中央図書館と、雑誌と児童・青少年向けの本を主軸とした都立多摩図書館は、機能を分担しながら一体的な運営が行われています。首都東京の中核を担う公立図書館として、良質なサービスを牽引しているのです。
都立中央図書館の6つの魅力を紹介
国内最大級の蔵書を有する「都立中央図書館」では、様々な形で館内の豊かな知識を享受できます。国内最大級の蔵書というハード面、レファレンスサービスをはじめとした様々なサービスを提供するソフト面、どちらも潤沢な都立中央図書館の魅力を6つのポイントに分けて見ていきましょう。
【魅力1】レファレンスサービスの充実
探している本がある時、調べたいことがある時、たくさんの蔵書の中から正確な情報を得るためどのようにアプローチしていいか分からない。そんな時に頼もしい味方になってくれるのが、都立中央図書館のレファレンス(調べもの相談)サービスです。
実際にどのようにサービスを受けられるのか、職員の中村さんと西口さんに教えていただきましょう。
入館証は知のパスポート。「入口受付カウンター」ですべての人が受け取れます
図書館では、本だけでなく、雑誌や新聞等様々な「資料」を閲覧することができます。
館内で資料を閲覧するためには、ホテルのように瀟洒な受付カウンターで入館証を受け取ります。入館証は書庫の資料やオンラインのデータベースを利用する際に必要となりますので、紛失しないように。各閲覧室にある資料は誰でも自由に閲覧することが可能です。大きな荷物は、受付カウンター横のロッカー室で預けてからフロアに入りましょう。
スムーズに情報を得たい時には「総合案内・相談カウンター」へ
受付カウンターを抜けて1階フロア入口の正面に位置するのが、「総合案内・相談カウンター」です。こちらでは、司書の資格を持つ職員に資料の探し方や調べ方を相談できます。具体的にどんな相談があるか、情報サービス課に所属する西口さんに伺ってみましょう。
「たとえば、明治時代に東京で流行した洋菓子のレシピについて知りたい、というようなご相談の場合は、当時の流行や有名店がわかる本からのアプローチをご提案します。調べものや課題を抱えて訪れる方の解決のお力になることが、レファレンスサービスの役割。課題解決型の図書館として、レファレンスサービスを気軽にご利用いただければと思います」
都立中央図書館のレファレンスサービスは、来館する以外にも電話やメール、手紙でも受付可能です。公式ホームページには「AI ChatShelf」があり、検索内容を入力するとおすすめや該当の本を紹介してくれます。たとえば、「壮大なSF小説」というような自分の興味のあるワードで検索すると、AIが選択した都立中央図書館の蔵書がずらりと並びます。
レファレンスサービスを利用すると、特定の分野に対する視野がぐんと広がったり、あるいは情報に対する視点が絞られます。それぞれのサービスの詳細な利用方法は、都立中央図書館のホームページをご確認ください。知りたい情報を手軽にリサーチできる「検索コーナー」
目的の本や雑誌を館内で探す場合は、検索コーナーがおすすめです。蔵書検索やオンラインデータベース、インターネット専用パソコンで、求めている情報や資料を検索できます。
「ワンストップサービス」を実施する都立中央図書館では、サービス機能の多くが1階に集約されていることも特徴です。
総合案内・相談カウンターのほかに、「検索コーナー」や「複写受付カウンター」、DVDやCDが視聴できる「音声・映像コーナー」もすべて1階フロアで利用することができるサービスです。
【魅力2】実用的な資料の充実
「1階は実用性の高い本を中心にそろえたフロア。ビジネス、法律、健康・医療といった利用者からのニーズが高い情報を集結させています。来館した利用者がワンフロアで用件を済ませられるワンストップサービスのひとつです」と、1階フロアの特徴を企画経営課の中村さんに教えていただきました。
