第42回「同じ立場、同じ目線で」
「私たちの未来は、私たちで作る!」
あなたの「困りごと」、「モヤモヤ」、「お悩み」、もしくは、「変えていきたい社会の課題」などを通して、みんなで一緒に「これから」を考えていく番組。
1月4日の放送で「石川県輪島市に実家がある方」の声を紹介しました。
「ある学校の校舎が地震のダメージで建て替えられることになった」「生徒たちが片道2時間かけて違う学校に通学することになったと聞いてモヤモヤしている」という内容でした。
私たちもショックを受けましたが、収録をした日から放送までに情報がアップデートされていました。
「片道およそ2時間の通学」には反対意見が多く寄せられたことから、石川県が見直しを進めた結果、この3学期からは下の校舎の近くにある公民館で授業が行われています。仮設校舎が完成する今年秋ごろまで、公民館で授業が行われる予定です。
本編では今回も、リスナーの方からいただいたメッセージに、スタジオの3人がこたえました。
87歳になる母の相談です。
コロナ以降、体調を崩したり、外出ができなくなったりで、年々わがままというか、幼児化してしまい、ひとり暮らしのせいもあり、どんどん弱って、以前にはなかったネガティブな発言が増えました。
特に病気を患っているわけでもなく、僕の妻をはじめ、みんな献身的に接してくれています。若い時から苦労している母なので、晩年は少しでも明るく楽しく過ごして欲しいと思います。
「80歳の気持ちはみんなにはわからないでしょ?」との言葉を聞いた時はどうしていいのかわからず、最近は僕の方も複雑な辛い気持ちになることが多くなりました。
自分が55歳になり、弱ってしまった母を見て、初めて生まれた感情です。
少しでもいいので前向きになってもらうには、どうすればいいか、お考えを聞けたら幸いです。
小泉:いいお母さんだったんでしょうね、きっと。だから余計にショックを受けたりしちゃうのかしらね。でも、87歳で病気もなくっていうのは、すごくご立派っていうか。
大石:そうですね。
小泉:うちの母は、やっぱりイヤイヤ期みたいなのはあって。姉たちが母に何かを言っても「嫌!」「いらない!」みたいなことがあって。でも、役割を決めて。姉たちだとダメな時に私が出て行く。
大石:なるほど。
小泉:違う説得の仕方をして、納得させるみたいな。姉たちでその話題について少し慣れさせておいて、バシッと最後出ていって…みたいな役割はありましたけどね。どう思いますか?
上村:私は今、きょんさんの話を聞いて、祖父母が90歳近いんですけど…やはり普段近くに住んでいて接している親戚の話だと聞かないけれど、ちょっと離れた私の家からの一言とか、孫で「この子が行け!」みたいな役割ってある気がしますね。
小泉:素直になりにくい。きっとね、「迷惑かけちゃってるな」みたいな気持ちもあるんだと思うんですよ。子ども達に迷惑をかけたくないっていう気持ちがあるけど、みんなが優しいから何かしてくれることに、逆に気持ちが塞いでいっちゃうみたいなことはあるかもしれないから。何かをしてあげる、っていう感覚じゃなくて、友達とか奥さんに話すのと同じようにお母さんに話したりするだけでも、スッキリするかもしれないですよね。
大石:でも、この方もすごく優しい。
小泉:そういう子に育てたお母さんが、やっぱり立派だったんだなって気がしちゃうから。だからあんまり気を使わないで、自分と同い年だと思って接してみるとか。体力的に難しいことはあっても、お母さんは立派な人だから、「世話をしてもらう」みたいなのもちょっと苦しいのかもしれないよ。
大石:そうか。うん。
小泉:「80歳の気持ちはみんなにはわからないでしょ」っていう言葉で詰まっちゃったっていうのは、わかる気がする。わかんないよね。
上村:わからないです。
小泉:わからないから、教えて欲しいよね。
上村:リスナーのみなさんにもぜひ聞いてみたいですね。「こういう言葉をかけたらこうだったよ」とか。
小泉:続いては街の声をご紹介しましょう。
接客業をしているんですよ。
