新国立劇場、オペラが初めての子どもたちへおくる『オペラをつくろう! 小さなエントツそうじ屋さん』を上演
2025年5月5日(月・祝)~5月6日(火・休)新国立劇場 小劇場にて、こどものためのオペラ劇場 2025『オペラをつくろう! 小さなエントツそうじ屋さん』が上演される。
オペラというのは、登場人物の気持ちやせりふを「歌うこと」で表現してストーリーが進行する、お芝居と音楽が融合した舞台芸術。今年のゴールデンウィークに、新国立劇場が初めてオペラを観る子どもたちへ向けて、「こどものためのオペラ劇場」を行う。
本公演『オペラをつくろう!小さなエントツそうじ屋さん』を作曲したベンジャミン・ブリテンは、20世紀イギリスを代表する作曲家。オペラやバレエなど、舞台のための作品も沢山作っているが、子どものための作品もライフワークとしていた。管弦楽曲『青少年のための管弦楽入門』は、世界中で音楽鑑賞教材として親しまれている名曲だ。そのブリテンの愛情がたっぷり詰まった『オペラをつくろう!小さなエントツそうじ屋さん』は、世界中で愛されている作品でもある。
オペラ『小さなエントツそうじ屋さん』には、客席の子どもたちが歌うためのとっておきの洒脱な曲が含まれているのが特徴。子どもたちも自然と、能動的にオペラの世界に入り込んでいく仕掛けになっている。第1部は子どもたちと大人の会話からオペラ創りが始まる劇。「オペラって何?」「私たちにもオペラができるかな」という会話から、この舞台は動き出す。第2部は客席の観客も一緒に歌って参加する、劇中歌の「リハーサル」。そして第3部としていよいよ、皆で創り上げたオペラ『小さなエントツそうじ屋さん』が舞台にかかる。子どもたちを自然と巻き込んでオペラへ誘う趣向は、いっそうの楽しさと一体感、達成感をもたらす。子どもたちも参加しながらスピーディーに進むため、「オペラなんて難しそう」「飽きてしまうかも」という心配はないはず。
『小さなエントツそうじ屋さん』の物語は、煙突掃除として働かされている幼い男の子サムに出会ったお屋敷の子どもたちが、サムを助けようと力をあわせて作戦を立て、実行する物語。サムに同情した子どもたちは、みんなで知恵を絞って力を合わせ、悪い大人たちを出し抜いて、サムを助け出す。子どもたちの間には温かな友情が生まれ、ドキドキしながら夜明けを待って作戦を決行し、サムを希望に満ちた自由な世界へ送り出す。本作では、子どもたちの驚きや喜び、恐れ、幸福感が美しい音楽になって描かれている。曲と曲はせりふで繋がれており、オペラが初めてという子どもたちも、スムーズに展開についていくことができる。
出演者は、幼い男の子サム役をはじめとする小さな子どもたちを演じる子どもたちと、日頃オペラで活躍する、新国立劇場合唱団メンバーを中心とした大人のオペラ歌手たち。サム、ソフィー、ヒュー、ティナの4役に出演する子どもたち(ダブルキャスト)は後日発表。
また、今回の上演では、舞台を移動遊園地のサーカス小屋のようなイメージで創られる。劇場に足を踏み入れた瞬間から、楽しそうな物語の世界にワクワクするはず。舞台ならではのちょっとノスタルジックでアナログな演出もあり。もちろん、美しい歌声や目の前で演奏する2台のピアノと弦楽器、打楽器によるアンサンブルも、きっと心に染みるだろう。創り手の想いの詰まった舞台芸術の良さを、全身で受け止めてみてはいかがだろうか。
【ものがたり】
小さな男の子サムは、意地のわるい男ボブとクレムのもとで、エントツそうじの仕事をさせられている。ある日エントツに入ってそうじをしていたサムは、体がはさまって出られなくなってしまう。エントツから聞こえるさけび声に気づいた、その家の子どもたち——ジュリエット、ソフィー、ゲイ、そしていとこのジョンにヒューとティナ——は、中に男の子がいるのにびっくり。みんなでサムを引っぱり出してボブとクレムに見つからないようにかくし、すすだらけの体をおふろでピカピカにあらい、食べ物を食べさせる。サムからつらい生活の話を聞いた子どもたちは、何とかしてサムをボブとクレムから助け出して家へ帰そうと、サムをにがす作戦を立て始めた……。