2008(平成20)年に大規模改修工事が行われた際、重点的な情報サービスが1階へ集められたそうです。総合案内・相談カウンターを前方に、1階フロア左手奥に「ビジネス情報コーナー」、「法律情報コーナー」、「健康・医療情報コーナー」があります。また、右手奥には、「都市・東京情報コーナー」の書架が並びます。ビジネスパーソンの心強いサポーター「ビジネス情報コーナー」
「ビジネス情報コーナー」は、企業情報や市場動向、就職に役立つ情報など、多岐にわたるビジネス情報が用意されています。転職や起業を考える時などに、ぜひ足を運びたいコーナーです。また、中央ホールにある検索コーナーでは、企業・業界情報のデータベースを確認できます。
身近なお困りごとから専門知識まで網羅する「法律情報コーナー」
法律関係の調べものの際に利用したいのが、「法律情報コーナー」です。
本棚には入門書から専門書まで各種法律に関する資料が並び、判例集や六法全書もそろう充実ぶり。また、近隣トラブルや交通事故など身近な問題が起きた時に役立つのが「身近な法律コーナー」です。誰にでも起こり得る法律問題をわかりやすく解説した本が集められています。
相続や労働問題など、困りごと別に参考になる本を紹介したリストも用意されており、利用者の情報収集をサポートする心強い味方です。
医療や介護のきめ細やかな情報が集まる「健康・医療情報コーナー」
「健康・医療情報コーナー」は多くの利用者にとって、関心の高い医療や介護情報が入門書から専門書まで取りそろえられています。「ここから調べるコーナー」では、具体的な病気や薬を調べる手がかりとなる辞典やテキストなどが展示されています。利用者が必要な情報に辿り着けるように、わかりやすいコーナーづくりがなされています。
多彩な情報が東京の姿を浮き彫りにする「都市・東京情報コーナー」
東京都の中核図書館ならではのコーナーが「都市・東京情報コーナー」です。
都政情報、都市政策、都市計画や産業、文化、スポーツなどテーマ別に東京の情報が配置されています。
また、書庫には昭和30年代からの住宅地図や明治以降の地図、明治39年以降の電話帳、昭和50年からの路線価図などが所蔵されており、館内で申し込めば閲覧が可能です。
東京の発展の歴史があらゆる角度から分析できそうですね。
【魅力3】閲覧席やルームなど充実
都立中央図書館の1階から5階までのフロアには、約900席もの閲覧席があります。900席のうち300席にPCの電源があり、閲覧席の種類も様々です。各フロアの閲覧席をまわってみましょう。
ホテルのラウンジのようにくつろげる「話題の洋書コーナー」
高い天井とガラス窓が開放的なこちらは、1階にある「話題の洋書コーナー」です。どのようなコーナーなのか、中村さんに伺います。
「こちらは外国語の新着図書や雑誌が展示されているコーナーです。都立中央図書館の周囲には大使館も多いため、様々な方にご利用いただければと思っています」
日本語が母語ではない方のために、館内の案内にはピクトグラムややさしい日本語を利用して工夫されているとのこと。
ホテルのラウンジのようなゆったりとしたソファーで洋書を開く、贅沢な時間が送れそうです。
自室のように集中できる「1人用閲覧席」
木漏れ日が射すこちらは、1階の窓際に並ぶ一人用の閲覧席です。
「一人用の閲覧席は、2008(平成20)年に行われた改修工事の際に新設されたものです。1階から3階まで、合計31席あります」(中村さん)
少し贅沢な空間で読書や調べものに没頭できそうです。
大きなテーブルでゆとりある空間が確保できる「4人用閲覧席」
こちらは、人文科学系の資料が並ぶ3階フロアの閲覧室です。4人がけのテーブル席は広々していて使いやすそうです。電源コンセントのある席も多く、無線LANも無料で使えます。
広いフロアに奥まで整然と並ぶ閲覧席は276席で、多くの人がゆとりをもって利用できるのが嬉しいですね。
仲間うちで話し合いながら利用できる「グループ閲覧室(4階)」
4人がけの閲覧席が6卓並んでいるこちらは「グループ閲覧室」です。グループ閲覧室とは何でしょうか。中村さんに伺います。
「こちらはグループで使える閲覧室です。個室となっているため、話し合いながら学習や調査研究を進めることが可能です」
複数人での共同研究や仕事を進める際に役立つ閲覧室です。
