聞き手は「話し手の緊張」に気づいていない?会話やスピーチで緊張しない心構えとは【心の不調がみるみるよくなる本】
人前でうまく話す方法は?
人前での発表やスピーチが苦手、という人は多くいます。しかし、実のところ聞き手は「話し手の緊張」に気づいていないことがほとんどです。
「自分のこと」ばかりに集中しない
ひと口に「話す」といっても、さまざまなシチュエーションがあり、その状況によって適した方法も異なります。
厚生労働省が公開している、社会不安障害における認知行動療法マニュアルにある「不安の維持にかかわる3要素」に沿って、人前でのスピーチを例にその症状を見てみましょう。
①スピーチ中、あなたは身体反応や不安感情など自分のことばかりに注意が向き、聞き手の実際の反応にはまったく気づいていません。②スピーチが終わると、あなたは聞き手の反応を観察せず、自分の身体反応や不安感情をもとにして、「こんなに自分が不安で震えているから、きっと他人から見ても、不安そうに震えて見える」と、否定的な自己イメージを形成します。③震えを抑えようとハンカチを握りしめる「安全行動」をとりましたが、手元に意識が集中し、原稿を飛ばしてしまいました。
まず注目したいのは、自分の緊張や震えを他人に気づかれたくない、恥をかきたくないという不安がありながら、スピーチ中も、またその後も、実は他人のことなど見ていないという点です。さらに不安を防ぐための「安全行動」は、かえってほかの問題を引き起こしてしまいました。
緊張は相手にそれほど伝わらない
「透明性の錯覚」という心理学用語があります。自分の感情や思考が、実際以上に相手に見透かされていると思い込んでしまう心理のことです。アメリカの心理学者のトーマス・ギロビッチは、実験の参加者に人前でウソを話させ、何人の聞き手に見破られたかを問いました。その結果、見破られたと答えた人の数は、実際にウソに気づいた人数よりも多くなりました。また、関西大学の遠藤由美教授による「自己紹介場面での緊張と透明性錯覚」という論文では、「人前で話すときに緊張を強く感じる人は、そうでない人に比べて、聴衆に対してその緊張が明らかなものとして伝わったと信じる程度が強かった」という結果が報告されています。つまり、客観的には、話し手が思うほど、聞き手には緊張が伝わっていないのです。
これらのことから、人と話をしたり、人前でスピーチしたりするときに大事なのは、自分の話し方や行動、緊張にばかり集中しないで、聞き手の反応を見るぐらいの余裕を持ったほうがよい、ということです。特に自意識過剰は、「うまくやろう」「失敗がこわい」といった不安が原因なので、「失敗してもいい」と開き直ったり、あらかじめ「話すことが苦手で緊張している」と聞き手に伝えたりすることで緩和されます。
会話やスピーチの際に不安をやわらげる方法
人前で緊張してしまいがちな人は、「うまくやらなくては」という完璧主義を捨てて、「人並み程度にできればいいや」くらいにハードルを下げたほうが、緊張がほぐれてうまく話せるようになるものです
開き直る
「少しくらい失敗してもいいや」といった軽い気持ちでいたほうが、不安や緊張がやわらいで、会話やスピーチがうまくいく。
深呼吸をする
緊張すると呼吸が浅くなりがちなので、「ゆっくりと深く息を吸って、吐く」 という意識を持つと、気分を落ち着かせられる。
自信を持つ
「仕事をしっかりやる」など、普段から真剣にものごとに取り組むことで自信は育まれる。自分と人を比べすぎないことも大切。
「聞き上手」になる
会話上手は、「聞き上手」でもあるもの。「うまく話さなくては」とかたくならず、まずは「相手が気持ちよく話せる相づち」を意識する。
CHECK!
話し手が緊張していても、聞き手はほとんど気づいていない「うまくやろう」と自分を追い込まないほうがよい
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修