空き家が街を変える~再生から始まる地域の未来~
最近、国土交通省が「空き家対策モデル事業」という補助金制度の公募を始めました。なんでも、空き家をうまく活用している地域や団体に、最大200万円の補助が出るらしく・・・つまり、それだけ今、「空き家」って問題になってるんです!
「空き家」が及ぼすトラブル
空き家によるどんな問題があるのか、空き家が特に多い世田谷区の話です。
世田谷区 建築安全課 千葉妙子さん
総務省の調査では 世田谷区では、約5万戸の空き家があるんですが、世田谷区の建物の数を数えた令和3年度の調査では883棟です。 相続が発生すると実家が空いてしまうというのが大半です。この空き家、世田谷区どうしても建て込んでいますので、例えば樹木の越境、すぐに隣地に越境してしまうので、この苦情は一番多いですね。まず樹木を剪定しなきゃいけないとか、あと実家を相続した場合は自分の荷物ではないので、何が大切なのか、何を捨てていいのかがわからなくてそのままになっている方がかなり多くて、家財整理、この辺りも問題になってきます。 建物をどうしても傷んでくると、風の強い日に部材が飛んでしまったりとか、老朽化を見ていない間に進んでいますので、その辺りは結構苦情が入りますね。
空き家の管理もなかなか手間がかかるんですね・・・2023年時点で、全国の空き家の数はなんと約900万戸!全住宅の13.8%が空き家という割合で、これは過去最高なんだそうです。特に地方だけでなく、都市部でも空き家が増えているのが最近の傾向。防災・防犯・景観など、さまざまな問題が起きています。
増加の原因は、高齢化で物件が放置されてしまうといった理由の他に、都市部では、相続やリフォーム費用の負担が大きくて放置。売るにも手がかかるため、持ち主が動けないという状況などがあります。
空き家を観光資源に・・・地域に根差す建物が生み出す魅力
そんな中「空き家」が新たな価値を生み出す場所として活用されている例を見つけました。例えば、東京都青梅市にある「JIKON SAUNA(ジコンサウナ)」という場所。一体どんなサウナなのか、お話伺いました。
JIKON SAUNA TOKYO 山本 幹太さん
特徴としては、築150年の古民家をリノベーションしてサウナ付きの宿泊施設にしましたというところがまず概要になっています。 やっぱり雰囲気とかがあるんですよね。そもそもずっと地元に残っているような建物を使うことで、より地元に溶け込めるというか、その土地でしか作れない施設ができるっていうのは、一番のメリットと言うか・・・。 今回施設を作るにあたって、材料とかも基本的に地元のものを使わせていただいたんですね。例えば青梅周辺だと多摩山材っていう木材がすごく有名だったりするので、今回多摩山材を使ってそもそもの施設のリノベーションを行いましたっていう観点であったりとか、あとはサウナ自体も青梅の土を使ってサウナを作ったりとかっていうのがあるので、今後施設をアップデートしていくにあたって、やっぱり地元の素材とかを使って、ちゃんとアップデートしていくっていうのはやっていきたいなと思っています。
「JIKON SAUNA」の「JIKON」は「今、この瞬間」という意味を持つ禅の用語の「而今」から来ているそうで、サウナや宿泊施設を通じて、デジタルデバイスから離れ、「今ここでしか味わえない体験」を味わうことができるんです。デジタルデトックスにもなりそうですよね!「土」で作られているこだわりのサウナで、木よりも熱を蓄えやすく体を芯からしっかりと温めてくれるそう。
また、地域との連携にもこだわっている部分だそうで、 地元の飲食店と提携したオリジナルメニューを商品開発して注文配達してもらう仕組みを整えたり、地元の方への無料開放デーなども定期的に実施したりしているそう!まずは地域の方に、JIKON SAUNAについて知ってもらう、体験してもらうことが大切だとお話されていました。
外観:JIKON SAUNA TOKYO提供
ござを敷いた休憩スペース:JIKON SAUNA TOKYO提供
築150年の趣をそのままに:JIKON SAUNA TOKYO提供
もともとは空き家を活用する予定ではなかったそうなんですが、全国の空き家が増えている現状を知って、この課題を解決できるようなモデルを作って全国展開していきたいという思いに。今後10年以内に47都道府県に展開していきたいというお話もありました!今後の展開も楽しみですね。
「空き家」にならないための「終活」
この「JIKON SAUNA」のように、使い方次第で空き家は大きな資源にもなる。そこで今、自治体でも空き家へのいろんな取り組みが進んでいるんです。その中で注目したいのが、東京都世田谷区の取り組みです。
世田谷区 建築安全課 千葉さんのお話
昨年の11月に「せたがや 家の終活」というガイドブックを出したんですけど、これが区民の皆さんにかなり手に取られていて、皆さん、家の終活をどうしようかなというのはすごく関心があるんだなと思っています。やっぱり前向きに家の終活を考えていただきたいので、具体的なエピソードを入れて読み進めやすくしているのと、最後にじゃあどこに相談したらいいかという世田谷区の窓口も書いてますし、また別冊で本格終活シートというのをつけておりまして、読んでやる気になったんだけど、じゃあ何したらいいんだろうというときに何から始めていいか、ワークシートがちゃんとついてますので具体的に進めることができる。そこにこだわりました。世田谷区では、自分にはどんな事業者と契約したら何ができるのかなというのがわからなくてそのままになっている方が結構多いので・・・。空き家になってしまってから困っている人を見てきたので、空き家になる前に納得感のあるような解決を導き出せたらいいなと思っています。
実際のガイドブック:世田谷区 建築安全課 提供
別冊のワークシート:世田谷区 建築安全課 提供
まずは書き出すことで、改めて自分や家族の相続状況を把握することにも繋がりますよね!
世田谷区は全国の中でも空き家が多く、その数約5万戸!ほとんどが相続などで突然物件の所有者になってしまい、売るにも手がかかるため、なかなか持ち主が動けない、どう対処すればいいかわからないという状況があるそうです。まさに、明日は我が身です。
世田谷区はこのガイドブックと併せて「世田谷空き家活用ナビ」という無料の相談窓口を設けたり、毎月セミナーを開いたりして、空き家問題をまずは自分事として考える機会なども作っていきたいと話していました。まずは家族で「空き家」にしないための話し合いをすることが「空き家」問題解決への一歩になるかもしれません。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)