全集中で資料に没頭できる「調査研究ルーム(5階)」
壁に向かってパーテーションで仕切られた個人席が並んでいるこちらは「調査研究ルーム」。広い机に全席に照明器具と電源付き、無料Wi-Fiも使えます。社会人のみ利用できるスペースで、1階か5階にある専用端末での予約が必要となります。
書架が並ぶフロアとは分かれた個室となっているため、作業に全力で集中したい時には理想的なスペースです。
大きな窓に風景画のような緑が広がる「グリーンビューシート(5階)」
ゆったり読書を楽しみたい方には、こちらの「グリーンビューシート」がおすすめです。大きな窓の向こうには有栖川宮記念公園の緑が広がり、読書に疲れた目を癒してくれそうですね。
【魅力4】カフェ&キッズルームが充実
都立中央図書館の1階にはカフェ、5階には食堂があります。公園の中という立地を活かした作りであるそれぞれの店内を覗いてみましょう。
開放的な空間にコーヒーのふくよかな香りが広がる「有栖川珈琲(1階)」
こちらは、受付カウンターの前にある「有栖川珈琲」です。7種類のカフェや4種類の紅茶、様々な焼き菓子など、本格的なティータイムを楽しめます。
開放感溢れる店内で、有栖川宮記念公園の景色を眺めながらいただくお茶は格別です。
名称:有栖川珈琲
営業時間:開館日(土・日曜日を除く。祝日は営業)の15:00~17:00
※ラストオーダー16:45まで都心のパノラマを眺めながらランチを楽しめる「有栖川食堂(5階)」
読書や調査に没頭して空腹を覚えたら、5階にあるカフェテリア「有栖川食堂」へどうぞ。
フライドポテトなどの軽食からカレーやラーメン、和・洋の各種定食など豊富なメニューがリーズナブルに楽しめます。東京タワーや六本木のビル群が望める窓際のカウンター席は、特におすすめのビューポイントです。
名称:有栖川食堂
営業時間:開館日(土・日曜日を除く。祝日は営業)の11:00~15:00
※定食の提供は11:00~14:00、ラストオーダー14:45まで小さなお子さんを連れた親御さんも安心できる「キッズルーム(5階)」
5階には、広く明るいキッズルームがあります。キッズルームの中には授乳室やおむつ交換台、おすすめの絵本もあるので、小さなお子さん連れの方も安心して図書館を利用できますね。
【魅力5】本の展示が充実
都立中央図書館では、館内の随所でテーマ別の本の展示である「ミニ展示」や「企画展示」が行われています。
来館者が所蔵している資料に関心を抱きやすいように、どのような展示が行われているのか、その一部を巡っていきましょう。
1階ミニ展示
こちらは「話題の洋書コーナー」のミニ展示です。春の花をテーマとした本が集められ、華やかな写真や絵柄が見やすいよう見開かれて設置されていました。
ビジネス情報コーナーでは、「マーケティング」がテーマの図書が紹介されていました。
それぞれの表紙が見やすいようなレイアウトです。
法律情報コーナーでは、育児休業・介護休業をテーマにした図書が展示されていました
現代社会でニーズが高いテーマですので、通りすがりに思わず手に取りたくなりますね。
3階ミニ展示
人文科学系の図書が並ぶ3階フロアでは、生誕100年を記念して三島由紀夫のミニ展示が開催されていました。
「こちらは三島由紀夫の初版本です。希望があればガラスケースから取り出して、ご覧いただけます」と、ガラスケースの中に見入っていると、西口さんが教えてくださいました。有名作家の初版本など希少な資料を豊富に所蔵していること、それを実際に閲覧できることも都立中央図書館の大きな魅力のひとつです。
4階企画展示室
蔦屋重三郎が吉原の大門前に開業した地本問屋「耕書堂」。その模型が展示されていたのが、4階にある企画展示室です。こちらは2025年1月24日から5月25日まで開催されていた「情報、江戸を駆ける!蔦屋重三郎が生きた時代の出版文化」という企画展示です。蔦重こと蔦屋重三郎が正座をして手をついている店頭には、ミニサイズの浮世絵や草紙(本)が並びます。
「お店の模型は図書館の別の企画で使用したもの。店頭に並ぶ商品は、職員が手作りで作ったものです」(西口さん)
