川崎市予算案 防災・防犯、子育てに重点 トイレ対策に2億円
川崎市は2月6日、2025年度の当初予算案を発表した。一般会計は前年比2・5%増の8927億円で過去最大。近年リスクが高まる自然災害における防災・減災、暑熱、防犯などの安全対策、周産期支援や子育て施策のデジタル化推進などに重点を置き、「誰もが安心・安全に暮らせるまちづくり」を強調した。
同日行われた記者会見で福田紀彦市長は「生命(いのち)を守る安全・安心予算」と命名し、「私たちの暮らしの基盤を改めて見直したい」と説明した。
防災・減災、暑熱、防犯などの安全対策では、災害時のトイレ対策に2億2千万円を計上。携帯トイレ約95万枚を公的備蓄として新たに用意し、避難所や市立学校に2日分の備蓄を確保する。全避難所へのマンホールトイレ整備に向けた検討も進めていく。
近年の気候変動により必要性が高まっていた市立学校の体育館等の空調設備の整備については、2億9千万円を投じる。25年4月1日時点では市内の全体育館178棟のうち7棟の設置にとどまるが、25年度は15棟の整備に着手。27年度までに23棟の設置を目指す。
また、防災ラジオの導入や木造住宅の耐震化支援、AEDのコンビニエンスストアへの設置、防犯カメラ設置などにも予算を拡充。埼玉県八潮市の道路陥没事故により緊急性が高まる下水道の地震・浸水対策では179億円を投じる。
妊婦健診支援を拡充
子育て関連では、周産期支援における切れ目ない支援として18億円を計上。7月から妊婦1人あたりの公費負担を現行の8万9千円から13万5千円へ拡大し、妊娠期の経済的負担を軽減する。
「かわさき子育てアプリ」のリニューアルには3千万円を計上。妊娠届や出生連絡票などの申請・届出機能や、乳幼児健診の手続き機能を搭載して利便性を図る。
まちづくり事業に関しては、福祉人材の確保・定着に向けた取り組みや市立看護大学大学院の開学などに注力。また、新たに患者の苦痛を軽減するアピアランスケア助成制度を創設し、医療用ウィッグなどの費用を助成する。がん患者以外も対象で、政令市では初。
市制100周年を契機に生まれた事業を継続し推進する取り組みには1億5千万円を計上。昨年の「みんなの川崎祭」や「Colors,Future!Summit」などを発展させ、市制100周年のレガシーを一過性のものにせず、市の文化につなげたい考えだ。
地域公共交通の再構築に向けた取り組みでは、路線バスとさまざまなモビリティが連携する「モビリティ・ハブ」の形成に新規で5千万円を盛り込む。
25年4月から改定される市立小中学などの学校給食費は、国の臨時交付金と一般財源を活用。保護者負担は現行の額に据え置きとなる。
市税、初の4千億超
歳入で大きな割合を占める市税は、市民税や固定資産税の増加により4年連続の増加となり、初の4千億円を超えた。将来の借金返済のために積み立てている減債基金からの新規借入は92億円で、12年からの借入総額は766億円にのぼった。
ふるさと納税による市税の流出額は149億円で前年度見込より13億円拡大。一方、受入額は38億円で9億円の増加を想定する。福田市長は「さらに体制を強化し、受入額の拡大を目指したい。市民に対しても、ふるさと納税の影響について伝えていく」と話した。