お客さまはお客さまなんですけど、最近カスタマーハラスメントとかもあって、「さますぎる」っていう。お客"さん"でいいんじゃない?っていうのは、日々、毎日、接客していて思いますね。
お互い、人間同士じゃないですか。機械じゃないんで、私たちも。例えば、「ポイントカードお持ちですか?」って聞いても無言。もう一度聞く、無言。じゃあ無いんだなと思ってそのままお会計を済ますと、最後にふっと出される。モヤッとしますよ。
「え、さっき聞きましたけど」って言えないし。そういうのは、日々、小さい積み重ねはありますよね、っていう。
小泉:ストレスすごそう。
上村:これ嫌だ…
小泉:でも、たしかにお客"さま"じゃなくて"さん"でいいと思います。
大石:過剰になりすぎているところがね。
小泉:そう。あと、マニュアルみたいなものがキチっとしすぎちゃって、接客業の人も決められたことは言ってるけどこっちの返事は聞いてない感じがする時もあったりするし。お互いにルールが変な感じになってるかもね。
大石:うーん。
小泉:だけど、私は、お客さんで行く場合、通りすがりで済む関係ならお互いに気持ちよくいたいんですよ。
上村:そうですよね。
小泉:長く関わらなきゃいけない人だったら、問題があったら解決しなきゃいけない苦労を知っているじゃないですか。時には苦言を呈さなきゃいけなかったり、謝らなきゃいけなかったり、それが長く続く関係で必要なことだと思うけど。本当に通りすがりだったら、お互い気持ちよく。例えば喫茶店とかお蕎麦屋さんとかで運んでくれた方がすごく感じよく笑顔で「お待たせしました!」とか、気持ちのいい接客をしてくれたら3時間くらい機嫌良くいられるんですよね。それでいいんじゃないですか、って思うけどね。
上村:客として行く時の最低限のことはしっかりしなきゃダメだと思うんですよね。最近、イヤホンを付けたままレジに行く人とか多いじゃないですか。人と接する時には、そもそもそれをやってていいんですか?普通取るよね、っていう。自分が客の立場の時はその最低限のことすらできない人が多いなと思って。そりゃあ、人をモヤモヤさせますよね。
小泉:そうだね。
上村:なので、そこで人に不快感を与えないことはちゃんとやろうよって。
小泉:たしかに。若い時とか、ちょっと男の子とデートみたいな感じで一緒にタクシーとか乗った時に「タクシーの人に横柄なんだ、引くわ」とか、そういうの結構ある。
上村:ありますね~!
小泉:「なんか違うな、わかってよかったな」みたいな。でも普段はムスッとしてるのにそういう時に丁寧だったりとか、小さい子どもとかに優しい方が、ポイント高くなるよね。
ほぼ全ての座席が車イス
京都「Wheelchair cafe Spring」
お悩みから視点を広げて、こんな話題も紹介しました。
上村:今回ご紹介するのは京都、伏見稲荷大社のそばにあるカフェ「Wheelchair cafe Spring」。特徴は、お店のほぼ全ての座席が車イスになっていること。普段から車イスに乗っている方はもちろん、車イスユーザーではない方も、このお店では車イスに座ります。代表の中村敦美さんにお話を伺いました。
車イスが座席になっていまして、車イスじゃない方に車イスに乗っていただいて車イスの方と一緒に普通に食事をしていただく、そんなコンセプトのカフェになっています。
「ノーマライゼーション」と言うんですが、障がいがあるとかないとか関係なく、みんなが同じように食事を楽しむ場を提供したくて。私も始めてから気がついたんですけど、車イスの方がうちに来て食事をされて「みんなと同じ立場になったような気がする」みたいなことをおっしゃった方がいて。いつもだったら自分はサポートされる立場だけど、ここに来ると「こんな座り心地なんですね」「どうやったら動くんですか」とか、自分が教える立場になったことがものすごく新鮮で嬉しかったと。
店内を出るまでは、誰が車イスに座っているのか、もともと車イスなのか、障がいを持っているのか、全くわからなくなるんです。全員が車イスなので。そういう環境も他にはないので、それも新鮮で嬉しかったという声をいただいて。なるほど、当事者の方ってそういうことを思うんだなと勉強になりました。