ずっと観ていても飽きる?ことない耕書堂の模型、手作りの工夫が楽しい展示でした。
都立中央図書館の5階にある特別文庫室には、江戸時代後期を中心とした古典籍や古地図、錦絵など約24万3千点があります。そのうち、「江戸城造営関係資料(甲良家伝来)」など、国の重要文化財に指定されているものは646点もあるのです。特別文庫室の資料は書庫にあるため、予約の上、閲覧できます。
都立中央図書館では話題性のあるテーマを取り上げて、企画展として多彩で希少な資料を紹介しています。特別文庫室は閉架式で、予約制で資料を閲覧できるほか、企画展で展示されます。また、期間限定で展示することもあります。
【魅力6】図書館資料が充実
都立中央図書館の魅力といえば、何といっても229万冊もの蔵書を有する資料の多彩さです。1階から3階フロアにある書架の各コーナーに並ぶ資料の豊富な種類に目を見張ります。
「3階の地方史コーナーでは、全国の自治体などの地方史誌約3万冊が閲覧できます。道府県史だけでなく、市町村単位で発行されたものも並びます。全国の資料を揃えることも都立中央図書館の役割です」(中村さん)
一般的な図書館や書店では目にすることができない本が充実する地方史コーナー。特定の地域に関する研究に役立てるだけでなく、自分の故郷の地方史を手繰ってみると思いがけない発見があるかもしれません。
こちらは、美術情報コーナーの大型資料専用の低書架です。都立中央図書館が所有する美術関係の図書約11万冊のうち、約4万3千冊が書架に並びます。大型の美術書は1万2千冊あり、世界各地のアーティストの画集を閲覧できます。
また、美術情報コーナーの一角には、近隣美術館のパンフレットや都内の美術関連のフリーペーパーも設置。旬な美術情報にも出会えます。
豊富な資料の中から「特定の絵を探している」といった時こそ、レファレンスサービスのご利用をおすすめします。
様々な資料が収められた「地下書庫」
最後に、通常では訪れることのできない地下にある書庫にご案内いただきました。
こちらの棚に並ぶのは新聞のバックナンバーです。1階にある新聞閲覧コーナーには、2~4ケ月分の全国紙や地方紙、業界紙、専門紙、外国語新聞などが並び、その数なんと169紙。それらの原紙は最長4年間保存されるとのこと。
ほぼ毎日発行される新聞の管理保管も手作業で行われています。私たちが多種多様な資料をスムーズに閲覧できるのは、職員の方のご尽力の賜物であることを実感しました。
続いてご案内いただいたのは、書庫のコーナーです。書庫に入る前に入口に置かれた粘着マットの上で、靴の裏を拭ってから入室します。機械式の書架にずらりと並ぶ資料は壮観です。
資料を保管される上でのご苦労を中村さんに伺います。
「まず空調は大きな課題です。紙の資料にはカビが発生しやすいので、換気と温度管理には気を付けています。それから、書庫に入る時にはカビの胞子やほこりを持ち込まないようにするため、靴の裏の汚れを落としてから入室します」
粘着マットの上で靴の裏を拭ったのは、カビやほこり対策のためでした。
「カビや害虫が発生していないか、定期的に調査をしています。それと、酸性紙対策も重要な保全対策のひとつ。酸性紙とは、インクのにじみ止めの定着材として硫酸アルミニウムを用いた紙のことで、日本の昭和20年代、30年代の初めくらいまでの本に多く使われていました。この時代の本は、紙質自体も非常に悪いです。酸性紙を使った本は早く劣化します。そのため、機械や手作業で脱酸性化の処理を施す必要があり、都立中央図書館では、計画的に酸性紙対策を進めているのです」
都立中央図書館で所有する資料は基本的にどれも一冊きりとのこと。破損した場合はどうするのでしょうか。
「永年利用するつもりです。破損が見つかった場合は適宜修復しています。私たちは将来の利用者のためにも保全対策を進めて、一冊一冊の本を大切にしているのです」と、中村さんから都立中央図書館の重要な意義を伺えました。
都立中央図書館に通うならこの駅の周辺に住むのがおすすめ
都立中央図書館のある港区ってどんな街?
港区は東京23区の中央に位置し、千代田区、中央区と並ぶ都心3区のひとつです。
港区から見て東側は東京湾に面し、南側には品川区、西側には渋谷区、北側には中央区と千代田区と新宿区が隣接しています。
港区といえば東京のランドマークである東京タワーがあることで知られています。地上波民放キー局5局すべても港区にあり、新橋や汐留、赤坂などには国内外の名だたる大企業が集積している首都東京の中核地です。
繁華街、商業エリアとしては、六本木、表参道、青山周辺が根強い人気を誇る一方で、近年では、六本木、虎ノ門、麻布台が再開発エリアとして注目を集めています。これらの地域には、「六本木ヒルズ」や「虎ノ門ヒルズ」、「麻布台ヒルズ」といったオフィスと商業、住居を兼ねた高層複合ビルが次々と建てられ、東京の新しい顔としての役割を果たしているのです。
日本の首都機能が集積する千代田区にほど近く、治安の良い高級住宅地があるため、港区には多くの大使館があります。そのため、港区の人口26万9,134名のうち、外国人は23,289名で全体の約8.7%を占め、住民に外国人の割合が多いことも大きな特徴のひとつ(2025年5月時点)。江戸時代には城下町として栄えた麻布や白金台、高輪周辺は、東京を代表する閑静な高級住宅街としても有名です。
徳川家の菩提寺である増上寺をはじめとした寺院も多く、芝公園や都立中央図書館のある有栖川宮記念公園など、緑豊かなスポットにも恵まれています。
時代の最先端をゆく港区に位置する都立中央図書館に通うなら、次の駅周辺がおすすめです。
都立中央図書館まで徒歩8分「広尾駅」
港区南麻布5丁目に位置する広尾駅は、東側に港区と西側に渋谷区と、2つの区にまたがる東京メトロ日比谷線の駅です。「広尾」は渋谷区の地名ですが、広尾駅周辺を示す広域地名でもあります。
都立中央図書館のある港区南麻布から元麻布や六本木にかけては高低差に富んだ地形のため、坂が多いことが地理的な特徴です。有栖川宮記念公園の南側にある南部坂をはじめ、鳥居坂や仙台坂、北条坂などの名称は、かつて大名屋敷があったことの名残。ほかにも、暗闇坂や一本松坂など個性的な名を持つ坂がたくさんありますので、坂を訪ねて散策するのも楽しそうですね。
広尾駅からの主要駅までのアクセスは、渋谷駅まで約9分、新宿駅は約14分、東京駅は約18分と良好で、都内の移動に便利です。
駅周辺には「明治屋広尾ストアー」や「広尾プラザ」などのショッピングセンターのほか、「広尾散歩通り」商店街があり個人店も多く、買い物には不自由しません。
広尾駅から徒歩10分以内に「都立広尾病院」、「日本赤十字社 医療センター」といった総合病院があることもプラスポイント。
そんな広尾駅周辺の家賃平均は、ワンルームや1Kのお部屋が15万円台となります(2025年5月現在)。ほかのエリアよりも高級物件が多いため家賃平均も高めですが、実際は駅徒歩10分オートロックつきの20m2超のマンションで家賃10万円台の物件も複数あります(2025年5月現在)。
交通や買い物の利便性が高いおしゃれな街並みを楽しみながら、都立中央図書館で知識を磨く。
東京の中心で、仕事も遊びも学びも満喫されたい方に広尾駅周辺はおすすめです。
まとめ 都立中央図書館がある港区に住んでみませんか
東京のビジネス・商業の中心地である港区は、大型高層ビルが林立する華やかな街並みと、有栖川宮記念公園や芝公園など豊かな緑が共生するエリアです。大使館や教育機関、美術館や寺院など、文化的スポットも多い港区において、国内最大級の蔵書を誇る都立中央図書館は知を牽引する宮殿です。
学びたいことや知りたいことがある時、都立中央図書館へ足を運んでみませんか。およそ229万冊の蔵書と行き届いたレファレンスサービスが、知的好奇心を満たしてくれるはずです。港区にお住まいの方や関心がある方は、知の宮殿である都立中央図書館にぜひ一度、お出かけください。
情報提供:東京都立中央図書館
この記事では画像に一部PIXTA提供画像を使用しています。