うちの娘が知的障がいの重度を持っていて、声をずっと出すタイプなんです。一般のところに行くとみなさん、けっこうバッと見られたり。そんなのいつもなので全然気にならないんですけど、飲食店とかで静かな環境に行きたい方もいっぱいいると思うので、ホテルとか、静かなところには娘をなかなか連れて行けないんですけどね。
このお店はそういう方、小さい赤ちゃんとかお子さんはギャーって悲鳴をあげたりしますよね。そういう時に白い目で見られることを気にされる方もいらっしゃいますし、自閉症の方とかでパニックになって急に大声をあげられるとか、なかなか飲食店に入るのは躊躇されるんですけど、うちは、そういう方、どんどん来てくださいと。逆にもしそれが迷惑だっていうお客さまがいたら、そのお客さまの方をお帰りください、というような準備はさせてもらっていて。本当に、障がい者の方にえこひいきをしている場所なんです。
ここにしか来られない方っていっぱいいると思うので、そういう方がたくさん来て欲しいなって。楽しく食事をして欲しいな、って思っているんです。
小泉:いいですね。
大石:優しい。
小泉:「えこひいきしているんです」っていうのもいいですし。車イスとかって、座ってみたいって思ったことありますよ。どんな感じなんだろう、どんなふうに動かすんだろう、とか。こういう場所に行ったらこちらも気兼ねなく座れるっていうのもあるんじゃない?
大石:乗る機会、ないですもんね。
上村:中村さん、バリアフリーツーリズム京都という旅行会社という会社を運営されています。京都に遊びに行きたい障がい者や高齢者のサポートをする中で、「車イスのまま気軽に行ける飲食店が知りたい」という相談が多かったそうです。ところが、なかなかなかったので、「ないなら自分で作っちゃえ」という想いが、お店をオープンした動機だということです。
小泉:そうなんだね。なかなかないんですね。いつも気にしてみていないけど、普段行く飲食店の入り口とかを思い出してみても、入れなさそうな場所が多い。
上村:車イスではないんですけど、私の同世代の子達は最近赤ちゃんを産んだママさんも多い世代なので、どこか飲食店に行こうとすると、子連れでも行きやすいお店だったり、ベビーカーを置きやすいお店、そういう検索のしかたに変わってきていて。やっぱり少ないなって思いますね。
小泉:1人で子育てをしていてベビーカーで行く場所がないっていうのは、私も友達から聞きました。
大石:普通のカフェで、どうです?車イスの方がいるカフェって、そんなにないなって。
小泉:床がガタガタしていたりとか、入り口が狭い、段差があるとか、テーブルのスペースが狭いとかで車イスが入らないから。車イスを畳んで普通のイスに移動して食べている方は見たことがあるかもしれないですけど、車イスのまま食べられるっていうのは見たことないかもしれないです。
大石:そんなにね。
上村:そして、中村さんの知り合いのエピソードもお店をオープンした動機の一つだそうです。その方がお母さんを車イスに乗せて踏切を渡っていた時、遮断機が降りてきました。すぐに駆けつけてくれたのは全員外国人の方、日本人は見ているだけだったそうです。日本人が冷たい、というわけではなく、「自分が手伝うとかえって迷惑になるのではないか」と戸惑ってしまうのが日本人。だったら、実際に体験すれば車イスに対するハードルも下がるのではないかと思ったとおっしゃっています。
小泉:そうね。躊躇しちゃうところはあるかもしれないね。触れちゃいけないんじゃないか、見ちゃいけないんじゃないか、そんなふうに気を使っちゃう人は多いかもしれないですね。
大石:うん。
小泉:だからそういう場所に行って、同じ状況に、同じものに座って、っていうのは体験としてはすごくいいかもしれないですね。
大石:自分の世界もアップデートするかもしれない。
小泉:あと、騒いじゃう子達が気兼ねなく、お母さんが外食できるっていうのも大切かもしれないですよね。
大石:大切ですよね。
(TBSラジオ『サステバ』より抜粋)